第27話 矯正
今はあの4人と朝飯を食べている。
エザルはフランクなので、みんな慣れたみたいだ。
そこに1人の男が来た。
「あれ? テスタ、ここにいたのか。一緒に飯食おうぜ。ここ座っていいか?」
「あ、ガンツさんおはようございます」
ガンツと呼ばれた男は返事も聞かずに席に座る。
「なんだ?こいつらお前の友達か?」
「こいつらって言わないでください」
「じゃあなんて言えばいいんだよ。×××か?」
「あーもう黙ってください!」
なんだこいつ。
女性陣がゴミを見る目でお前を見てるぞ。
「なんでだよ。お前昨日も俺の×××の話を無視するし」
「ウィン様の前で汚い言葉を吐かないでください!」
「汚くない。決して×××は汚くない」
「ああーーーっ、もう!!」
テスタが翻弄されてるな。
×が増える度に女性陣の目の温度が下がっていく。
ジュリはキレかかってるし。
ここは俺がなんとかしてやろう。
「おい、お前こっち来い」
「あ、あんた入学式の人!」
「黙れ。いいからこっち来い」
ズルズルと引きずっていく。
「ウィン様、どこいったんでしょう」
「何よあの人。なんか嫌い」
「お姉様が嫌いなら私も嫌いです」
「テスタはあの人と知り合いなのかい?」
「いえ、ただのルームメイトです」
「それは災難なルームメイトだね」
「テスタくんも運が悪いね」
「お姉様って時折ズバって言いますね」
「ん?ジュリちゃんなんか言った?」
「いえ、なんでもないです!」
「そう?」
「自覚がないようですね」
「お姉様は重症なようです」
「ウィンの友達は面白いね」
「なんか色々悪く言われてる気がする……」
「お姉様のことを悪くいうわけないじゃないですか」
「レジュ様を悪く言わないですよ」
「なんで2人とも哀れみの目で私を見るのかなぁ」
「ひ、ひょっひょひゃえせふわはい。ほおあいはいえふ」
「ちょっ、レジュ様、ジュリ様が痛そうですよ……」
「君たち仲良いよね〜」
「それにしてもウィン遅いね」
「確かにそうですね」
「そりょそりょはな……ちょっ! 一気に離さないでくださいよぉー。頬がヒリヒリします」
「一体彼に何をしてるんだろうね」
「なんだか嫌な予感がします」
「あ、ウィンが帰ってきた」
「あれ? ガンツさんの顔の感じが変わりましたか?」
「ウィン何をしてたんだい?」
「……こいつを矯正した。」
「「「「矯正(ですか)?」」」」
「……ほら喋れ。」
「はい、私ガンツルドガー・スマッシュンです。先程の発言は失礼いたしました。今は、ウィン様の忠実なる僕でございます。皆様もよしなにお願い致します」
「……」
「……すまん、ちょっとやりすぎた」
「どういうことですか!? ウィン様、何をしたんですか!?」
「ちょっとだけ言葉遣いを治そうと思ったら、こうなっちゃった」
「どうしたらそうなるのよ!」
「さすがウィン様ですね。私も驚きです」
「ちょっと待ってください。まさかウィン様……あれを」
「……使っちまったよ」
「何やってるんですかー!」
テスタの叫びがごだます。
あれとはスキルのことだ。ちょっとスキルでガンツを治そうと思ったら、意外とこいつがMだということが判明した。こればっかりは計算外だ。
思考力が凄まじい俺がミスるなんて。
「すまん……、計算外だった」
「治ったからいいですけど……」
「ウィンはなんでもありだな。その力のカラクリを知りたい」
「それは私も気になります」
「今度人がいない時に教えてやる」
「いいの、ウィン?」
「いいのですか?」
「あぁ、多分な」
そのあとは6人で朝飯を食べた。
ガンツが終始静かであったことは言うまでもない。
「今日の一限はなんだろうな」
「さぁ、聞かされてませんね」
テスタが答える。
「普通の学科じゃないかな」
「私はお姉様との模擬戦を希望します」
エザルてジュリが自分の理想を言う。2人は真逆だな。
「私は武闘派じゃないんだけど……」
「でもこの学科には入ると」
「だって両親を見習って騎士になりたかったんだもん」
「おばさんとおじさんは騎士として優秀だもんな」
「レジュのご両親は騎士なのかい?」
「うん。立派な騎士だよ」
「お姉様のご両親に会ってみたいです」
「今度ね」
そうこう会話しているうちに教室に着いた。
教室にはチラホラ昨日見た連中がいる。
「視線を感じますね」
「あぁ、まぁ仕方ないだろ」
「お姉様効果ですね!」
「いや私これでも少しだけ"気配遮断"使ってるんだけどね」
「多分この視線はレジュじゃないだろうね」
「俺とエザルだろうな」
「確かに首席と王子ですもんね!」
おいおいテスタ、嬉しそうに言うんじゃない。
「おら、早く席つこうぜ」
そう言うとみんな席に着いた。ガンツとエザルの席は遠い。ジュリも近い方だが、こちらとは会話は出来ないだろう。
レジュとテスタと雑談をしていると、ビゲルが入ってきた。
「静粛に」
皆話をやめる。
「皆来てるな。これから一限の授業を始める。授業の内容はな……」
授業の内容は?




