第32話 ピンチ
少し短めです。
どデカいゴキブリが構える。
さっき剣が効かなかったなら魔法で攻撃してみよう。
巻き込まれないように自分の周りに結界を張り、最上級火魔法エクスプロージョンを放つ。
『ドガァァァァァァアアアアアアアアアアアアンンンンンン』
ヒュドラの時より魔力が上がっているため、威力が桁違いで、核爆弾並だ。
だがその魔法をものともせず、無傷のゴキブリが突っ込んできた。
魔法が効かないか。なんだかやな予感はしてたが。
そしてこいつはただ魔法が効かないだけではない。魔力を吸収している。
現にさっき放ったエクスプロージョンの残存魔力が周辺に全く残ってない。
通りで思ったより威力が出てなかったのか。
クソ、厄介な。
突っ込んできたゴキブリを剣で5等分、そしてさらに100等分に斬りまくる。
どのように再生するか見届けて――、
「ぐはっ!!」
俺は攻撃を受け、吹き飛ばされる。
そして、遠く離れた岩に衝突する。
背中の痛みはそこまでないが、攻撃を受けた腹はとても痛い。
久しぶりの痛みだな。
結界も張ってたっていうのに……
だが再生のからくりは分かった。
あいつ分裂してやがる。そして分裂してもまた元に戻ることができる。だが分裂しても一体一体の力は元と変わらない。
厄介この上ない。
またゴキブリが迫ってくる。
500等分にしたため、真っ黒の塊のようになって俺に迫ってくる。
きもちわるッ!
そう思いながらも、四方八方から来る桁違いの攻撃を剣で受け続ける。
「はああああああああああああああ!!」
やばい速度が追いつかない。
攻撃が身体に当たりまくっている。
くそ痛てぇ!
"全身強化"を使って何とか凌いでるがキツすぎる。
これはピンチだな。
余裕があるように見えるだろうが、決して余裕はない。"知覚者"の思考力向上によって思考力だけは働くのだ。
なので戦闘開始からこれまで3秒も経っていない。
恐らく俺らの戦いは常人では目で追えない程の速さだろう。
思考力だけが上がっても体が追いつかない。攻撃は見えるのに、防御できない。
「ぐへぇっ!!」
口から血が溢れる。
クソ、"知覚者"の制限を外すしかない。それでこいつの弱点を探る。
よし、解除したぞ。
弱点は……ないだと!?
ステータスは軒並み7万超、相手の精神を覗くことによって、相手の最も嫌うものの姿になる。さらに獲物を食らうことにより、力が増大する。
人のこと言えねぇがチートじゃねぇか。
道理で違和感がしたわけだ。精神に干渉されてたなんてな。不覚だった。
魔法は効かず、斬っても分裂し、元に戻る事も出来る。
やばい嫌な汗が出る。
あと0.01秒間も攻撃を受け続ければ、意識が飛ぶ。
もう全身の骨がバキバキに折れてる。
早く打開策を考えるぞ。
魔法が効かないならスキルを使うまでだ。
いいスキルは――あった。
これしかねぇな。
スキルを使う。
"戦闘王"によって得たスキル"念動力"だ。
もちろんこちらの方がステータスが低いので、一瞬だけしか動きは止められない。
だがそれで十分だ。
スキルを発動し、大量のゴキブリの動きが止まる。
すぐさま俺はある魔法を構築する。
この魔法は構築に時間がかかるため、どうしても時間を稼ぎたかった。とは言っても1秒もかからないけどな。
その魔法は……、
「イリミネーション!」
消滅魔法だ。
もちろん魔法名を言う必要は無いが言っておく。この魔法は無差別で、どんなものでも消滅させる。ブラックホールのような吸収ではなく、消滅だ。空気や魔力さえも消滅させる。
この魔法は魔法を発するのには魔力が必要だが、魔法自体には魔力は込められていない。発動した瞬間、己の魔力を消滅させてしまうからだ。なのでこの魔物に吸収されることは無い。
魔力を込めすぎるとこの惑星ごとなくなってしまうため、範囲は最小限に狭めているが、その消滅の中心にいる俺が巻き込まれないということは無い。
魔力も消滅させるため、結界も意味をなさない。
だが俺は他の魔法も同時に発動している。
転移魔法だ。
まぁ間に合うかどうかは知らんがな。
――この日、ランドン山脈のひとつの山が跡形もなく消滅した。周辺には爆発音が鳴り響き、激しい地震が発生したが、詳しい原因は不明。
後の世には神の裁きが下った場所であると伝えられた。神の怒りを買った魔物への裁きであると――。




