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最強への道 〜異世界で神になるまで~  作者: 土沢天樹
第3章 青年期 学院編
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第30話 企み

 俺の腕の中にはレジュがすやすやと眠っている。


 さすがに泣き疲れたようだ。

 ここで寝かせたら風邪ひくかもな。


「レジュ、レジュ、起きろ。自分の部屋で寝ろ」


「ん〜、ウィン?わかった〜」


 半分目を閉じながらもそもそと起き出す。


「じゃあウィンおやすみ〜」


「あぁ、おやすみ」


 そう言うとレジュは部屋に戻っていった。


 さて、それじゃあ今晩の本来の目的を果たしますか。












---------------


「成功だ」


 やっと完成した。これがあればやつに一泡吹かせられる。


 あいつだ。憎きウィンバルド・スフィンドール。


 何がSランク冒険者だ。ふざけやがって。どうせ国王に認められたのもただ運が良かっただけだろ。入学式のときにあいつにビビっちまったのは不覚だった。

 あんなコケ脅しみたいなものにビビるなんて。


 屈辱だ。


 俺が1番だ。

 あんなド平民が俺のような崇高な貴族に勝てるはずがない。何かの間違いだ。

 不正だ。不正に決まってる。


 俺は天才だ。騎士を多数輩出する武闘派名門貴族、ベルテール伯爵家の次男として生まれ、騎士になるためのノウハウを学んできた。そしてこの名門学院に入り、立派な騎士となり、国王の近衛警護を任される人間になるはずだ。

 平民ごときが俺の前に立つんじゃねぇ!


 正してやる。あいつが使ったであろう不正を暴いてやる。

 そのためにある魔道具を制作した。


 我が一家は代々騎士であると共に、魔道具制作も行っていたマルチな貴族だ。専門のアミューデル伯爵家には敵わないものの、技術を幼い頃から学んできた。

 魔道具名【神の(チュリバスジャ)裁き(ッジメント)】だ。

 かっこいい響きだろ。俺のネーミングセンスに乾杯。


 名前はいいとして、これはあるスキルが付与されている。

 憎きあいつのそばにいる女、レジュレンテ・カーヴィー。あいつにこれを使う。ウィンバルド・スフィンドールにとってレジュレンテ・カーヴィーは生命線だろう。

 恋人なのだからな。

 なぜあいつにあんな可愛い恋人が。


 だがレジュレンテ・カーヴィーはあまり気配が掴めない。

 いるかいないかが分からないのだ。

 まぁそれはどうでもいい。レジュレンテ・カーヴィーを手に入れれば、俺がいいようにあの女で遊んでやる。俺に従うのが女の務めだ。

 くくくく、あいつの顔が屈辱に歪む姿が容易に想像出来る。


「くくくく、フハハハハハハ」


 笑いが止まらない。

 あとは実行するだけだ。


 ウィンバルド・スフィンドール。せいぜい最後の夜を楽しく過ごすんだな。




 -----「バアー!」


「っ!?」


 何やってんだこいつは。

 ここで終わらすな。

 よくある裏での悪役の暗躍みたいなことはさせねぇぞ。


「き、貴様! ど、どっから!?」


「さぁ、どっからでしょう。考えて考えて!」


 おどけて言ってみる。


「な、何を言ってる!」


 あちゃー通じなかったか。


「言葉でございます」


「く、クソが!」


「ん? クソしてぇのか? さっさとトイレに行ってこい」


「ふ、ファイアーランス!」


 俺に炎の槍が飛んできた。

 ほんとに救えねぇやつだな。


 炎の槍は俺に当たる前に止まる。


「あれ? おい、どうした! 行けよ! なぜ動かない!」


 "魔法達人"って意外と使えるんだな。他人の魔法を支配できるのは便利だ。


 まぁいい。

 そして俺が指を鳴らすと、炎の槍は消えていく。


「な! き、消えただと。あ、ありえない!」


「これが有り得るんだな」


 そう言って一歩一歩近づいていく。


「ふ、ファイアーランス! ファイアーランス! ファイアーランス! ファイアーランス! ファイアーランス! ファイアーランスウウウウウ!!」


 馬鹿みたいに乱発してくる。

 効くわけねぇのに。


 そしてやがてMP切れなのか青い顔をして、這いつくばり始めた。


「来るな来るな来るな来るな来るなアアアアア!」


 その言葉を無視し、俺はそいつの目の前に仁王立ちする。

 恐怖からか、漏らしている。

 汚ぇな。


「ゆ、許してくれ〜。わ、悪気はなかったんだァ! 済まない! この通りだ!」


 そう言って土下座を始めた。

 惨めなもんだ。


「おい、カス。こいつがなんだか分かるか?」


 俺はある魔道具を見せつける。


「な、なんだそれは。ブレスレットか?」


「付けろ」


「は?」


「付けろって言ってんだ」


「な、なぜ?」


「この魔道具はな、1回つけると一生てめぇじゃ取れねぇ。こいつを付けてると俺と俺の周りの奴らに手を出せなくなる。手を出すと痛みが全身に周り、下手すりゃ死ぬ。直接、間接でもだ。さぁ、付けろ。お前に拒否権はねぇぞ」


「う、嘘だ。やだやだやだやだやだやだやだ!」


 俺はそいつの喚きを無視して無理やりつける。


 付けた途端、恐怖からか気絶した。

 だせぇやつだな。


 これは別に俺らに手を出すと痛みを発生させる魔道具では無い。外れないようにする魔法は付与されてるがな。


 人の思い込みとは恐ろしい。これだけ脅しておけば手は出さないだろう。


 さすがに未遂で殺すまでやるとバレたら面倒臭いからな。

 私刑はあまりいいこととは言えない。


 だからといってこいつをほっとくと俺やレジュが死ぬ可能性があったからな。

 "知覚者"の制限していない部分のひとつに、俺や俺の周りの人達が死ぬほどのことが起こる可能性が1日以内にあると、俺に知らされるという効果がある。

 晩飯を食ってる時にこのスキルによって、自分の命の危機を知り、素早く"知覚者"の制限を解除し、誰が何をどこで企んでいるかがわかったのだ。

 "知覚者"の制限を解除しないと、細かいところが分からないからな。


 それにしてもこいつほんとに馬鹿だな。

 俺にお約束が通じると思ったら大間違いだ。

 悪役が裏で暗躍し、事件が起きてから誰が何をやろうとしてたかが分かるのでは遅い。

 分かったからには事件が起こる前に潰させてもらう。


 道化を演じて冗談を吐くのも労力がいるな。


 よし、もう寝よう。

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