第4話 剣術とおままごと
「お父さん!」
「おう、ウィンか」
庭にいる父さんに声をかける。
「剣術今日もよろしく!」
「まぁ正直お前に必要あるのかって思うけどな」
俺には"戦闘"があるためそもそも剣術の指南は必要ない。親もそれを知っているが、俺としてはスキルに頼った技術はちゃんと積み重ねた技術があってこそだと思う。
経験はスキルでは補えない。
なのでこうして父さんに教えてもらっている。
「よし!じゃあ行くぞウィン!」
「うん!」
木刀を中段に構える。父さんも同じだ。
まず俺から飛び出しフェイントを2回入れながら袈裟斬りを放つ。それを父さんはバックステップでよけ、一気に踏み込み突きを放ってくる。
2回、いや3回フェイントを入れられてるな。
それを左半身になってよける。
それと同時に左薙ぎを放つ。それを父さんは木刀で弾き、唐竹割りを放つ。
それをバックステップで避けようとする。しかしそれはフェイントで、父さんは強く踏み込んで俺の左斜め前に現れた。
つーかはや!
と思うまもなく逆袈裟が放たれる。
それをギリギリ木刀を出すことによって受け止める。鍔迫り合いになるが当然俺の方が攻撃力は劣っているため、弾き飛ばされる。そこに畳み掛けるように父さんが踏み込み、中段蹴りが俺の左脇腹に刺さり、吹っ飛ばされる。
「ぐへぇっ!」
そのまま倒れ込み、起き上がるまもなく首に木刀を当てられる。
「ふっ、まだまだだな」
「いや途中踏み込みで縮地使ったでしょ。スキルと魔法禁止って言ったのに」
「あれ? バレた?」
「だって明らかに早すぎるもん」
「ごめんごめん怒んなって」
「まぁいいけど」
父さんは基本的にずるをあまりしないが、剣術となるとずるをしてでも勝ちに来る。
まぁ4歳に負けるようじゃ世話ないけどな。
「それにしてもお前は強いなぁ。父さんはこれ以上だと敵わないぞ」
「スキルがあるからね。無意識にこういう斬撃を放ちたいって思うと出来るようになっちゃうんだよ」
「おうおう自慢ですかァ?」
「違うよお父さん。だってわざとじゃないもん」
「キィー天才は羨ましいよ」
「でもスキルと魔法ありだと圧倒的に父さんの方が強いじゃん」
「それは当たり前だろ。身体強化の練度も違うし。そもそも経験がお前とは違うんだからな」
「確かにね」
そう、スキルと魔法ありだと俺はボコボコにされる。
だからハンデとしてスキルと魔法禁止にしていつもは練習してる。
いつ俺は勝てるようになるのだろうか?
「ゴラン! ウィン! お昼ごはんよォ!」
「「はーい!」」
父さんと一緒にダイニングへ向かう。
西洋風の家のため家の中でも土足だ。
あっそういえばレジュがいたんだった。
あいつの両親はどちらも騎士であり、確か短期の地方任務かなんかでしばらくうちで面倒みるんだった。
母さんは専業主婦だし面倒みがいいからなぁ。
母さんはたまに俺を抱きしめてくれたりするのだが如何せん母さんの胸が大きいためとても苦しい。
それを言っても言ってもやめないあたり母さんは天然なんだろう。
天然でお人好しの母さんのは困ったもんだ。
そして父さんはどこまでも真面目で義理堅い人なので、この両親にスキルのことを言っても特に何も言われなかった。
気味悪がられるかと思いきや逆に、
「「凄いじゃない(か)!」」
ととても褒められた。
両親は馬鹿な訳では無い。ただ人が良すぎるのと凄まじく子煩悩なだけである。
こんな両親なため剣術の練習に否定的と思いきやそうでもなく、むしろ肯定的である。日々の生活で褒めるところは褒め、叱るべきところではきちんと怒り、まさに親の模範となるような人物である。
なので俺は両親をとても尊敬している。
前世の親は少し放置気味だったしな。
ご飯を食べ終わり、俺は自分の部屋に行きドアを閉め鍵をかける。
ふぅ、よしレジュをまけた。あいつ俺をすぐ俺をおままごとに巻き込もうとするからな。
「ウィン! おままごとやろ!」
「は!?」
「何驚いてるの? 早くやろう!」
「お前どうやって入ってきやがった!?」
「えっどうやってって普通に後ろについてだけど。」
こいつ気配遮断持ってやがるな。
面倒なスキル持ちやがって。
<ネバースキル"戦闘"の効果によりサムタイムズスキル"気配遮断"を得ました。>
おっとうっかりしてた。無意識に念じてしまったか。
「なにボーとしてんの。早くやるよ。」
まぁおままごとの代金ということで。
俺は今日も精神年齢34歳のおままごとを始めます。