空の監獄
二日目。
自由時間を目一杯に使って市街地を探索した。
その最後を飾るのは巨大な白塔、スカイタワー京都。
130メートルの高さで、市内のどこにいても目立つ存在感を放っている。この塔を目指して迷うことは、まずあるまい。
「でか」
夕焼けに照らされて、kタワーはオレンジに色を変えている。真下から見ると、人工物というよりも山にしか見えない迫力。
ここまで近づくと、大きすぎて全体像を把握できないまである。
「おー!」
理由は分からないが、大きいものは人を魅了する魔力がある。
自分を遥かに上回る巨大建造物。己の矮小さがどうでも良くなるスケール。
人の常識を上回るものには、ただ感服するばかり。
・・それが他人にも適用されればいいのに。
嫉妬なんてせず、その感情を純粋な憧れに昇華できれば、世界はもっと優しくなれるはず。
「さぁ早く行こうよ!」
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同時刻、彩甲斐病院。
「いやぁぁああああああああああああああ!ごほっ、お、あああああああああああああああああああああ!?」
――――鋭い絶叫。
発狂と言い換えてもいい声が、病院の静寂な空気を切り裂く。
可愛らしいはずの少女の声が、獣の雄叫びに変わる。
「だめ・・行っちゃ・・。ぅあ、あ。あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?」
眼球が飛び出さん限りに、瞼を見開く。
頭痛が、秒ごとに増していく。倍々に増す、頭が割れそうな痛みに襲われる。
手で押さえる力により、肌に爪が食い込んだ。血が流れ落ちる。
痛みの影響か、彼女の体は限界まで弓なりに仰け反っていた。
「どうしました、小美野さん!?」
看護師の声は耳に入らず、白目を剥き、泡を吐く。
彼女の脳は、ここではないどこかを認識していた。
ガラガラガラ―――――。
音の止む気配は、ない。
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エレベーターは昇る。
刻一刻と、展望デッキに近づく。
その速度は速く、到着まで秒読みである。
「ごめん・・・付き合わせて」
「もー!みんなが行きたい所に行くのが自由時間!!」
「ほんっと愛汰は遠慮ばっかだな。友達ならなぁ、迷惑かけて欲しいもんなんだよ」
凪柊が彼の肩を抱く。
「そうなんだ・・知らなかったな・・・」
「本当にどうしたの?実は行きたくなかったとか?」
「・・・そうかもしれない。みんなと一緒なら、どこでも良かったのに」
表示される階数を、透明な顔で見つめている。
「僕は何がしたいんだっけ」
―――ポン。
気が抜けるような到着音が鳴る。
ここはスカイタワー京都、展望デッキ。
陸地の孤島。
その高度により、地と隔絶された空の監獄。
もはや、退路はどこにもない。
『空の旅をお楽しみください、お客様』
機械音に似た、アナウンスの声がした。
このまま1時間ごとに、あと3話投稿します!




