予定
一限は世界史なので、引き続き小川先生の担当だ。
「えーそれで、修学旅行まであと二週間だな」
6月の中旬に訪れるのは、古都京都。
有名な神社や遺物が多く、古き歴史が残る場所。八ッ橋、舞妓さん等が有名だ。
「だから、この時間に班決めをしておこうか。授業の進行は早いくらいだしな」
一気に教室がざわめき始める。どうする、と近くの友達と話す声。
私も、浮足立つ気持ちが抑え切れない。
先生は時計を確認する。
「ホテルも行動班も、4~5人だからな。今から15分で決めろよ?はい、始め」
そして、仲の良いグループごとに分かれていく。
「真鶸ちゃーん。どうする?」
「んー。もうちょっと様子見てから、かな」
私たちは二人。
グループの推移を見守り、他の2~3人の子と合流する感じか。
両国さんもグループに入っているようだ。しかも会話の中心にいる。
出会ってすぐなのに、異常な程のコミュニケーション能力。
「僕たちと組もう」
そう声をかけてきたのは、凪柊、愛汰のペア。
「・・・・ホテルじゃないでしょうね」
「「ちっがーう!!」」
真鶸ちゃんが胡散臭げに見つめている。
そんな彼女の前に立ち、庇う。
そ、それはつまり。
「だ、駄目だから!そんな、だだだめ・・」
「ほら面倒なことになったよ!!」
「ちょっとー!それ酷くない?」
真鶸ちゃんが周りの女子を巻き込み、事態を広げていく。すごく楽しそうな、にやついた顔。
「え、詩風くんて・・」
「ありえなっ」
鋭い視線と冷たい声が、詩風愛汰を襲う。
「あ、あああ・・。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
膝を着いて、崩れ落ちる。
「愛汰ぁぁ!」
教室はさらに混沌を増していく。
それを引き裂く声は――。
「女子と男子は別って言ってたよ!一緒に夜更かしするの楽しそうだけど、怒られちゃうよ!」
「」
あれ?なんだ?
気付けば、教室の空気は弛緩したものに変わっていた。
「なんで・・?」
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「決まったなー。なんか騒がしかったが」
先生は資料を配り、日程の説明を始める。
京都への修学旅行は、三泊四日。
一日目は、大半の時間を移動に費やす。k府に着いた後、ホテル近くの神社を参拝してチェックイン。
二日目は、最初から自由行動。決められた範囲内から、自分たちで行き先を選ぶ形式。
三日目は、クラスで観光地を巡る。バスでの移動なので、広範囲に足を延ばせる。
四日目は、午前中に有名な神社にお参りする。山の急斜面に作られた本堂から見る景色は絶景とのこと。
ここは本当に広く、ゆっくりと観光するなら3時間はかかる。雑誌には、何周でもしたくなる魅力、と評されていた。
そして、午後に新幹線で帰宅。
「大体の流れはこうだな。じゃあ班ごとに、自由時間中どこへ行くか決めてくれ」
配布された資料をパラパラと、適当に眺める。
「京都の特産品と言えば、八ッ橋の本家は押さえるよね」
「いや、せっかくなんだから歴史が優先ね!」
む。視線が交錯する。
「なんで旅行で勉強しなきゃなんねーんだよ」
「修学する、旅行なんだよ・・」
愛汰は兎も角、真鶸ちゃんが敵に回るとは。
あのご飯大好きな子が・・。
「絶対おいしいってば!」
「あたし、カロリーがあれば何でもいいんだよね」
んな・・!
そんな育ち盛りの男の子みたいなことを言うとは。
「この・・脳筋がり勉!」
「なにその矛盾した存在!?」
「人間とは、時に相反した行動をしてしまう生き物なんだよ?」
むむむ。
「まぁまぁまぁ!ほら、その近くに観光地あるから!ほら、あの小説に出てきた門!」
「「しょうがない」」
言葉が被る。
まぁ和菓子が食べられるならいいか。
「・・大変だな」
凪柊がしみじみと、愛汰の肩を叩く。
「まぁ、調停が役割みたいなとこあるから・・」
「それで私たちは行きたい所選んだし、そっちは?」
「んー、俺はもうちょっと見さして」
そう言って、雑誌をめくり始める。
となれば自然、愛汰に視線が集まる。
「僕は・・・。僕が行きたいのは」
迷うような表情。目を閉じて、深呼吸する。
ゆっくりと口は開かれ――。
「スカイタワー京都」
或いは、彼女もここにいたのかも




