第44話 剣舞祭(2)
「じゃんじゃん進んで行きましょう! 続いては第22試合目、武術科1年生ウィンバルド・スフィンドール! そして相手は、武術科2年生ガルボンド・メルテネス! それでは両者構えて! 始め!」
アナウンスに従い、闘技場のリングへと移動し、相手と向き合う。試合開始が宣言され、俺は剣も構えずに仁王立ちする。
相手は先輩のようだ。
黒髪を角刈りにしていて、ガタイがいい。
「おい、お前舐めてんのか? 剣を構えろ」
「あんたに剣なんか使わねぇよ。素手で十分」
やばい言ってること完全に悪役だわ。
でもなんだかやってて楽しい。
「この野郎! Sランクだからって舐めやがって!」
相手は怒りに任せて直線的に剣を振るう。
俺はそれをひょいとよけ、無防備な顎を軽く小突く。
相手は糸が切れたように気絶した。
観客はしんとしている。
そりゃそうだな。
一瞬で勝負が着いちまったんだから。
俺は終わりの宣言を急かすように、司会兼審判を見る。
「あ、し、勝者ウィンバルド・スフィンドール!」
若干沸いた観客に背を向け、リングから立ち去る。
俺もそろそろ男に対する礼儀を身につけた方がいい気がする。
このままだと俺完全に悪役だしな。
その後トントン拍子で勝ち進み、三日目の準決勝まで進んだ。
「さぁ皆さん! 準決勝に参ります! 私から見て右側から入場してくるのは、これまでどんな相手でも一撃で倒してみせた男! Sランク冒険者、武術科1年生ウィンバルド・スフィンドール! そして反対側から入場してくるのは、どんなに攻撃されても最後の最後で逆転勝利を納めた男! 異国の戦士、武術科3年生トールマン・ケン!」
トールマン・ケンだと?
ジュリと同じ名字だが親戚かなんかだろうか。
後で訊いてみよう。
「それでは両者向かい合って! 始め!」
始めの合図で、相手である頭にバンダナを巻いたナイスガイは、すぐさま攻撃を仕掛けてきた。
そこまでスピードは速くない。
あくまで俺基準だが。
とりあえず今までと同じように気絶させようと、攻撃を避けた直後1歩踏み込もうとすると、相手はすぐさま離脱しようとする。
こいつの戦闘スタイルは短剣の二刀流でのヒットアンドアウェイだな。
ますますジュリにそっくりじゃねぇか。
だがねぇ。
甘いんだよ。
俺はその背後にすぐさま移動し、未だ目で追えていない相手のうなじへ手刀を落とす。
これで終いだな。
よし、帰ろうっ!?
俺は振り向こうとして驚いた。
おいおいどういうことだよ。
なんで気絶してないんだよ。
相手は俺が手刀を放ったのにも関わらず、依然として二本足で立っていた。
これ以上強くしたら首の骨折れるぞ。
"知覚者"使うか?
いやそれじゃあつまらない。
うーん、魔族にしたようにハッタリは効かなそうだしな。
多分なんかのスキルだろうし、さすがに無傷で無力化はキツいか。
そう思い、相手の懐へ一瞬で飛び込み、死なないように手加減しながら腹へ蹴りを放つ。
あ、やべ。ちょっと強すぎた気がする。
相手はリングから吹っ飛び、闘技場の壁に激突する。
うん、死んでないことを祈ろう。
しばらく待つと煙がはれ、無傷の相手が自身についたホコリを払っているところが見えた。
「どういうカラクリだ。あんたのタフさは」
俺は不自然さの原因を探ろうと、相手に気づかれないようにステータス魔法を使い、相手のステータスを覗き見る。
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トールマン・ケン
人間
18歳
職業:学生
HP:45
MP:23
攻撃力:41
俊敏力:52
体力:45
魔攻撃:21
防御力:39
魔耐性:20
魔法:ステータス魔法(中級)、火魔法(中級)、土魔法(初級)
オールウェイズスキル:"加護"
ユージュアリースキル:"言語理解"
オーフンスキル:"俊敏"
サムタイムズスキル:"気配遮断"“”
ネバースキル:“ ”
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なるほどね。
秘匿系のスキルか。
"知覚者"使えば分かるようになるだろうけど、どうしようか。
「教えるわけが無い。無駄口挟むな」
「そうかい。そりゃ残念」
まぁ色々やってみるか。
俺は一瞬で相手の背後に回り、隙だらけの背中に"戦闘王"で得たオーフンスキル"衝撃波"を使い、背中に手を当て、衝撃波を発勁のようにゼロ距離で放った。
大分手加減したから、どんなに重症でも脾臓か左の腎臓が破裂するくらいの怪我だと思うけど。
そのくらいなら治癒魔法で治るし。
さぁ、どうだ。
おっと、反撃できるということは効いてないということか。
じゃあ次。
俺は一旦離れ、ある魔法をすぐさま構築する。
トールマン・ケンの足に狙いを定める。
『ピュン』
お〜う、い〜たそうだねぇ〜。
いや、
いかせな〜いよぉ〜う。
かな?
いや、この場面にピッタリの〇猿のセリフを考えるのはやめよう。
まぁ、普通の光魔法だ。
致命傷にならない足を狙い、命中した。
「ぐあああっくっ!」
さすがにこれは防げないらしく、激痛を我慢している。
さすがに罪悪感がわくな。
ゴメンな、終わったらすぐに治すから我慢してくれ。
そう思っていると、いつの間にか相手は消えていた。
このスキルの使われた感じから、恐らく"気配遮断"を使ったのだろうと予測する。
だがさすがにどこにいるかは分からない。
ここで魔法を乱れ打ちをしてもいいが、下手に変なとこ当たって死んじゃっても困る。
どこだ?
俺は感覚を研ぎ澄ます。
――ここか!
俺は振り向きながら、回し蹴りを放とうとする。
しかし、相手の速度は俺の予想の何倍も速かった。
この速度だと、俺くらいとは言わないまでも、テスタ位の速さはある。
だが避けられるし避けるかっ!?
「ゴホォ!」
ドオオオオオオオオオンンン
顔面に鋭い痛みがはしったと思った瞬間に、視界が一気に入れ替わり、壁に激突した。
痛ってぇなぁ。
チッ、まさか俺が躓くては不覚だった。
まぁいい。そこまで痛くないし。
終わらせてやるか。




