第59話 スタンピード(2)
すみません、短めです。
俺は一体なにを見ているのだろう。
これは人間ができることなのだろうか。
俺の目の前では爆発音が響き、そのたびに魔物が吹っ飛んでいく。
後ろの方では魔物が逃げまどう素振りすら見せず特攻していく様は気味が悪い。
そしてその魔物たちを顔色一つ変えずに殺し回っているあの男は悪魔の化身なのだろうか。
それほどまでに圧倒的な力だった。
俺は平凡だ。
15の時、親元を飛び出し、あこがれの冒険者になった。
それから二十年たった今でもこの職業についているが未だCランク止まりだ。
俺に才能はない。
冒険者をはじめて一年ほどたったころ、同世代の奴らが次々とランクアップしていくなかで感じたことだ。
Cランクだって戦闘力じゃない。いままでの実績のおかげだ。
――才能がほしい。
そう思った事は一度や二度ではない。
不相応にもSランクを目指した。
Sランクの人を見たことも無いのにも関わらずだ。
しかしその夢は今この瞬間に潰えた。
スタンピードの対処のために西門に出て行ったにも関わらず、早々に魔物に吹き飛ばされ、大した受け身をとれずに地面にたたきつけられ、たまたまぽろりとポケットから出たポーションのおかげで一命を取り留めた瞬間にみた光景のせいだ。
情けない。
おこがましい。
恥ずかしい。
Sランクなんてなぜ目指したのだろう。
なぜ冒険者になったのだろう。
Aランクになった俺の古い友人はいつか俺にこういった事がある。
「人が生まれたのには意味があると僕は思う。だからお前も卑屈にならずに頑張れよ。一生懸命やればいつか報われるって。チュリバス様だって僕たちを空から見てるんだから。必ず意味があるんだよ、お前が生まれた意味が」
そいつは信心深い奴だった。
俺も一応はチュリバス教の信者だからそいつの言葉を俺は信じ、今までやってきた。
だがすまない。
もうそうは思えなくなってしまった。
所詮人に生まれた意味なんてないんだよ。
お前は強いから意味があると思えたんだよ。
でもそうじゃない。
今だからこそそう思える。
圧倒的な力を見たあとならば。
俺なんかそこら変の石ころと同じだ。
あろうが無かろうが変わらない。
俺みたいな弱者は強者にとっては石ころ同然。
吹けば飛ぶような塵同然だ。
抵抗さえ許されない。力で圧倒され、ねじ伏せられるだけだ。
ああ、神よ。
なぜ我らに力の差をお与えに
なったのでしょうか。
なぜ我らを不平等にお造りになったのでしょうか。
なぜ、なぜだ、なぜだ、なぜだ、なぜなんだ! 神よ!
こたえろ! 神だろう! こたえろよ!
こたえてくれよ……。
……神よ。
俺はどうすればいいんだ……。
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ウィンバルド視点
爆発音が響き、魔物の血肉が飛び散る。
地面はえぐれ、クレーターをいくつも作り、その粉塵は空へと昇っていく。
それでもなお、魔物は怯むことなく突撃してくる。
それの魔物たちを、時に魔法を使い、時に自身の身体能力によって薙払っていく。
一匹一匹の強さはさほどでもないが、いかんせん数が多い。
30分たった今でもやっと半分削るのでやっとだ。
お、災害級の魔物だ。
と思った瞬間、最上級火魔法を放ち、テンペストベアを瞬殺する。
災害級魔物も俺の魔法にはかなわないようだ、ふっ。
やっべ俺めっちゃ中二病みたいだ。
そんなくだらないことを考えていると、どでかい咆哮が聞こえる。
ついにそいつは姿を現した。
どでかい身体、どでかい牙、どでかい頭。
災害級を超える魔物――、
ドラゴンだ。




