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没落の王女  作者: 津南 優希
第三章 その先の未来へ
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盗賊団後談小話

@シルビオ&ウーゴ(対話体小説の形式でお届けします)


「ここまではおおむね予定通りってことで……まあ、いいんじゃないですか?」

「そうだな……後は行方知れずの三人を連れ帰れば良しってところか」

「ええ、若も成長したもんですよ。半年前にここを出て行った時は、優しいだけが取り柄の、フラフラやる気のない青二才だったのに」

「人の息子をひどい言いようじゃねえか、ウーゴ」

「おや、間違ったことを言いましたかね?」

「いや、その通りだ……馬鹿だヒヨッ子だと思っていたあいつも、多少は見れる顔になった。ソレルの件もな……俺が出張ったらあんな若造集団、即壊滅出来ただろうが……和解は出来なかったろうからなぁ」

「若ならではの解決方法ってことですか。最初から狙ってたので?」

「さあな……それより、他国に輸出されてるらしい、物騒な生き物の件はどうした? グラナセアに報せたか?」

「はい、しっかり恩を売っておきました」

「生物兵器になり得るからな……実際のところは分からんが、大方そんなところだろう」

「そうですね、対人であれば強力な武器になりますから」

「あんなのを運ぶのはごめんだな。もし依頼が来たら、断っておけ」

「はい、頭」

「運ぶのは、本当の意味で害にならないものがいい……」

「頭? その手に持っている、見慣れない色の紙は何ですか?」

「ああ、これか? 東の国の、心臓の病に詳しい医者の連絡先だとさ……薬を作ってもらえって言われてな」

「ああ、飛那姫さん達ですか……その薬とやらは、効くんですか?」

「分からん。だが、世話になればしばらくは長らえることが出来るだろうって話だ」

「……頭、俺は地獄までお供しますよ」

「よせ、俺が死んだらマルコを助けてやってくれ。ケツ叩くのも、助けるのも、お前が一番適任だ」

「……はい」

「しかし飛那姫ちゃん、美人だよなぁ……マルコの嫁になってくれたら良かったんだがなぁ」



-*-*-*-*-*-*-*-*-

@美威&マルコの母


 この盗賊団に来て、何が一番びっくりしたって、マルコのお母さんだ。

 品があって、ふんわりとした雰囲気なのにしっかり話の出来る、美人なのよね。


 金髪と青い目は北の人の特徴で、この盗賊団の中では浮いているようにも見えた。それでいて、シルビオさんとは違った意味で、みんなからは一目置かれているみたい。


「美威さん、お茶のおかわりは如何?」

「あ、いただきます」


 談話室にやってきた私は、マルコのお母さんが上品な手つきでお茶を煎れるのを見ていた。

 周りを取り巻くほわっとした空気に、温和な性格がにじみ出ているとでもいうのだろうか。ゆるくウェーブがかったロングヘアが素敵だな。何歳なんだろう……かなり若く見えるけど。


「どうぞ」

「ありがとうございます」

「飛那姫さんは、見かけないようだけれど……お出かけかしら?」

「珍しく部屋に引きこもってます」

「まぁ、きっと疲れたのね。昨日大変だったのでしょう?」

「ええ……まあ」


 お茶飲みに行こうって誘ったんだけど、誰かと話す気分じゃないらしいのよね。

 飛那ちゃんは、昨日からずっと黙って考え事してる。多分、自分の中で整理がついたら話してくれると思うから、こういう時、私は気長に待つことにしているのだ。


「本当に、お二人には何から何までお世話になって……感謝してます」

「いえ、そんな」


 美人にあらたまってお礼を言われると、ちょっと照れる。


「明日、ここを発たれるのですって?」

「はい、仕事も終わりましたし、いつまでもお世話になっている訳にはいかないので」

「好きなだけいてくれていいのだけど。マルコが悲しむわね」

「あ、そう言えばマルコ、大丈夫ですか?」


 昨日、グラナセアから帰って倒れたらしいマルコは、今朝から姿を見ていない。

 あれだけ血を失ったんだから、倒れて当たり前なんだけど……平気そうな顔して、結構無理に動いてたんだろうなぁ。


「ええ、部屋で安静にしてるんじゃないかしら。今朝は今すぐサウスホールドに行くって騒いでいたのだけれど……みんなで明日発つからって説得して、しぶしぶ納得してくれたわ」

「そうだったんですか……行方不明のみなさん、早く見つかるといいですね」

「ええ、ありがとう」


 マルコのお母さんは頬に白い指を添えて、おっとりと微笑んだ。



-*-*-*-*-*-*-*-*-

@リザ


 結局のところ、あの男の子は何だったんだろう。

 飛那姫ちゃん(マルコがそう呼んでるから)に聞いても「分からない」としか言わないし。


 いきなり空中から現れた黒い剣には、すごいびっくりした。あいつが牢屋ごとリザードマン達の入った檻を壊したあの時。

 人の形をしているけど、人間じゃないと思った。

 ヘタりそうな腰をあげて、やっと外に出てみれば飛那姫ちゃん達を襲ってるし。

 あたし、よく攻撃したと思う。あんな化け物相手に。今もう一度やれって言われたら、無理かも……


 それにしても、飛那姫ちゃん。あの変なヤツ相手に恐ろしく強かった。

 あんな見た目ですっごい強いって詐欺じゃないかな? マルコはもしかして、あのギャップがいいのかな?

 360度どっから見ても「完璧!」って、女のあたしが思うくらいだもんなぁ。

 はぁ、あたしなんかが、どうひっくり返ったって敵わないよね……


 でもいいんだ。あそこまでレベルが違うと、嫉む気持ちもなくなるってことが分かった。

 あたしはあたしなりに、これからもっと女を磨いて、マルコに振り向いてもらえるような、超いい女になるんだ。


 うん、そうだ。そう決めた。

 待ってろよー! マルコ!!



-*-*-*-*-*-*-*-*-

@飛那姫


 シナモン色の大きな鳥が翼を広げた。兄様のメンハトだ。

 派手なしだり尾はなく、丸い頭。大きな瞳に知性の光が見てとれた。


「じゃあ、しっかり兄様に届けて」


 手紙を託したメンハトは、体重を感じさせない軽やかさで、開いた窓から外へ飛び出した。瞬きする間に空の向こうへ見えなくなっていく。

 兄様の改良品種だというこの伝書鳩(メンハト)、「通常の3倍のスピードで飛ぶ」って話だけど、尋常でない飛翔スピードを見るに、3倍どころではないと思う。

 なんにせよ、手紙のやり取りが早いのは助かる。


(兄様は、魔剣について何か知っているだろうか……)


 昨日のあの子供、いや、ネモと名乗った得体の知れない存在が持っていた、黒い魔剣。

 あれはその昔、私の先生がその身に取り込んでいたものだ。

 あの禍々しい剣が、先生亡き後、一体どうなったのかは知らなかった……あの頃に、ネモに継承されたのだろうか。

 

 何故また、私の前に現れたのか。

 まるで剣に意志があるような、根深い闇を感じる。


 ためらいなく美威を殺そうとした時点で、あいつは今の私にとって、最大の敵になった。

 きっとこの先、また出会うことになるだろう。

 それはもう、運命づけられてしまった抗いようのない未来だと思えた。


 私はその時に……護れるだろうか。


「もう……絶対に、好きにはさせない……」


 父様をはじめ、師匠、自国のみんな。そして先生自身……あの黒い剣が私から奪ったものは、計り知れない。もうこれ以上は、血の一滴も許すことは出来ない。


 私は右手のひらに視線を落とすと、自分の中に()る魔法剣の感覚を握り込んだ。

 今度こそ、必ずこの手で滅してやる。


 私は……負けない。絶対に。


※活動報告でお知らせしていますが、義父が昨晩死去しまして、遠方に帰省する都合上、執筆活動に遅れが出るものと予想されます。

詳しくは活動報告をご覧ください。通常更新の再開目処も、そちらにアップします。


次回、「マルコの告白」は、数日中にアップできると思います。

マルコソ泥の逆襲回(?)で、内容が恋愛ジャンルに偏ってます……盗賊団編は次話でひとまずおしまいです。


今回は一部、対話体小説の形式でお届けしています(ちょっとした試みです)。

地の文がない、もしくはほとんどない文体の小説で、私の中では星新一さんの「悪人と善良な市民」とかがヒット作でした。

なろうでもこの形式を採用されている方がいらっしゃいます。「対話体小説」で検索してみると出て来ますよ。

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