第52話 剣舞祭本戦
「さあー今年もやって参りました!! 只今より、第103回剣舞祭を始めたいと思いまーす!! 司会は去年に引き続き、私ステラファン・ステラート、人呼んで、ステラ・ステラが勤めさせていただきまぁす!! それでは選手入場です!!!」
『ワアアアアアアアアアアア!!』
予選で司会をやっていた人よりも、何倍もテンションが高い司会のアナウンスで入場する。
「今年は、例年以上に豪華な顔ぶれとなっております!! まずは優勝候補、剣神マリオット・シュベrrrrrrrウウザアアアアアア!! その剣技は見ることは不可能!! 目で追えないほどの剣速で相手を瞬殺し、前人未踏の四連覇を達成した彼を止める人は現れるのかアアアアアア!!!」
あいつが剣神か。
真っ赤に染まる長髪を一つに束ねた優男に見える。服は至って普通のものだし、名前からしてみてもこの国の出身であることに間違いはなさそうだ。
にしても司会大丈夫か? 巻き舌だけど。
「そしてこちらも優勝候補、Sランク冒険者テグ・スリマン!!! かの有名なスリマン族の戦士であり、最強の剣術と謳われる玉王流剣術を扱い、去年の大会では剣神を後一歩のところまで追いつめました!! 今年こそは優勝できるのでしょうかアアアア!!!」
君たちは覚えているだろうか。スリマン族が扱う玉王流剣術を。
魔族との戦いで俺が使ったやつだ。
そのスリマン族であるテグ・スリマンは頭にターバンを巻き、いかにもな民族衣装を着ていた。
「そしてそして最後の優勝候補です!! 国王陛下の最終兵器と謳われている人物が突如参戦!!鬼将軍ウォレット・バーキン!!! 一軍を率いる将軍でありながらその実力はピカイチ!! 戦争で刈り取った首の数は万を超え、一騎打ちでは負け知らずであり、そのあまりの強さから鬼将軍の異名がつきました!!! 初参戦の彼は他の優勝候補たちをやぶれるのかアアアアアア!!!」
あいつがか。2mを越えるほどの巨漢で、ごつごつの鎧を着込んでいる。
――ん? 目があった。
――ん? めっちゃ睨まれた。
あれ、俺なんかしたっけ?
まぁいいや。
「その他にも初出場の二人のSランク冒険者がいます!! 雷神と呼ばれるSランク冒険者と、異例の国王陛下公認のSランク冒険者です!!! 優勝候補とは言わないまでも、良いところまでいけることを期待しています!!! そのほかの選手も、どうせ咬ませ犬だと落ち込まずに頑張ってくだい!!」
いやひどいな。
なんか上から目線だし。
その他の扱い可哀想すぎる。
「選手入場が終わりました!! 続きまして、国王陛下の臨御となります!! 一同起立!!」
闘技場の観客席にいた人たちが一斉に立ち上がる。リングにいる俺たちは元々立っているのでその必要はない。
全員立ち上がった直後、国王、もといエドが観客席の貴賓席に入ってきた。
会場はしんと静まり返る。
その中で、エドは静かにいすに座る。
「楽にせよ」
そう言うと、また一斉に皆着席した。
基本国王の前で座ることは許されない。
だが、ずっと立ったまま試合を見続けろと言うのも酷な話だ。
だから特例として、こうした大勢で長時間、何かを見続けると言った行事の時は、国王が、楽にせよ、と言えば着席できることが認められている。
やば、めんどくささに吐き気がする。
「それでは選手宣誓!! 前回大会優勝者、マリオット・シュベルザーさん、お願いします!!」
リングの中央に、突如としてマイクが現れる。
他の選手が道をあけ、その間をゆっくりとした足取りで歩いている。
マイクの前にたどり着き、国王の方向を向いた。
「宣誓! 私たち選手一同は、日ごろの努力を十分に発揮し、正々堂々勝負し、全力で戦うことを、創造神チュリバス、及び国王陛下に誓います! 選手代表、マリオット・シュベルザー」
『パチパチパチパチ』
いやベタか。
もっとセリフを捻ったらどうだ。
「ありがとうございました!! それではルール説明に参りましょう!! 剣舞祭と名が付くものの、絶対剣を使えというわけではありません!! 魔法やスキルは自由に使ってください!!そして相手を殺してしまっても大丈夫!! ちゃんと蘇生スキルをもった蘇生師が控えています!! 死んだ瞬間に蘇生師の元へ送られます!! 存分に殺し合ってください!! ですが、体が粉々になってしまうと蘇生できません!! そのような魔法やスキルの使用は控えてください!! また、戦意がなく、参ったと言っている相手や、戦闘不能の相手を痛めつけるのも禁止です!! これらの行為は失格となります!! 相手を戦闘不能にするか、参ったと言わせれば勝ちです!! さあ、皆さん、剣舞祭を存分に楽しんでください!!!」
『ワアアアアアアアアアアアアアアア!!』
司会の言葉で一気に会場が盛り上がる。
「それではAブロックの試合を始めましょう!! Aブロック以外の選手は、控え室にてお待ちください!!」
俺はBブロックなので控え室へと向かう。
他の選手は自分以外の試合を見ることはできない。
控え室で待たされるからだ。
でも俺は観たい。
Aブロックはテスタが出てるからな。
あと剣神も出てる。
観なきゃいかんぜよ。
いまこそチートを生かすときだ。
“知覚者”をなめるなよ。
「それではAブロックの試合を始めましょう!! ブロック戦のルールは単純!! デスマッチです!! ブロックの中の一人だけが準決勝に進めます!! Aブロックの人数は34人!! 存分に殺し合ってください!! それでは構えて……始め!!!」
『ワアアアアアアアアアアアアアアア!!』
歓声はこちらにも聞こえ、まるで地鳴りのようだ。
さあ、剣舞祭の開幕だ。




