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最強への道 〜異世界で神になるまで~  作者: 土沢天樹
第5章 青年期 勇者編
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第74話 指導

お待たせしました。私用で忙しくしている間の現実逃避のために、大幅な修正をやりました。修正後を読んでみたい方は読んでみてください。あんまり変わってないかもです。

今回は長めです。

 冒険者四人組に鍛えてもらうという依頼を冒険者に提出した僕は、彼らと一緒に帝国の首都だという帝都の南にある草原に来ていた。

 街道から逸れ、草原に入っていく。


「よし、ここにしよう」


「そうだな」


「ここですか?」


 一面草しか生えていない。

 修行するには絶好の場所だということだろう。


「じゃあ、まずはお前の実力をみようか。好きにかかってこい、アキト」


 四人のうちの一人、カーナスさんはそう言って剣を抜く。


 もちろん僕も素手でやるわけにはいかないから、剣を抜いた。

 ここに来るまでに寄った武器屋で購入した片手剣だ。


「構え方が……いやそれはおいおい教えればいいか。ほら、早く来いよ」


「分かりました!」


 そう言って僕は地面を蹴る。

 剣道すらやったことはないからフォームなどはめちゃくちゃだろうが、とりあえずこんな感じかなと思うフォームで剣を振り上げ、カーナスさんに斬りこんでいく。 


 当然そんなものが当たるわけもなく、簡単に避けられてしまう。


「おい、そこで止まるな」


「あ、はい!」


 避けられた直後に僕は一瞬呆けてしまう。

 カーナスさんの言葉で八ッと思い、すぐに別の攻撃に切り替える。


 次々と剣を振り、攻撃を与えていくが、一向に当たる気配がない。


「ハアッ!  ツアッ! テアッ!」


「ふむふむ、なるほど」


 声を出してみても剣は掠りもしない。

 カーナスさん何やらは頷きながら、すらりすらりと剣をかわしていく。 

 その顔には余裕の色が見える。

 息が切れかけてる僕とは大違いだ。


「んじゃそろそろだな」


「ハァハァハァ――え? っわぁっ!」


 カーナスさんは何か呟くと、剣をすり抜けて一気に僕の目の前に現れた。

 驚く僕を余所に、剣を握っている方の僕の手首を掴み、そのまま投げ飛ばされてしまう。


 浮遊感は一瞬、気づいたときには地面に叩きつけられていた。

 僕は大した受け身もとれず、痛みが僕の体に走る。


「おいおいさすがに受け身は取ってくれよ」


 カーナスさんはそんな僕を見てあきれているようだ。


「アキトの動きは素人そのものだな」


「お前もあんな感じだぞ、アニ」


「俺はあそこまで酷くねぇよ!」


 痛がる僕を余所に、この状況を見ているボルさんがアニさんをいじる。

 その通りなんだけど……なんか傷つく。


「分かったぞ、お前の弱点が」


 起きあがる僕に手をさしのべながら、そうカーナスさんは言う。


「それはな――全部だ!」


「へ?」


 思わぬ答えに気の抜けた返事をしてしまった。

 いや、だめだめなのは分かっていたが。


「全部とは言ったが、どこが悪かったかはもう少し具体的に教えよう」


「は、はい」


「まずは構え。体の軸の前にこうまっすぐと剣を構えろ」


 そう言ってカーナスさんは僕に剣の持ち方を

教えてくれる。


「そしてもう一つ、剣筋が単純。もう少しフェイントを入れるなり、工夫しろ」


 確かに僕の剣は単純だったかもしれない。

 

「最後に声だ」


「声、ですか?」


「ああ。出してただろ。攻撃するときに」


「あ、はい。だめでしたか?」


「もちろんだめだ」


 気合いを入れる為の声はよくなかったらしい。

 でも大体アニメなどの創作物や、剣道なんかでも声を出してるような。


「相当追いつめられていて、戦闘の最終局面だったらまだ良い。気合いを入れないと意識がとぎれたりすることもあるしな。だが普通はあまりださない。なぜだか分かるか?」


「い、いいえ」


「まあ声を出すことで気合いが入るし、攻撃の威力も上がる。だが、攻撃のタイミングでいちいち声を出したら、攻撃のタイミングがばれるじゃないか。それにいちいち出してたら体力も食う。視界から消えてからの奇襲攻撃も無駄。まあ一撃で相手を倒すことができるなら話は別だがな。いいか、もっと戦闘はスマートに行え」


「は、はい」


 なるほど。確かにそうだ。

 声を出しても無駄なのか。


「ほかにも言いたいことはいっぱいあるが、まぁいい。これからみっちり教えていくからな。覚悟しろよ」


「はい!」


 どんと来いだ!

 そう思い、僕は元気よく返事をした。














ーーーーーーーーーーーーーーー

ウィンバルド視点


 魔王国にある邪神教の拠点を次々とつぶしていき、最後の拠点を俺は潰し終わった。


 いやぁ結局なにもなかったな。

 よし、帰ろ――、


『バガアアアアアアアアアアアアアアアアアンンンン』


 そう思った矢先、いきなり爆音が鳴り響き、そのせいで開いた地上からの穴から、大男を降ってきた。

 4メートル越えの身長、頭から生える大きな二本角。

 おそらく、いや確実に魔王だろう。


「これは貴様がやったのか?」


 その魔王はそう言って俺に問いかけてくる。

 

 これは相当お怒りということでいいのだろうか?

 煽るべきか、穏便に済ませるべきか。

 ここは――穏便に済ませよう。


 理由はただ一つ。

 ――腹減った。早く帰りたい。


「ああ、俺だ。そちらは魔王とお見受けする。すまない、あんたの領地で勝手なことをしてしまった」


「……その通り。俺は魔王だ。それで貴様はどこの誰だ?」


「俺はドートミール王国のSランク冒険者だ。ちょっとこいつらが王国で悪いことしててな。それでここまで来てしまった」


「貴様見たところ人間だな。なぜここにいる。いくらSランク冒険者だろうがこの魔王国に無許可で立ち入ることはできないはずだ」


 おっと確かにそうだ。

 これ以上の言い訳が思いつくっちゃあ思いつくが……腹が減って頭が回らない。

 

 かくなる上は――。


「おい貴様、何むしゃむしゃ食っている」


「いやだって腹減ったし」


 そう言ったとたん、ビシッ、という音とともに魔王の頭に青筋が浮かんだ。


 何をそんなに怒っているのか。

 ただ、俺は亜空間からとっておいたパンを取り出して食べてるだけなのに。


「貴様……舐めるのも……いい加減にしろォオオオオオッ!!」


 そう怒鳴りながら魔王は俺に向かって飛び出してくる。

 普通なら視認すら難しい速度だ。

 俺も速いとは思う。


 だが速いだけだ。

 パンのおかげで腹を満たし始めた俺にとっては脅威でもなんでもない。


 なぜなら腹のへりがましになったのならば、俺にできないことはない。

 そう思いながら俺に迫ってくる拳に対して構える。

 そして――、


「「あ、ウィン様。お戻りになったのですね」」


「おうテスタ。早速飯にするぞ」


「「はい!」」


 拳が当たる直前、このレタル草原まで転移して離脱をした。

 まさに戦略的撤退。

 いくら腹のへりがましになったとはいえ、お腹いっぱいになった訳ではない。

 腹が減っては戦はできぬ。


 まともに戦ってやるかアホが。

次は来週の月曜日に更新予定です。

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