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最強への道 〜異世界で神になるまで~  作者: 土沢天樹
第4章 青年期 剣舞祭編
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第50話 呼び出し

「俺様と付き合え」


「はい?」


 ――はい?


 レジュの目の前に立つ貴族風の金髪イケメンがレジュに告っていた。


 んだこいつ頭わいてんのか?

 挽き肉にしてやろうか? あ?


 失礼、言葉がすぎたようだ。

 ひと思いに殺してやるよ。




 このような状況になっている原因を知るには、数十分前にさかのぼることになる。
























「レジュレンテ・カーヴィー、フールドゥム様がお呼びだ。急ぎ出頭せよ」


「はい?」


 剣舞祭予選が終わり、剣舞祭本戦が明日に迫ろうとしている今日の放課後。

 寮に向かおうといつものメンツで話しながら歩いていると、突然、いかにも貴族の取り巻きでもやってそうなヒョロ男がレジュに声をかけた。


 軽い“気配遮断”を使ってるレジュに声をかけるのは容易ではない。

 まず見つけられないからだ。


 だがこいつは“気配探知”をもってやがる。

 全力でスキルを使ったな。


「フールドゥム様って誰だよ」


 思考もそこそこに、さっきから気になっていた質問を投げかける。


「な! 貴様知らぬのか!」


「知らん」


 知らんものは知らん。

 どうでも良いことは意識的(・・・)に忘れてるからな。


「ウィン、フールドゥム様はシットフィーシーズ侯爵の長男なの」


 レジュが小声で教えてくれる。


 ふぅん、初耳。


「フン、貴様のような薄汚い平民は知らぬようだな。その使えない頭ならばフールドゥム様を知らぬのも無理はない」


「いや、薄汚いって言うけど、毎日俺風呂入ってんだけど」


「その腐った頭にたたき込むが良い。フールドゥム様は偉大なるシットフィーシーズ侯爵の嫡男であらせられるのだ!」


「ふーん、興味ない」


「フフフ、このことを覚えておくんだな平民」


「やばい、こいつ人の話し聞かない」


「まぁ、そんなことよりだレジュレンテ・カーヴィー」


 とことん俺の話を聞かないらしい。


「いやそんなことなんかよ。軽いな」


 珍しいな、俺がつっこみ役なんて。

 案外楽しい。


「は、はい!」


 レジュも律儀だねぇ。まぁ、そこもかわいいところなんだけど。


「さきほど言ったとおりだ。急ぎ出頭せよ。場所は体育館裏。今すぐ向かえ。これは命令であることを忘れるな。以上だ。そして貴様! 言葉遣いには気をつけろ!」


 そう言い残し、ヒョロ男は去っていった。


「ど、どうするのですかお姉様!」


「どうしよう……」


「いやどうしようもこうしようもねぇだろ。行く理由がない」


「そうなんだけど……」


 煮えきらねぇな、このお人好しが。

 でもそこも可愛いところなんだけど。


「それはダメだよ、ウィン」


 三人で議論していると、今まで口を開かなかったエザルが話し出した。


「なんでだ?」


「法律さ。王国法第12項3条『身分が下の者は、身分が上の者の命令に、いかなる理由があろうと従わなければならない。ただし、他の法律、または勅命に従わない命令は、これを無効とする。』のせいさ。仮にも王立を謳う学院。法律は絶対なのさ」


「なるほどな。厄介だな」


 いまレジュの肩書きは騎士の長女、対して相手は侯爵の嫡男。

 身分の差は歴然だ。


「じゃあ早く行って来なきゃ!」


 そう言ってレジュは走っていった。


 行かないでと言いたい。


 だって多分ただの告白だろうし。

 体育館裏に呼び出しなんてベタすぎる。


「まあまあウィンもそんなにヤキモチ焼くなよ。ムカついているのは私も同じなんだから」


 ヤキモチも焼くわ。


 でも仕方ないと思うところもある。

 だってレジュは贔屓目なしに超絶美少女だし。

 念の為もう一度言うぞ。

 贔屓目なしに神がかった美少女だ。

 贔屓目(・・・)なしに。


 前世の芸能人なんて誰もレジュに勝てやしない。


「ん? 何でお前が怒るんだ?」


「だって今さっき来た奴。私に挨拶の一つもしなかったんだよ。不敬罪に問われてもおかしくないのに。まあ、私は優しいからそんなことしないけど」


 随分お怒りだな。


 まあ確かに怒るわな。あの理不尽さはひどい。


「レジュ様も大変ですね」


 おいテスタ。

 お前他人事だな。


 ――仕方ない。


「ちょっと俺トイレ行ってくるから。先戻っててくれ」


「え? ちょっ!」


「またあしたな」


 焦る三人を放置し、一瞬で“気配断”を全力で発動。

 レジュを追いかけ始めた。


 俺が全力で“気配遮断”を使えば、たとえテスタだろうが俺を発見できないだろう。

 トイレに行くなんて嘘だ。

 彼女のことを心配しまくる余裕のない男とは思われたくないからな。


 いざゆかん!












「ウィン様、レジュ様の様子を見にきましたね」


「絶対トイレには行かないだろうね」


「分かりやすすぎですよ、ウィン様。私もお姉様の様子を見に行きたいです」


「いや、やめときなよ。ウィンに怒られるよ。だっていつもウィンにくっついてるガンツでさえここにいるんだから」


「あ、本当です。気づきませんでした」


「珍しいですね、ガンツさんがウィン様に付いていかないなんて」


「そんな日もあるんだよ多分。さあ、寮に帰ろう」


「「はい」」


























 そして俺は気づかれないようにレジュを追いかけ、体育館裏に到着。

 物陰に隠れて様子を伺っていると、最初に言った光景にたどりつくという訳だ。


 回想終了。


 さて、あの貴族様をどうしたもんかねぇ。

馬鹿貴族のフールドゥム・フィーシーズのフールは英語で馬鹿、ドゥムはドイツ語で阿呆、シットとフィーシーズは英語でくそを意味します。

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