第47話 剣舞祭(5)
「あ、ウィンおかえり!」
「お疲れさまです。ウィン様」
「あ、お疲れですウィン様」
「ウィン、お疲れさま」
観客席に戻ると、レジュ、テスタ、ジュリ、エザルが俺に気づく。
「おう。そんな疲れてないけどな」
「あ、あのウィン様! ちょっといいですか?」
ちょうどあいていたレジュの隣に座ると、レジュにぴったりくっついていたジュリに話しかけられる。
「ん? なんだ?」
まぁ何についての話かは分かるが、一応訊いておく。
「先ほどウィン様が戦っていた人なんですけど――実は私の兄なんです」
「うん、だろうな」
「ご存じではないと思うので……え?」
「だからそうだろうとは思ってたぞ」
「……ちょっと待ってください! なぜ分かったのですか!?」
「いやだって名字が“ケン”だし、戦いのスタイルもお前そっくりだし。」
「そ、そうですか。確かにそれならバレてもおかしくないですね」
「でその兄貴がなんだって?」
「いや、お兄様に何かされたり、何か言われたりしませんでしたか? お兄様は少し野望家と言いますか、自分の目的のために突き進んだり、人に意見を押しつけたりする悪癖がありまして……」
うん知ってる。でもいろいろ言われたって言っていいのかね。
なんだかジュリが罪悪感を感じそうだからやめておこう。
「……いや、何も言われてないぞ」
「……本当ですか?」
「……」
「なぜ目を逸らすんですか?」
「ジュリちゃん、いいこと教えたあげる」
っ!? こいつ!
「ちょっ、まっ、おま「教えてくださいお姉様!」」
「いいよ〜ジュリちゃん。ウィンはね、嘘が絶望的にへたくそなんだよ」
畜生! 言われちまったよ。これだから幼なじみはいやなんだよ。
「お前言うなよ」
「フフフ、ウィン小さいときから嘘つけないもんね」
「うるせぇ」
「そうなんですね、ウィン様!」
興奮気味に言うんじゃない、ジュリ。
「では先ほどのウィン様の発言は嘘と言うことですね?」
「うん、そうだろうね」
「……ノーコメントで」
「そうはいきません。お兄様に何を言われたんですか?」
「……」
俺は前世の小さいときから嘘が下手だった。自分ではうまく嘘ついたと思ってもすぐにバレるのだ。
畜生こんなことならもっと嘘の練習をしとけばよかった。
まぁ、そんな後悔をしても意味はないので、ジュリに洗いざらい吐き出す。
「そうですか……。まったく何を口走ってるんですかあのクソ兄様」
「お前兄貴に辛辣だな」
「次期族長のくせにぺらぺらしゃべりすぎだからですよ。外部の人間にケン族だとバラすなんて。」
「ジュリはレジュと俺にバラしてるけどいいのか?」
「お姉様とお姉様の恋人であるウィン様は例外です」
「あ、はい」
「とにかくもうお兄様の相手なんてしなくていいですからね」
「へいへい」
こうして三人で話している中、小さな声でこそこそ話している奴らがいた。
俺にバレてないとでも思ってるのだろうか。
「ウィン様が手玉に取られてますよ!」
「ウィンにも苦手なものがあるとはね」
「ウィン様が嘘が苦手とは知りませんでした」
「師弟関係であるテスタが知らないなんてねぇ」
「いやいや、レジュ様に比べれば僕はウィン様のことを全然知りませんよ」
「確かにレジュには勝てないよ。まぁ、ジュリにもかなわないのは意外だったけど」
「ウィン様は意外とMなのかもっ!!……」
俺は急に振り向き、とんでもないことを言うテスタの頭を鷲掴みにする。
誰がMだ。
「う、ウィン!」
「二人とも随分俺の話で盛り上がってるじゃねぇか。」
「ち、違うんだウィン! 別に君の悪口を言ってたわけではないんだ!」
「……まぁエザルは許してやろう」
エザルはほっと胸を撫で下ろす。
「あ、あのぅ、僕は許してはくれないんですか?」
「ん〜、どうしよっかなぁ〜」
「悩む割にアイアンクローはやめてくれないんですね。」
「まぁ、お前は今だけ許してやろう」
テスタの顔から手を離し、意味深につぶやく。
「今だけですか?」
「おう、次の試合、覚えとけよ」
「あ、そうでした」
「あぁーそういえばそうだったね。次の試合は……」
次の試合は決勝戦だ。
皆知ってるとは思うが、俺の相手は……。
投稿頻度を上げようと思います。




