第31話 未確認魔物
少しだけ短いです。
カリ高に入学してから初めての土曜日となった。
学校は休みのため、王都にある冒険者ギルドに向かっている。
冒険者を副業としてる人もいるため、ずっと冒険者活動をしなくてもこれといった問題もないのだが、Sランク冒険者である限り、さすがに5年近く何もしないというのはどうかと思い、こうしてギルドに向かっているのだ。
ギルドに入り、早速受付に向かう。
ギルドの中は朝だからなのか冒険者でごった返している。
「おはようございます。本日はどういたしましたか?」
受付嬢は茶色の髪を肩で短く切りそろえた可愛らしい人だ。
「依頼を受けに来ました」
そう言って冒険者カードを渡す。
受付嬢は一瞬怪訝な顔をしたが、冒険者カードを受け取った瞬間、目を見開いた。
「Sランク冒険者のウィンバルド・スフィンドールさんですか!?」
「はい、そうです」
受付嬢の大きな声が聞こえたのか、ギルド内が一瞬だけ静まり返り、すぐにざわめきが広まった。
「今Sランクって言ったか?」
「ウィンバルド・スフィンドールっていったら国王公認のSランク冒険者じゃねぇか!」
「ガキだって噂は本当だったんだな」
「ほんとに強いのか?」
「やめとけ手を出すと縛り首だぞ」
色々な声が周りに広がる。
「す、すみません。声が大きかったですね」
「いえ、気にしませんから」
「そう言っていただけると助かります」
「それで依頼の方を……」
「あ、そうでしたね。えーと、ただいまSランクの依頼ですと、こちらのふたつですね」
2枚の紙が出された。
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討伐
依頼主:ドートミール国王エドワールド・フォン・ドートミール(間)
ランク:S
討伐種:不明
討伐数:1体
討伐場所:ランドン山脈
依頼料:2500000モン
備考:ランドン山脈にいる謎の魔物を討伐して欲しい。これまでの被害は、冒険者が13名死亡。生き残りの冒険者も精神が崩壊している。討伐できない場合でも、情報だけでも持ち帰って欲しい。
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「国王直々の依頼なんて滅多にないでしょ」
「はい、そうですね。これは異例です」
国が依頼を出す時は普通国王の名前を出さない。
それほど危機感を抱いているということだろう。
「難しい依頼ですがどうしますか?」
「今日はこれだけ受けます」
「もう一方は?」
「来週また受けます。」
「ありがとうございます。これで凍結まっしぐらの依頼が無くなりそうです」
「それは何よりで」
それじゃあ向かうとしますか。
ランドン山脈は行ったことがないため、もちろん徒歩で向かう。
王都の門を出て、ランドン山脈に向けて走る。
ランドン山脈は王国の北方に位置する山脈で、沢山の未確認魔物が多数生息していると考えられている。そのため、高ランクの冒険者の絶好の狩場となっている。
よって、こうしたランドン山脈での未確認魔物の討伐の依頼は多いのだが、高ランク冒険者が挑戦するため、成功することが多いのだ。
その高ランク冒険者が13名も死亡するなんて異常事態だ。他のSランクでも苦戦する可能性がある。
まぁ俺なら大丈夫だろうが。
この時俺は慢心していた。油断していた。まさかこの後足元すくわれるとはな。
「ここか」
ランドン山脈に到達した。
目の前には大きな山々がつらなっている。足場は岩でゴツゴツしている。
景色は壮観。だが先程からピリピリとした感覚に襲われている。
強敵の感覚だ。
ヒュドラの時以来じゃないか。
血が滾るねぇ。
"知覚者"での命の危機はとっくに知っている。だが"知覚者"の制限は外さない。
全部知ったらつまらないだろう。
それに今回は俺だけの命の危機だしな。どうせなんとかなる。
"知覚者"の制限を一部解除し、対象の魔物を探す。
こいつか? なんの魔物かは分からないが、どこにいるかは分かる。
わかった瞬間、走って向かう。
いた! あれか。
狼のような見た目の魔物だ。
うさぎを一心不乱に食べている。
あまり強そうな魔物には見えないな。
よし先手必勝だ。
そう思い一気に飛び出し、一瞬で魔物の首を狩る。
ん? なんだ? ……まぁ気のせいか。
これで依頼終了か。なんだか弱すぎる気もしたがな。まぁ帰ろう。
そう思い歩き出す。
少し違和感があったがあんま強敵じゃなか――っ!?
俺はすぐさま横に飛ぶ。
その横を一瞬で黒っぽい何かが通り過ぎる。
「おいおい冗談だろ……」
そこにいたのはゴキブリだ。
体長が2mはあるのではないかと思うくらいにでかい。
そしてキモイ。おぞましすぎる。
俺は前世からゴキブリが大の苦手だ。ゴキブリは人類の天敵であると本気で思っている。
あんな奴ら滅べばいい。
クソ、鳥肌がやばい。
今すぐ逃げ出したい。
だがそうしたいのは山々だが、先程倒した狼の死体はなく、このゴキブリからは先程の狼と同じオーラがする。
まさかこいつさっきの狼って言うんじゃねぇだろうな。ただ、そうとしか考えられない。
仕方ない。
さっさと終わらせて早く帰るぞ!




