表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強への道 〜異世界で神になるまで~  作者: 土沢天樹
第5章 青年期 勇者編
70/89

第67話 説明

 今朝はいつもより早く目が覚めた。


 昨日あんなことがあったからだ。


 部屋の外に出ると、何人かが僕と同じように部屋の外に出ていた。

 ぼっちの僕は当然声をかけられることはない。


 朝食を食べるため、昨日言われていた食堂に向かう。

 意外なことに異世界の食事はおいしかった。

 テンプレじゃ日本の料理を振る舞って異世界の人達に驚かれるはずなんだが。


 食事を終え、指定されていた会議室に入る。


 皆おのおの好きなところに座っている。

 三十人くらいはもうすでに集まっているため、座る場所に困る。

 仕方ないから僕は両脇に人が座っていない席に座る。


 それにしても皆、僕よりも起きるのが早かったようだ。


 ちなみに昨日の皇帝はまだ来てない。


 そこから30分ほど経ち、全員が着席すると、いきなり今まで一言も声を発しなかった赤城(あかぎ)先生が話し始めた。


「みんな、昨日はすまなかった。混乱してしまって一番の大人である私が対処できなくて。でももう大丈夫だ。先生がついてる。不安な気持ちにならなくても大丈夫だからな。これからの話し合いは私にまかせてくれ」


 なにを今更。

 昨日の時点で教師が頼りにならないことにみんな気付いたはずだ。


 かく言う僕もそう。

 さらにこの教師、赤城先生は生徒からの人気がすこぶる悪いのだ。

 おそらくこの教師の提案は却下されると思う。


 そう思った僕の推測は間違っていなかったようだ。


「あの赤城先生、俺たちはもう子供じゃありません。先生には頼りません」


「そうだぜ、せんせー。あんたはもういらないの」


 そう言ったのは昨日も発言していた霧ヶ原と、チャラい感じの中田(なかた) 昌悟(まさご)だ。

 中田の取り巻きもそれに同意するように声をあげる。


 ここまでくれば空気が傾く。

 もともと偏差値高めの高校であるから、みんな空気を読むのが大好きで得意だ。

 当然ながらみんなそれに賛同する。


 多数決という民主主義の暴力にさらされて、さらに自分の意見を言うのは無理だ。


 これがまだ日本での話なら先生の言ったことは正しい。

 もしくは異世界でも正しいのかもしれない。


 だがそれを多数派が許さない。

 なまじ日本の民主主義観念を持ち合わせてる分だけ厄介だろう。


 それは僕も許せない。

 ぼっちである僕はその被害者とも言えるからだ。


 チャーチルだって言っている。

 民主主義は最悪の政治形態であると。


 閑話休題。


 こうして赤城先生は完全に黙ってしまった。


「全員揃っているか。それでは始めよう」


 空気が微妙な中、皇帝が入室する。


「まずは改めて自己紹介といこう。朕はこのヴェフリン帝国第78代皇帝である」


「帝国宰相インターズ・ハルジオンです。インターとお呼びください。それと陛下のことは皇帝陛下、もしくは陛下とお呼びください」


 やっぱり昨日皇帝の隣にいた人は宰相であったらしい。


「それでは説明を始めよう。宰相」


「はい、私が説明いたします。まず、あなた方には邪神の討伐をお願いしたいのです」


「邪神ですか?」


 返事は代表として学級委員の霧ヶ浜が答えるようだ。


「はい。邪神とはこの世界の敵、滅びをもたらすものです。創造神チュリバスに追放された神であると言われています。その力は絶大です。私たちの力だけで対抗するのはとても」


「でもその邪神を俺たちが倒せるんですか?」


「倒せると思います。理由はまた説明いたします。続けますね」


「はい」


「その邪神ですが、今まで先代勇者によって封印されていました。封印されているなか、人を殺すために魔物を生み出していた、といわれています。しかし昨日、ついに封印が解かれ、復活してしまいました。そのためあなた方、勇者様方を召還させていただきました」


「なるほど……。それで先代勇者とは?」


「実は邪神は完全に滅することができないかったのです。封印するしか手がなかったそうです。先代勇者たちはそうして邪神を封印しました。それがおおよそ300年前です。先代勇者たちはあなた方と同じニッポンと呼ばれるところから、集団で召還されたと伝承されています」


「俺たちと同じところから来たんですか?」


「はい。先代勇者たちが伝えたとされているものがいくつも存在いたします。そして伝承通りの方法で今回の召還を行ったので間違いはないかと」


「なるほど」


「それでは続けます。あなた方は勇者として神の加護をもらっています。そのため私たちと比べて、戦闘力が大きいといわれているのです」


「でも俺たち今まで戦ったことなどないですよ?」


「大丈夫です。我が帝国の騎士団と宮廷魔導師が指南いたします。安心してください」


「魔導師? この世界には魔法があるのですか?」


 愚問だな。

 召還とか封印とか言ってる時点で魔法はあるだろ。


「はい。そういえば言ってませんでしたね。こちらでは魔法は当たり前でして。申し訳ありませんでした」


「い、いえ、それはかまいませんが」


「ありがとうございます。それでは皆様、ステータスと言うものはご存じですか?」


「ゲームとかであるやつですね。知ってますよ」


「この説明のあと、皆様のステータスを鑑定させていただいてもよろしいですか?」


「えっと、それはなぜ?」


「実は邪神は大量の魔族の軍勢を率いていると言われています。そのため鑑定の後に皆様には三つのグループに分かれていただきます。1つ目は邪神と直接戦うグループ。2つ目は魔族の軍勢と直接戦うグループ。3つ目は魔族の軍勢と戦う人たちの後方支援するグループ、に分けます」


「そのグループ分けの基準はあるんですか?」


 いや少し考えればわかるだろそのくらい。

 当たり前のことを訊くなよ。


「ステータスによって仕分けられます。ステータスが特出して高い人は1つ目のグループに。近接のステータスが高い方は2つ目のグループに、魔法や支援のステータスが高い人は3つ目のグループに、といった形になります」


「なるほど」


「それでは説明は以上になります。質問はありますか?」


「あ、あの?」


 気の弱そうな女子が手をあげる。

 珍しいな。彼女が自分から発言するなんて。


「はい、どうぞ」


「そ、その、邪神を倒した後って私たちは一体どうなるんですか? 先代勇者はどうなったんですか?」


 それは僕も気になっていたことだ。


 ラノベでよくある展開。

 用なしになったあと、国によって殺されることだ。


「先代勇者たちはその後帝国の庇護化のもと、幸せに暮らしたと言われています。それに倣い、我が帝国は邪神討伐が終わった後、あなた方に幸せな暮らしを約束いたします」


「あ、ありがとうございます」


「礼には及びません。それでは他に質問は?」


「あたしからいい?」


 クラスの気が強めの女子が質問する。

 僕はあの人がちょっと怖い。


「はい、どうぞ」


「あんさあ、今すぐその邪神って襲ってこないの? こんな悠長に話し合っててもいいの?」


 お、確かに。

 そこは気付かなかった。


「邪神は復活後すぐには活動しないといわれています。おおよそ一年は大丈夫と言えるでしょう」


「ふーん」


「それでは他には?」


『……』


 皆沈黙する。


「ないようですね。それでは鑑定のほうへ移りましょう」


 やっと鑑定か。

 話長かったなぁ。


 鑑定か。

 これで僕のチートが明らかになる感じか!










ーーーーーーーーーーーーーーー

 ウィンバルド視点



 そいつらを見ていると、何やら怪しげな儀式をしているように見える。


 魔法陣を描いているようだ。

 そして全員で詠唱を始めている。


 なるほどこれは……、


「グアアアアアアアアアアア!」


 魔物の召喚か。


 だが、召喚者は召喚された魔物の従属が出来なかったのか、一瞬で食い殺される。


『っ!』


 隣ではテスタが嫌な顔をしている。


 そうだろうな。

 相当グロい。


 しかし助ける気にはならない。

 奴らは人を沢山殺すためにあれをやったのだから。


 もう隠れる必要は無いだろう。


「よし、あれをどうにかするか」


「「なぜあの人たちはあんなことを?」」


「そりゃ邪神のためだろ。前に言っただろ、邪神のこと」


「「あ、なるほど。……クズですね。」」


「そういう事だ。さ、あの魔物を黙らせるぞ」


 そう言って俺は、未だ奴らの残骸を食い散らかしている魔物に近づく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ