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最強への道 〜異世界で神になるまで~  作者: 土沢天樹
第4章 青年期 剣舞祭編
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第49話 剣舞祭(7)

 テスタの気配が消える。


 “気配遮断”でも使ったのだろう。


 だが気配を消そうが存在は消せない。


 “知覚者”で位置がばればれだ。


 ん? 消えた?

 転移魔法か。


「後ろですよ」


「わざわざ言うとは親切なもんだ」


 そう言いながら、素早く剣で迎撃しようとする。

 だが振り向いた瞬間、テスタが剣を持っていないことに気づいた。


 まさか!


 瞬間“知覚者”で後ろに気配を感じ、とっさに首だけ後ろへ向ける。


 そこには俺の首筋に容赦なく剣を突きつけようとするテスタの姿が見えた。

 剣の先っぽから俺の首までおよそ10センチといったところか。


 あまりにも速すぎる攻防によって、時間が引き延ばされる感覚の中で、俺の思考はこうなった原因の答えを導き出していた。


 テスタは最初に気配を消し、俺の後ろに転移した。

 そして持っていた剣を、その剣が持つ特性、『持ち主の半径5m以内なら剣を自由に出し入れできる』という能力を使い一旦剣をしまい、それとほぼ同時に俺が振り向き、その一瞬に“分身”を使い、振り向いた俺の背後に分身を出し、出した瞬間に剣も出し、分身に持たせ俺に肉薄したと言うわけだ。


 良い手だな。

 分身は本体のスペックの半分程度しかなく、全く速くないが、さすがにこの距離ではよけるのは難しい。


 だが難しいだけだ。


 素の身体能力だけならな。


 俺は一瞬で“全身強化”し、本体のテスタを無視し、分身を迎撃しようと体を後ろに向ける。


「甘いです」


 未だ引き延ばされた時間の中で、テスタはつぶやく。


 その言葉について思考する暇さえ与えられず、俺に周りに無数のテスタの分身が現れる。

 なるほど。1体だけではないということか。


 俺でもこの量を一瞬で生み出すのは無理だ。

 おそらく事前に大量に作り出し、異空間にしまっていたのだろう。


 用意周到なこった。


 このまま剣を持ってる分身を迎撃すれば、すぐさま無数のテスタの分身にボコボコに殴られるだろう。


 追いつめられた俺を見て、無数のテスタの分身は笑顔を浮かべる。


 絶体絶命――、










 ――ではない。


 言っただろう。

 このまま(・・・・)ならってな。


 テスタに言われた言葉をそのまま返してやろう。


 ――甘いんだよ。


 君たちは俺のスキルに“空間操作”があることを覚えているか?


 今回それを使う。


 俺は一瞬で空間をねじ曲げ、わずかな逃げ道を作る。

 そして“全身強化”を全力で使い、その隙間から逃げ出す。


 そのあまりの速さに無数のテスタの分身は全く反応できていない。


 “知覚者”ですでにテスタの本体の場所は分かっている。

 テスタの本体にだけ死なないよう一瞬で最上級結界を張り、“空間操作”を使い、空間を圧縮し、一気に放出し、空間を膨張させる。

 つまり、空間自体を爆発させることで圧倒的な破壊力を生みだし、テスタの分身をすべて破壊した。


「なっ!」


 あまりの光景にテスタは驚きの声を上げる。


「遅い!」


 呆然とするテスタの背後に一瞬で移動し、振り向こうとするテスタの顔面を全力で殴りつけた。


 バアゴオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンン


 そのままテスタは吹っ飛び、あらかじめ周囲に戦闘の影響が及ばないように張っておいた結界に衝突した。

 白目をむいて倒れ込んだところを見ると気絶しているようだ。


 俺は未だ反応を見せない放送者がいる方を見やる。


「て、テスタルネ選手、気絶により戦闘不能! 勝者ウィンバルド・スフィンドール選手! よって剣舞祭予選優勝はウィンバルド・スフィンドール選手に決定です!」


『ワアアアアアアアアアアアアア!!』















「――ううぅ……」


 視界の端でテスタが起きあがるのが見える。


「あれ? ウィン様? もう終わったんですか?」


「ああ、そうだ」


「そうですか……。僕の完敗でしたね」


「……そうだな。」


「別に気を遣わなくて良いですよ。手加減されていたのは分かっていましたから」


「すまんな」


「謝らないでください。ウィン様が本気を出したら瞬殺ですから。それに最後は本気を出してくれましたので満足です」


「さすがにキツかったからな。満足してくれたならよかった」


「はい!」


 手加減はした。だが最後はもちろん全力だった。


 俺はテスタに満足させることが出来たのだろうか。

 テスタは言葉ではああやって言っているが、本心は分からない。


 いつかテスタに“知覚者”を使う日が来ることになるだろうな。





 こうして決勝を終え、表彰式をすませ、いよいよ剣舞祭本戦の日を迎えた。

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