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最強への道 〜異世界で神になるまで~  作者: 土沢天樹
第5章 青年期 勇者編
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第79話 銃

『ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに』


「……あのぉ〜、ウィン様……」


『ぷにぷにぷにぷにぷにぷにぷに』


「……いつまでそれをやってるつもりなんですか?」


 テスタが俺に訊いてくる。


「……だってよ。なんかスライムって触り心地良くね?」


「は、はあ……」


 俺が今手でぷにぷにしているのはスライムだ。

 あのゲームなどで雑魚キャラで知られるあれだ。


「うぬはずっとそうしていて楽しいのか?」


 ルイヤスも疑問に思ったようだ。


 だがしかしよく考えて欲しい。

 あのたまにあるシャーペンのグリップで握り心地が良いやつ。

 あんな感じだ。この感触がたまらない。


 ちなみになんでスライムを触っているのかというと、俺らは今学院の実習をやっていて、それで王都の外にある草原に来ているからだ。

 そこには特に強くないスライムがうじゃうじゃいた。

 最初こそちまちま倒していたのだが、いかんせん量も多く、ふと手に取ってみたらその感触がたまらないことに気づいたのだ。

 まだ実習が終わるまで時間があることもあり、こうやって遊んでいる。


「お姉様っ!」


「おっけー!」


 少し離れたところではレジュとジュリがプレーリーウルフと戦っている。

 プレーリーウルフは世間一般の認識だと、雑魚とは言わないまでも、そこそこ弱く狩りやすい魔物である。

 ジュリとレジュにはちょうど良い相手というわけだ。


 実習の課題はスライムの討伐で2点、プレーリーウルフの討伐で4点、プレーリーウルフキングの討伐で6点であり、その合計得点によって成績が決定される。

 俺らはすでにスライムとプレーリーウルフを30体以上討伐し、プレーリーウルフキングを探している途中なのだ。


 ちなみにこの実習は本来冒険者同伴で行われるが、スタンピードによる危険な魔物が最近減っていること、俺がSランク冒険者であることが考慮され、誰も同伴者はいない。

 よって――遊び放題なのだ!


 したがって俺はこのまましばらくスライムでぷにぷにすることに専念することにする。



「あ、ウィン様、あれじゃないですか?」


 テスタが俺の肩をたたき、一点を指さす。

 そこには普通サイズのプレーリーウルフを一回りか二回り大きくしたものがいた。

 

 あれが件のプレーリーウルフキングか。

 同胞を殺されて相当怒っているらしく、こちらをビンビンに威嚇している。


 キングを冠するのは伊達ではないようだ。

 と言っても俺にとっては雑魚同然なのだが。


 さて、ちょうどレジュとジュリも終わったようだ。


「ウィン、これどうするの?」


「ウィン様、これは私とお姉様じゃ厳しいです……」


 レジュとジュリは渋い顔をしながらプレーリーウルフキングを見ている。

 敵わないと悟ったのだろうか。


 確かに2人の実力を合わせてもプレーリーウルフには及ばないだろう。


「それじゃあ少しだけハードルを下げようか?」


 そう言って俺はいつも通り光魔法を使おうと腕を上げようとして――やめた。

 今回はちょっとした実験をしようとしようか。

 いや、実験というか、実験の成果を披露と言った方が正しいか。


 そうと決まれば即魔法を構築。

 その魔法は、今まで使う場面はあまりなかった創造魔法だ。

 なぜなら、今まで俺は何かを造るといった物が苦手であり、かつ攻撃は他の魔法があれば十分だからだ。

 いつか使う場面が来るかもしれないと思い、俺は努力した。

 

 それの作り方は俺は知らない。もちろん構造も知らない。

 だが俺は、人外の思考力を持っている。

 知らないならば自分で考えればいいじゃない。

 先人たちはそれを何代にも渡って繰り返してきたのだ。

 俺なら自分一人で出来るだろう。

 

 との考えのもと、創造魔法の練習に励み、上手く望みのものを造ることができた。

 俺の手の中にそれが実体化してくる。

 1メートルほどの長さの筒上の物体――そう、ただの銃だ。

 見た目的にはライフルといったところか。


 それを腕で抱え、プレーリーウルフキングの目に照準を合わせる。


 距離64.651メートル。対象の速度128.553メートル毎時。南南西の風2.013メートル毎秒。誤差0.0239ミリメートル以内。


 ――発射!


 引き金を引くと、火薬の破裂音が響き、弾丸がプレーリーウルフの左目に吸い込まれていく。


「ガアアアアアアアアアアッ!!」


 その弾は見事命中し、プレーリーウルフキングの叫び声が響きわたる。

 計算した通り目玉だけに当たり、脳には届かなかったようだ。


「レジュ、ジュリ。今だ! ゴー!」


「え? うん!」


「行きますよ、お姉様!」


 俺が合図を出し、未だ痛みにあえぐプレーリーウルフキングに突撃していく。


 しかしそこはキングと名が付くのは伊達ではなく、レジュとジュリを迎撃していく。

 ジュリは短剣で、レジュは両手剣で攻撃していくが、いまいち致命傷を与えられていない。

 このままではじり貧、いやダメージを回復される分レジュたちの方が不利か。


 俺は仕方なくまた銃を構え、今度はプレーリーウルフの右足に照準を合わせていく。


「うぬは魔法の構築が異様に速いのう。魔法が使えないわしでもすごいと分かるぞ」


 ルイヤスがなにやら呟くが、俺は無視して引き金を引く。

 またも弾はまっすぐ飛んでいき、プレーリーウルフキングの足に着弾。その足を吹っ飛ばした。


 再びプレーリーウルフキングは叫び声をあげ、明らかに動きが鈍る。

 その隙をレジュは見逃さず、プレーリーウルフの懐に飛び込むと、その心臓に剣を突き刺した。


 プレーリーウルフキングは絶命し、その巨体が音を立てて地に倒れた。

次は来週の月曜日に更新します。

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