露見
お風呂から上がる。体を拭いて、袖を通すのは真鶸ちゃんの服。
今日の勉強会は急に決まったので、着替えの用意なんてあるはずがない。
というか、大丈夫なんだろうか。下着まで渡されたけど、平気な顔で・・。
普通気にしない?
かくして私の格好は、お土産屋さんで売ってるパロディーTシャツにショートパンツになった。
おおう・・。自分なのに、自分じゃないみたい。服は自分を作る、というのは本当らしい。
おじさんとおばさんに、お風呂のお礼と就寝の挨拶をして二階に上がる。
その際に。
「新しい娘ができた!」
服装を見るなり、おばさんにからかわれた。
私の対応力では対処できなかった、ということは確かだった・・。
ドアをノック。
真鶸ちゃんはイヤホンを耳にして、勉強している。
すごい真剣。彼女は成績が学内トップクラスなのだ。
今日の勉強会も、彼女の善意というわけだ。私から教えられる科目なんてないし。
机に近づいてみるが、気づかない。
ちょっとイタズラしてみようか!
ゆっくり彼女の頭に両手を乗せる。
あ、頭がガクッて下に動いた。どんな反応するのかな?
「・・・・」
無言で手を動かしている。無心だ。
どうせだから、ポニテを触って遊んでみる。
「・・・・」
真面目だ。スマホで、ポニテのアレンジを調べてみよう。
・・。なるほど、サイドを垂らすのもありなんだ。
あ、編み込んでもいいの?でも難しそう。
うーん、やっぱりできない。
でも、このふんわりポニテはできそう!
一回紐を外して、高い位置で止めて。
ゴムを髪の毛の一房で隠してっと。
で、ボリュームね。わしわしっ。
「お、いいのでは!?」
「あーもー!」
叫ぶなり、急に立ち上がる。
「べーんーきょー!!」
「うぇ?」
ドサッ。
気が付けば、床に組み伏せられている。
「いたいいたいいたい!」
「黙ってればいつまで遊ぶの!」
関節を決められている。肘!肩!いたいって!
「で、でもほら見て?かわいいよ?」
すぐ近くには大きな鏡があったはず。
もっとも、うつ伏せになっているので真鶸ちゃんの様子は分からない。
怒ってる?それとも鏡見てるのかな?
しばらくして、力が緩む。
両手が解放されて、ホッと息をつく。
だが態勢は相変わらず、上に乘られたままだ。
「おーい?」
抗議をする。彼女も軽いけど、私とあんまり変わらないからね。
自分とほぼ同じ体重がかかっているのだ。だんだんきつくなってくる。
「もー・・知らない!」
もうちょっとの間はどいてくれなさそうだ。
にゃーん
「え!?」
かわいらしい猫の鳴き声。これはSNSが届いた合図。
私が設定している着信音に違いない。
「スマホ取って?」
「なんでこんな音にしてるの・・」
上からスマホが落ちてきた。えーなになに?
「愛汰からだ」
内容は・・。
件名:緊急
内容:突然で悪いけど花染って名前、どこかで聞いた気がしたんだ。
それで、紫花と仲がいい花染千雅子について調べた。
まず「花染」と、元居た「光院中学校」で検索したら分かったこと。
花染家は、この中学校の支援者だ。
かなり古い家で、いわゆる名門。政界とも癒着しているらしい。
そして、生粋の特殊能力否定派だ。
しかも現花染家当主は、否定派の幹部級。
この家系では、代々「光院中学、高校、大学」に通っている。
なら、なんで花染千雅子は保山高校にいる?
おかしいんだ、そんな自由を許す家じゃない。
もしかしたら、感づかれたのかもしれない。
狙われているとしたら、状況的に紫花だ。
花染千雅子は危険だ。
背筋が凍る。事態が・・飲み込めない。
なぜ、どうしたら?
私は普通に生きていけるのだろう。
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「・・今の、本当なんですか?」
「ええ。どうしようもない事実」
だとしたら、敵が大き過ぎる。勝てるわけがない・・。
なら、逃げるか?逃げ切れるのか?
「だから、君が未来を変えるのよ」




