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没落の王女  作者: 津南 優希
第三章 その先の未来へ
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閑話 エベレスその後

「見たかった!」


 これまでの経緯(いきさつ)を説明していた私に、やっと目が覚めた様子の美威が叫んだ。


「……何がだ?」


 私は買ってきたものを袋から出しながら、聞き返した。

 服も濡れたまんまで汚れてるし、起きたのならベッドから出ればいいのに……


 大蜘蛛の泉から町に帰っても、美威はなかなか起きてこなかった。どこも怪我してないし、命に別状はないと分かっていたものの、私の胃が痛いことに変わりは無かった。

 さっきだって、美威の護衛にインターセプターを借りて、かなりダッシュで着替えその他を買いに行ってきたんだ。こういう時に少しでも離れると不安になるのは、私の性分的にもう仕方ない。

 ちなみに、迷わずに帰って来れたのは、アレクという道案内人がいたからだ。


「だから、西の国の騎士! この間の手紙の差出人でしょ?!」

「ああ……私はてっきり洋服を見たかったのかと思った。じゃ、着替えこれでいいだろ?」

「いいけど! も~。なんで私が寝てる間に帰っちゃうのよ~!」

「いつまでも寝てるからだろ。それに、なんかメンハトが飛んで来てたから、緊急だったみたいだぞ?」


 アレクは宿に帰ってくるなり飛んで来たメンハトに捕まって、「残念だけど手合わせはまた次に会った時で」と言い残して急いで帰って行ってしまった。

 宿はあと2日分の料金を払ってあるから、良かったら使ってくれと言われたんだけど。

 こんな高級宿に泊まることは滅多にないので、ありがたいっちゃありがたい。


「大体何? 飛那ちゃんのその格好……スカートとか、あり得なくない?? どうしちゃったの?」

「いや、私も何がなんだか……どうやら記憶が飛んでるみたいなんだ。着てた服は血まみれでバスルームにあるのをさっき見つけたんだけど。この服は宿の人間が用意したヤツだって言ってたぞ」

「私が寝てる間に、一体どれだけ時間が経ったのよ?」

「1日だって。私、その間の記憶、全くないんだけどな」

「……私もそうだけど……ねえ、その高そうな服、誰の支払いで買ったの?」

「……ん? そう言われてみれば……?」


 貴重品その他は、さっきまでギルドの金庫借りて預けてあったし。私、多分手ぶらだったよな?


「……アレクが払ったのかな?」

「この宿といい、服といい、その人お金持ちなの?」

「さあ……? 騎士だってこと以外、身分とか知らないし、どうだろうな」


 金があるないはともかくとして、記憶のない1日の間に、結構世話になったのかもしれない。


(次に会ったら、ちゃんと礼を言わなくちゃいけないかな……)


 滅多に着ないスカートに居心地悪さを感じたものの、不愉快な気はしなかった。胸元の花飾りに指先で触れてみる。

 嫌いではない。嫌いではないけれど……


「……改めて見たら、私には可愛すぎるな、この服」

「ビジュアル的には正しいと思うけど、言動がそぐわないわね」

「なんで動きやすい服をリクエストしなかったんだろう……」

「さあ?」


 記憶が飛んでる間に何があったのか、色々疑問だ。それも機会があったらアレクに聞いてみようと思った。

 次はいつ会えるかなと考えたところで、ふと、また会う前提でいる自分に気が付いた。


(……?)


 私らしくない思考な気がする……何故だ。


 あの忙しそうな騎士のことだ。次に会えるのは、しばらく先になるだろうと予想出来た。そのことに、なんだかつまらない気分になるのは……多分、手合わせすることを楽しみにしているからだろう。


 若干、腑に落ちない部分もあったけど、私はひとまず、そういうことにしておいた。

短いですが、閑話です。重たい話に疲れたので……


次回、西の大国プロントウィーグルからお届けします。

修正作業はのんびりペースながら何とか進んでいる(?)ので、明日更新出来ると思います。

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