表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/66

停止

和月凪柊(わづきなぎと)side】


紫花(しか)ぁぁぁぁぁぁぁ!」

 落ちた。屋上から――。

 死。一つの単語が頭に浮かぶ。

 背筋に冷たい汗が流れるのを感じる。


 心配になり様子を見に来たら、この状況。

 もっと早く来ていれば・・・。


 大事な人が傷つくのを、眺めることしかできない。

 しかも、みすみす目の前で。それが嫌だったから、俺は。


 伸ばした右手は、花染(はなぞめ)の片足を掴んでいる。

 少女の体重とはいえ、一人の人間だ。それを片手だけで支えることは出来ない。

 普通なら。


「触れられれば、止められた・・」

 俺の能力は、こんなことの為にあるんじゃないだろう?

 血の流れが、早い。体の奥から、大事なものがどんどん抜けていく感覚。

 早くしないと、やばい。


「あ、小美野(こみの)、さん?」

 下から声がする。


 花染を引き上げたいが、俺だけの力で足りるかどうか・・。

 それに、すぐにでも下に行きたいが、生憎。

 ()()()()()()()

 左手でポケットから、スマホを探り当てる。

 愛汰(かなた)真鶸(まひわ)か――。


 プルルルル・・。


 ああもう!長い!

「はいっ!」

「紫花が屋上から落ちた!すぐに下へ!」

「・・へ?」

 もどかしいが、言葉を尽くす時間も勿体ない。

「下!行け!」

「・・・了解!」


 判断が早い。

 瞬間移動は人目に付くから使えないし、真鶸の方が足が速い。

 人選に間違いはない、はず。

 次、愛汰!


 プル・・。


「何すればいい?」

「屋上来い!」

 すぐさま切れる。

 教室で真鶸の様子を見たからか、話が通りやすくて助かる。

 下には、紫花が倒れている。

 遠目では無事に見えるが・・。血は流れていない。能力を使った、と考えたい。


 いずれにせよ、ここからでは分からない。

 その時、背後に気配が生まれた。

「おまたせ」

「頼む、手伝ってくれ」

 花染は、呆然と下を見つめている。

 愛汰が右足を掴む。俺は左足。

「じゃあ、()()()?」

「ああ」


 事前に、腰に力を入れる。

「「っっ!」」

 重力がようやく仕事を思い出したように、作用を再開する。

 重い・・!


「あああああああ!」

 叫んで力を出す。


 男二人掛かりで、なんとか引っ張り上げる。

「あっ!」

 花染の体が乱暴に投げ出される。

 引っ張るのに精一杯だったので、許してほしい。


 しかし、疲れた・・・。

 体はもちろん、能力の反動が大きい。

 息をつき、座り込む。

 花染は女の子座りで、へたり込んでいる。


 少しして、息を整えて、

「もう、死なないか?」

 返答次第では、抑え込む必要がある。

「・・はい」


 事情は分からないが、一先ず動く気配はない。

 安心せず、不信な動作がないか警戒を続ける。


「さっきのことは・・」

「言いません。誰にも」

 ・・信用していいのか?

 彼女の家は――。


「おい!!何してるんだ!」

 先生らがやってきた。後は流れに身を任す他なさそうだ。


 ---------------------

 事情を説明した後、保健室へ移動。

 紫花はベッドに横たわっていた。


 制服はボロボロ、体には擦り傷がある。目に見える怪我はそれだけだった。

 呼吸も安定しているようで、安心する。


 やがて救急車が学校に入って来て、紫花は病院に運ばれて行った。

 体内の精密検査をするためだ。

 もしかしたら――。

 いや、普通なら後遺症が残ってもおかしくないのだ。

 命があることすら、奇跡。


「ねぇ。小美野さんに殆ど傷がなかったんだけど・・。何か心当たりはある?」


 保健室の女教師からの質問。

 当然行きつく疑問。

「体が回転して、たまたま受け身になったんじゃないですか?」

 そんな・・苦し紛れの返答しか出来ない。

「・・そう。そういうことも、あるのかしら・・」


 そして再び職員室で事情を聴かれること、2時間。

 もちろん特殊能力のことは伏せて伝える。

 その間、花染は複数人の教師に囲まれて監視されていた。


 しばらくして、俺たちは解放される。

 花染は、親が迎えに来るまで勾留されるそうだ。

 彼女は終始、放心状態だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ