カロリーメイカー
バスから降りて、徒歩で五分。
どれも似たような家が集まる住宅地。
既に辺りは真っ暗なので、ますます区別がつかなくなっている。
その一角にある、特徴がない家が真鶸ちゃんの家だ。
スカートのポッケから、鍵を取り出す。
その鍵には、ビーズで作られたキーホルダーがついている。
高校生にしては可愛すぎる一品。なんでも昔、うたとお揃いで作ったらしい。
「ただいまー!」
彼女に続いて、ドアを通る。
「お邪魔しまーす」
リビングの方からテレビの音がする。家に帰ると人の気配がある、という状況には慣れない。
「上がって上がって!」
急かされるままにリビングへ。
「お邪魔してまーす」
リビングは洋室風。そこには、椅子に座る男性と洗い物をする女性。
「いらっしゃい、ゆっくりね」
「ごめんねー。ご飯作ってあげたかったのに」
「いえ!お構いなく!」
お手数をおかけする訳にはいかない。すでにコンビニで、ご飯を調達してある。
「もっと早く言ってくれれば・・。あの子ったら」
「ホントに急に決まったんです、突然すいません・・」
バス内でテストの話題になり、気づいたら勉強会することになっていたのだ。
「はい行こ!間に合わないよ!」
温められた夕飯が、プレートに乗せられている。
「あ。二階で食べるんだ」
「もちろん、勉強しなきゃ!」
えぇ・・。
真鶸ちゃんの部屋は二階、階段を上がって左手にある。
木製のドアを開く。
「ここ、女の子の部屋?」
「失礼っ!」
机、ベッド、タンス等の日用雑貨は揃っている。だがお人形だとか、漫画だとかは一切ない。
しかし特徴はある、むしろ個性的な部屋。
それは棚を見れば一目瞭然。
「プロテイン、カロリーメイカーの山のことだよ!!」
「山じゃないよ!ちゃんと味ごとに整理してあるから!」
確かに綺麗に配置されている。まるでお店に売っているような陳列棚。
「でもこれボディービルダーだよ!?女の子の部屋じゃないよ!」
通販でやってるやつ。何か黒いムキマッチョがやってるやつ。
「まぁ食前にどう?」
差し出されたプロテイン(健康バナナ味)を叩き落とす。
「ああっ!」
「いただきます」
彼女に構わず、コンビニ袋を開く。今晩のディナーは、ツナマヨおにぎりとポテトサラダだ。
「まったく!おいしいのに」
彼女はホカホカのご飯を目の前にしつつ、プロテインを吸い始める。
これで夕飯も完食してしまうのだから、彼女の燃費の悪さは異常だ。
このエネルギーはどこに行っているんだろう・・。
その時、机の横にある黒い袋が目に入った。
あれは、剣道具の袋。
中学生の頃はよく、あの袋を肩にかけていたものだ。
もっとも・・。
今では埃を被っているようだが。
綺麗好きな彼女の部屋にある、唯一の異物。
それは未練、或いは触れたくない記憶だろうか。
私はきっと、見て見ぬふりしかできない。
改めましてご挨拶を。
もし読んでくださる方がいらっしゃれば、どうかよろしくお願い致します。
ゆっくりペースですが、お付き合い頂ければ幸いです<(_ _)>




