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2-81 集う4 ~救援~

昨日(2019/4/23)に公開しました『2-80 集う4 ~因縁~』ですが、微妙な出来でしたので

今朝(4/24)、後半部分を加筆修正。約千文字ほど追加しています。

もしかしたら後の伏線になるかもしれませんので、未読の方はご覧くださいませ。

 文明の力に頼りすぎていた私は、時計が無いと時間が分からない。お日様がでてるうちはまだいいが、夜になるとサッパリだ。

 しかしシュウ君は、星空でおおよその時間を把握できるという。冒険者にとっては常識らしい。

 私の目を通して見た星の位置によると、現在の時刻は子の刻。0時前後なのだそうだ。


 ハナナちゃんの容体が悪化した。


 全身がガタガタと震え、おさまらない。頬に触れてみると、やけに冷たい。

 これは……もしかして、低体温症か? それとも胸の怪我が影響している?

 だめだ! 医学知識が足りなくて、まったく分からん!

 ハナナちゃんは今、震えている。

 身体の震えの原因は、神経的な物や、アルコール中毒。パンチドランカーってのもあるか?

 でも、状況からして寒さから来るヤツだよな。

 たき火をおこせたので油断していた。夜風は冷たいし、地面も確実に体温を奪っていたのだ。

 対策が足りないのは明らかだった。完全に私のミスだ。

 もうなりふり構っていられない。

 リュックからトランクスを全部出し、敷き布団代わりにして、ハナナちゃんの露出した肌と地面との接触を極力避ける。

 掛け布団も私の上着だけでは足りない。夜風を遮断しきれない。

 残った肌着を全て出し、着ていたシャツも脱いで、全部ハナナちゃんに掛ける。

 私の上半身は肌着一枚になってしまったが、これくらいの寒さならへっちゃらだ。

 腹回りに脂肪アーマーを標準装備しているし、高血圧の影響か、寒さに耐性があるからな。

 残るは薪をくべて、たき火の火力アップ!

 これで出来る事は全てやったよな。もうこれ以上は………いや、もう1つ、あるにはある。

 完全に事案だが! 完全に事案だが!

 誤解されぬよう先に言っておくが、"裸で温め合う"という妄想シチュエーションの事ではない。

 夜風をしのげる小屋や洞窟でもない限り、自殺行為だからな。

 私が考えているのは摩擦熱で温める方法だ。手の平を当てて、軽く滑らせるように高速で動かす。つまり、摩るのだ。

 では、何処を摩るのか?

 一番妥当なの背中は、寝かせているので無理。

 手の平は、ハナナちゃんがグローブを付けているので必要無し。

 ハナナちゃんの肌が露出しており、摩りやすく、かつ、効果の高そうな場所。それは何処なのか?

 太ももだっ!

 上半身が肌着一枚のおっさんが、うら若き乙女の太ももを摩る……。

 うん。どう考えても事案です。

 まったく、何でもかんでも事案! 事案! の世の中だよ!

 若い娘が命の危機にあっても、今の私のように、世間の風評や、逮捕エンドが怖くて何も出来なくて、結果的に見殺しにしてしまう。そんな状況、リアルでもあるんじゃないか?

 ウィル・スミス主演のスーパーヒーロー映画"ハンコック"でもあったな。

 犯罪者との銃撃戦で負傷した女性警官を助けに来たハンコックが、「これから貴方の身体に触れるが、決して下心があるわけではなく、あくまで救出するためであって…」みたいな事を言って、とにかく本人に同意を求める事を最優先にするシーン。

 メッチャ笑えたけど、全然笑えねぇよ。

 ヘンタイ、痴漢、女性の敵などのそしりを受ける覚悟が出来ず、躊躇していると………


 ズシィィン……


 遠くから地鳴りのような音が聞こえた。


 ズシィィン……


 また聞こえた。さっきよりも大きい。何か大きな重い物が、地面に落ちたような……


 ズシィィン……


 更に聞こえた。一定間隔で鳴り響き、しかも音はどんどん大きくなっている。まるで怪獣の足音みたいだ。


 ズシィィン……


 間違いない。何かが近づいている。音のする方角は……関所方面?

 もしかして救援か!? 王宮戦士が来てくれたのか!?


 ズシィィン……


 しかしシカクは反応していない。地響きからして近づくヤツはかなりヤバイと思うんだが、シカクにとって脅威ではない?

 じゃあ、一体何が近づいているんだ?

 

 ズシャァァッ!!!!


 謎の塊が目前に落下し、たき火を吹き飛ばした! 火の粉が飛んできて、火傷しそうになる。

 正体の確認どころではない。アチッアチッアチッと身体に付いた火の粉をはたき、ハナナちゃんの周りに落ちた火種を払いのけ、叩いて消す。

「あああっ!! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」

 女の子の声だ。

 わざわざたき火に落ちてくるとか、ドジッ子にも程がある! 一体何者だっ!?

「遅れて申し訳ございません! 救援に参りましたっ!」

「えっ!? 君は……」


 ワシリーサちゃんだった。


 小さなカエルの"ライ"を通してではない。

 大きなカエルの"ライア"に下半身を融合させた、ワシリーサちゃん自身がそこにいた。

「お父様! ハナナさんは!? ハナナさんは無事ですのっ!?」

「あ……ああ、無事だよ。だけど容体が悪化しているんだ。震えが止まらない」

「ああよかった♪ それでしたら、まだ間に合います♪ お父様、これをっ!」

 そう言うと、ワシリーサちゃんは風呂敷包みを投げてよこす。

「里に戻って回復アイテムを詰めてまいりました。お父様でしたらきっと使いこなせます。お役に立ててくださいまし!」

 ありがたいが、シカクのお目こぼしはないだろう。今の状況では使えない。

 王宮戦士に救援要請をするため、関所に向かったワシリーサちゃんが、独りで戻って来たのか…。

 大体状況は聞くまでもないが、思い違いがあるといけない。確認しなければ。

「リーサちゃん、王宮戦士はどうなった?」

「もちろん、救助に来てくださいます! 早くて夜明けだそうです!」

 夜明け…。つまり、あと五時間か六時間後か…。

 ハナナちゃんの容体さえ悪化しなければ、それでも良かったが…。

 もう待ってられない。

「心配はご無用ですわ、お父様♪ 王宮戦士なんかに頼る必要なんてございません♪」

「それは…どういうこと?」

 笑顔を見せていたワシリーサちゃんは、ジッと動かぬシカクを見るや否や、キッと睨み付ける。


「こんな奴! ワタクシがやっつけてご覧に入れますっ!」

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