表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/66

不確かな背中

「――ここは?」

 車を降りれば、体育館ほどの広さの空間。そこは駐車場というよりも、不思議と博物館のような印象を覚えた。

 気になったのは妙な統一感。集まった車は大体であるが、三種類に分けられる。

 私達が乗ってきたような装甲車、黒塗りのリムジン、一般的中型車。

 それらが種類ごとに、三つの集団が作られているのだ。


 違和感はそれだけに留まらない。辺りには発券機の類が見当たらないし、人気もない。

 そして重要なことに、出口がどこか分からない。

 というのも、後部座席から外部の景色は遮断されていたのだ。

 乗車してから5分も経っていないので、都市部の近辺だということは推測できるが・・・。

 どこを眺めても閉鎖的で、頑丈な壁に覆われているのが分かる。


 息を吸えば地下独特の、空気の圧迫感が感じられる。どこかくぐもった、風の動きがない鈍重な空気である。榎並(えなみ)曰く、

「特殊能力肯定派、京都支部です。能力者の保護、研究、治療施設でもあります」


 そして、どこからか現れた防菌服を纏う者たちが、手早く天宮真鶸(あまみやまひわ)和月凪柊(わづきなぎと)を運び出していく。

 当然彼らに付いて行こうとすると、「小美野さんと詩風さんはこちらです」と榎並に止められる。


 外の惨状を考えれば、近くの病院は大混雑に違いない。最優先で治療してもらえるのは有難いが、どうにも不安が残る。

 しかし今は託す他あるまい。彼らの力を借りると、決めてしまったのだから。

 断腸の思いで、二人を見送った。


 榎並に先導されて、白く長い通路をただ歩く。無機質な景色の連続により、もはや方向感覚は当てにならない。

 ここは居住区だろうか、個室の扉が点在している。

「ああ――。別に監禁してる訳じゃねぇ、人間社会は異物を排除するように出来てる。中には、今いる能力者が原因だ、なんて噂も流れてる」

「まぁ能力者が残っている限り、世界はソレを忘れられないでしょうね。だから彼らは、ソレが許せない。能力を捨てることが、人類の進む道だと考えているんです。本当に愚かね――――」


 大型トラックの運転手が思い出される。憎しみの籠った言葉ばかりが頭に残っているが、よくよく記憶を探れば――。

 男の顔は恐怖で染まっていた。

 能力者が何をしたかではなく、その存在が世界の進歩を遅らせる癌である、という考え。


 ・・知らない。

 知ったことか。他人の勝手な考えを押し付けられても、私達だって生きてるんだ。

 なにより友達を傷つけられたんだ、許せない。

 ―――あれ、もしかして私って。


「言わば、そんな世界に適応できない能力者の保護施設。ここにいる者は本人の了承を得た、能力研究の為の協力者です。従って、彼らには破格の対応で優遇しています」

「具体的に何を協力するんですか?」

 興味が湧いた。報酬如何によっては・・・。

「まず身辺調査、身体検査などを通して、体と心の隅々まで明らかにして頂きます。特に能力が発生した時期、場所の詳細は念入りに調べますね。加えてその能力の開発と、原因を解明して一般への普遍化を目指します」


「その、対価は――――?」

「望みのままに」


「――――――」


 脳で言葉を咀嚼する間、目を閉じ肺の中の息を吐き切る。

 悪い話ではない。世界の為という大義名分があるし、デメリットは私の自由が失われるだけ。

 ・・・なら。

 ()()の病気も、治せるんですか?


 その音とも言葉とも言い切れない、ささやかな息が空気を濡らした瞬間だった。

「それでもアイドホールが、紫花(しか)を襲ったことは事実です。そんな危険な奴がいる場所、行く訳ないでしょう。・・・だろ?」

 詩風愛汰(しふうかなた)が、私の前に割って入る。

「―――そう、だね」


 あの場にいた襲撃者は二人。

 ナイフの男と、銃の男。


 これだけの情報で、どうしてアイドホールがいたと分かるんだ?

 銃の男は車内にいた為に全貌が掴めないというのに、どうして自信満々に断言できる。

 そして詩風愛汰は当事者でない以上、銃の男の声も聴いていない。


 ・・・守ってくれる男の子の背中に、既に頼もしさはなく。

 背後から見つめる視線に、秒ごとに不信感が増していくことを彼は気づかずにいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ