嵐の幕開け
二週間後。
あれから私たちの身の回りに変化はなかった。
襲われたことすらも勘違いだったのでは、と疑うような平穏さ。
されど嵐の前の静けさは、修学旅行の開始をもって終わりを告げる。
「速!!」
新幹線は京都へ向けて順調に進む。
外の景色は次々に入れ替わり、眺めていて飽きることはない。
―――町、山、川。
人の活動圏から、自然の支配する世界へと移行していく。
自論だが、この手の乗り物は、景色を楽しむアトラクションだと思っている。
移動が目的ではあるが、その道中にも目を向けて欲しい。
これだけ綺麗な景色を見られるなら、例え料金が高くても納得できるのではないか。
「わーーー!」
「そんなに張り付かなくても・・・」
若干呆れ顔で、こちらを見る天宮真鶸。
私は先程から興奮ゆえに、窓に額を擦りつけている。
『・・海だ!』
新幹線のどこからか、若い声が上がる。
「え。どこどこ?」
「反対だよー!」
振り向くと――。
ちょうど山と山の隙間。その途切れた瞬間に、反射した光が届く。
太陽の光を全身で浴びて、海が輝いていた。
青く、透明で、光る。
海の色はどれが本物なんだろう。
おー、という興奮の声が車内に広がっていく。
思わず席を立つ生徒も多く、先生が怒鳴っている。
同じ感動の共有。まるで皆が一つになったような錯覚。
とん、と。
隣から、天宮真鶸に体を突かれる。
「・・ん?」
「なんかさ。青春、してるよね?」
その声は、どこか儚くて――。
「うん、もちろん!」
理由は何もなく、自分が何を言っているのかも理解せずに。
それでも、殊更に声を張り上げた。
「・・・だよね。ならきっと」
『あ!富士山だー!!』
続く大声で、彼女の小声は最後まで聞き取れなかった。
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ここは京都駅。
現代なれど、古の空気残る地。
他の地域とは違い、住人にも気品を感じさせる何かがある。
だがそれに反して、駅は近未来的な構造をしているのが特徴的だ。
一面が鏡で覆われていて、京都の市街地を映し出す。その中でも、特に大きな白塔が衆目を集める。
名を、スカイタワー京都。
どこにいても目を引く、白と赤のハイブリッド。
タワーの大部分は白を基調としており、空の色と同調している。
展望デッキと、タワーの上部には赤が配色されている。
この地を訪れた者は、洗礼として二度の驚愕が待つ。
京都駅とスカイタワー京都。
どちらも、京都を代表すると言っても過言ではない観光地。
文字通りの二大巨頭である。
――今はまだ。




