経過考察記録673
永久機関の存在はとうの昔に否定されている。
無限に動き続けるものは有り得ない。有史以来、どんなものにも終わりは必ず訪れる。
だが現実問題として、13年前までは不老不死に等しい者たちがいた。
無論、現在ではそのことごとくが死に絶えたのだが。およそ世界の支配者と呼ぶに等しい超常の存在は、たった一人を残して全滅した。
否、全滅という表現は少々の語弊が含まれる。
正しきは――――殺害。
世界を巻き込んだ特殊能力の弱体化は、その実、大規模な殺人事件なのではないかと見なされている。
元来、特殊能力は生命エネルギーを消費して発動する。ゆえに強力であればある程、必要な対価が大きくなるのが必然だ。今回は、そのレートに注目したい。彼らの能力と命の天秤は、明らかに釣り合っていない。
命を削っているはずなのに、何故それ以上の時間を得ているのだろうか。
そこには何か原因が必要とされる。いや、外因と言い換えるべきか。
――――例え話をしよう。
ここに一つの歯車がある。
君が一生を捧げれば、少なくともその間は動き続けるだろう代物。それが何十年かは分からないが、やがて君が死ねば歯車もまた止まる。
これは自然の摂理であり、不変の運命だ。
しかし人間は個人で完結する生命体ではない。先人の意志を受け継ぎ、バトンを繋いでいくものだ。
親から子へ、子から孫へ。
歯車を動かす、なんていう下らない仕事でも伝統と化してしまえばいい。そのシステムさえ確立してしまえば半永久機関の完成だ。
日本の伝統を思い返せば、想像に容易いだろう。
祭りもそう、お正月もそう。文化は人と土地と深く結び付き、今なお受け継がれているのは周知の事実だ。
つまり二つ以上の能力が関わっている可能性を考察したい。
一人では出来なくても、二人以上の力があれば半永久機関を作り出せる訳だ。完全な永久機関の創造は不可能だが、不完全な半永久機関は可能である。
無論、いつ崩壊するとも限らない手段ではあるが・・。
やはり彼女は異常だ。出自、環境のどれを取っても平凡そのものであるというのに、何故天賦の才を持ち得たのか。長いこと調べ続けたが私も世界も、あまり時間がない。
従って小美野うたの調査を急がねばなるまい。ちょうど彼女らに軋轢が生まれた頃合いだ、これを利用しない手はない。
加えて天宮真鶸の治療と調査において、三つの発見があったことを記す。
一つ、彼女の両足は完全に麻痺している。
二つ、特殊能力の才能は皆無と言っていい程に惰弱。
三つ、異常な熱量消費。
高橋氏が敏腕を揮い、次々に研究を進んでいる。氏の見解が正しければ・・・・。




