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最強への道 〜異世界で神になるまで~  作者: 土沢天樹
第4章 青年期 剣舞祭編
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第55話 剣舞祭本戦(4)

「おっとオオオオ、いきなりみんな倒れてしまった!!! な、なにが起こったんだアアアア!!!」


「それはねぇ、あの黒髪の彼がねぇ、“威圧”を放ったからだねぇ」


「なるほど!! あの人はたしか国王陛下公認のSランク冒険者ですね!!!」


「ほう、彼が噂のウィンバルド・スフィンドールなんだねぇ」


 アナウンスの人俺の顔知ってんのか。

 まぁ一部じゃ俺の似顔絵が広まってるらしいから知っててもおかしくはないか。


 まあ、そんなことより今リングに残ってる奴らをどう処理するかを考えないとな。

 今は三人とも動いていない。


 ポニーテールの女は、やたら俺を含め他二人のことも凝視している。

 ありゃステータス魔法使ってるな。


 でもあいにく俺のステータスは“偽装者”で偽装済み。

 よって彼女は俺は雑魚には見えなくても、Sランク冒険者としては不十分なステータスを見ているだろう。


 俺の考えた通り、彼女は少し疑問を頭に浮かべている。


 だがそれも一瞬、一番の実力者を優勝候補である鬼将軍ウォレット・バーキンに定めたのか、俺と馬鹿をシカトし、鬼将軍に突撃していく。


 ポニーテールの女はある程度強いのか、鬼将軍も迎撃に専念する。


「おっとオオオ!!! ポニーテールの彼女が鬼将軍に突撃していく!!! 鬼将軍もたまらず迎撃だアアアア!!!」


 相変わらず元気なアナウンスが響く。



「やっとお前と一対一になれたな」


 アホ貴族は俺に話しかけてくる。


「別になりたくなかったけどな」


「お前のちっぽけな威圧なんぞ効かないからな」


「ほんとお前人の話聞かないよな」


「俺の力はこいつのおかげだ。見ろ。これがお前を殺すことができる剣だ」


 そういって奴が掲げた剣は、まがまがしい黒色の剣身を持つ大剣だった。


「その剣がなんだって言うんだ?」


「これでお前を殺すだけだああああ!!」


 ああああ、と雄叫びをあげながら俺につっこんでくる。



 ほんとにこいつとは会話のキャッチボールができないよな。

 突っ込む速度も遅いくせによく俺を殺すとか言うな。


 さっさと倒して……??


「うがががああああああ」


 おお? どうした?

 いきなり立ち止まったと思ったら剣を持つ手を押さえながら苦しみ始めた。


「ど、どうしたんでしょうか!! 金髪の(かた)がSランク冒険者に突撃していったと思ったら、いきなり止まって苦しみ始めました!! な、何が起こってるんでしょうか!!!」


「状況を見ればねぇ、Sランク冒険者がなにかしたとねぇ、考えるのが妥当だけどねぇ、僕はねぇ、Sランク冒険者が金髪の彼にねぇ、何かしたとは思わないねぇ。」


 うん、俺は何もしてないぞ。


「ううう、ああああ!!!」


 俺が様子見で突っ立てると、苦しみ方が変化した。

 剣が奴の手から段々と吸収されているのが見える


 そして吸収されていくうちに、奴の金髪が白髪に代わり、その端正な顔がしわしわに変化していく。


「「「……」」」


 そのあまりの光景にアナウンスを含め、観客は言葉も出ない。


「……む、なんじゃこれは。どういう………ふむ、そこの小僧、今は何年じゃ?」


 剣が奴の体に吸収し終わったとき、体の変化も止まり、同一人物とは思えない口調で俺に話しかけてきた。


「……あんた何者だ?」


「小僧、人に名を訊く前にうぬが名乗ったらどうじゃ」


「こりゃ失礼、俺はウィンバルド・スフィンドールだ」


「ふむ、いい名じゃの。わしはルイヤス・ギルディアスじゃ」


「ギルディアス? まさかあのギルディアス族か?」


「ほう、うぬはわしらの種族を知っているのか?」


「まあな。で、なんでそのギルディアス族のご老人がいきなり現れたんだ?」


「わしが知りたいところじゃ。いわれのない罪を着せられて封印されたと思ったらこんなところに復活しただけじゃ。して小僧、今は何年だ?」


 いわれのない罪ね。怪しいじいさんだな。


「……なるほどね。今は創魔歴1522年だ」


「ほう!わしは三百年も封印されていたのか。悲しいことよ。して小僧、今うぬらは何をしておるのじゃ?周りに人がたくさんおるようじゃが」


「剣舞祭だ。一番強い奴を決める大会だ」


「ほう、そんなものがあるのか。なるほどのう。集団戦か?」


「そうだけど」


「……殺したのか?」


「いや、殺してないが」


「やはりか。気絶させたじゃろ」


「なぜわかった?」


「勘じゃ」


「んだそれ」


「ふむ、小僧、なぜ気絶させた。うぬほどの者ならば殺すこともできるだろう」


「……だめか?」


「ダメとは言わぬ。じゃが……、甘過ぎやせんか?決闘じゃろう?」


「なぜだ。死なないとはいえ殺すなんて」


「だからそれが甘いと言っとるんじゃ。死なないと言うことは蘇生師でもいるんじゃろ?だったら殺せばいい」


「殺すことに慣れるのはよくない。タガが外れるかもしれない。そんなこと、あっちゃならないんだよ。人を殺していい理由なんてない。いくら生き返るとしてもだ」


「・・・うぬのその考えが己を殺すことが分からんのか。若いのう」


「なんだとじいさん。舐めてんのか?」


「短気、傲慢。若すぎるぞ小僧」


「馬鹿の一つ覚えみたいに同じ事言うなよじいさん」


「うぬと言葉遊びをするつもりはない小僧。気に入らぬならその腰にある剣で語ればよかろう。その腰にあるのはおもちゃか?」


「……なんだと?」


 安い挑発しただと思うが少しイラつく。


「都合のいいことに今は決闘中なんじゃろ?ならわしとうぬが戦ってもいいじゃろ」


「なるほど、じいさん。後悔するなよっ!」


 そう言って俺は飛び出す。


 舐めやがってじいさん。

 別に俺は怒ってないからな。

 怒ってはないが少しイラついているだけだ。

 俺がギルディアス族が使う技を知らないとでも? 知ってるさ。

 まあ、俺は使えるには使えるんだが――あれ使うのに熟練度が必要なんだよな。

 珍しい技だよ。

 だいたいの技は“戦闘王”のおかげで最高の熟練度で習得できるはずなんだがな。

 数年トレーニングしたところで全く使い物になる気がしない。


 熟練度が高ければ結構便利な技なんだけど。

 仕方ない。


 とりあえずこのじいさんを少しひねれば黙る・・・やばいこれ老人虐待者みたい。


 うん、短気なことは認めよう。

 でもなんでだろう。

 俺そんな短気だったっけ?


 俺精神年齢45歳だぞ。

 まるで本当の15歳で思春期のころみたいだ。



 ――まさかな。

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