古の守
______ここは地下4000mにあるとある冒険者ギルド
日々、危険を求めスリルに生きる探検家を迎え入れるこのギルドを人は敬愛の気持ちを込めてこう呼ぶ。
【ダンジョンの光】
さて、一度ギルドからは離れダンジョンの上部にある廃墟街について話をしよう。
ここは、世界一小さな大陸【アトラス】のちょうど真ん中辺りに位置する【ホープタウン】という所だ。過去には炭鉱が盛んで、町全体にも活気があったのだが資源の転換と人を脅かす謎の黒い霧により現在は廃墟になっている...
と政府の出す情報誌には書かれているが実際はちょっと違う。
確かに炭鉱は廃止されたとはいえ人々は早くからエネルギーの新しいあり方について見通しを立てており近年になって海から石油を取り出すことにも成功していたのだった。
では、なぜ廃墟になっているのか?
問題は、炭鉱を開拓する際にパンドラの箱を開けてしまったからだ。
地下深くまで、掘り進める掘削機の刃が地下2000mを少し過ぎた辺りで突如崩落が起こり黒霧が噴出した。
黒霧は次第に町を覆い隠し、生者を喰らいつくした。
運良く町から逃げ延びた者、黒霧に飲み込まれ儚く散っていった者、そして忽然と姿を消した多数の人々...
姿を消した人間達は、崩落した炭鉱付近に密集していたため当時は崩落に巻き込まれた事故死として扱われた。
遺体は誰一人として見つからなかったが、炭鉱に出来た巨大な穴から猛毒の霧が吹き出すのを見る限り生存者がいないと判断するのは妥当だと言えるだろう。
無論、彼らは生きていたのだが...
話は冒険者ギルド【ダンジョンの光】に戻る
____ピチャッ、ピチャッ....
水滴が岩盤にできた無数の割れ目から落ちるその奥______
明らかに人為的なもので作られた雑な作りの看板が石に打ち付けられるような形でずんぐりと構えていた。
端から端まで、優に2メートルは越えるその看板には木のささくれが至るところから張り出しており、看板の表面には一体誰が付けたのか、無数の傷跡がつき何故かかじられた様な跡まで付いている。
文字は薄れてしまい、解読が難しい状態にある。
と、その看板が不意に開き中から青年がペンキを持って出てきた。
齢17程だろうか、中肉中背で血色の良いその顔に満面の笑みを称えて看板に黒ペンキでザッザッと文字を書き込んでいく。
「よーし、こんなもんで良いだろう!姉さんみてくれよ!今までで一番の出来だぜ!」
そう言って少年は、看板の向こうにいる姉に手を振る。
「一番の出来って...今までが酷すぎたから何も期待なんて出来ないわね...」
姉は、弟にやんわり手を振りながらあきれた様に笑う。