2-71 集う3 ~殲滅~
ギチ! ギチ! ギチ! ギチ!
どうする? どうする? どうしよう…
あのネックレス、ハナナちゃんから拝借するか?
ギチッ! ギチッ! ギチッ! ギチッ!
もし、手に持つだけでも効果があるなら、試してみる価値はある。
しかし、ちゃんと首に巻かないとダメなら、そんな余裕は無い。
ギチッ!! ギチッ!! ギチッ!! ギチッ!!
くそ、ダメだ! "掃除屋"が迫るプレッシャーの中で細かい作業なんて出来るか!
このまま迎え撃つしか………
ピンッ ピンッ ピンッ ピンピンピンピンピンッ
へ? なんだ?
"掃除屋"とは明らかに違う、鉄琴を思わせる軽やかな金属音だ。
その方角にあるのは……シカクだった。
見ると、立方体の全ての頂点が少しだけ隆起し、生まれた小さな隙間から、赤い目玉が覗いていた。
いや、目玉と言うより、カメラのレンズに近いか?
ヴゥゥン
突然、低く重厚な音が爆心地に響く。重機の起動音のようでもあり、怪物の唸り声のようでもあるその音は、シカクが初めて現れた時に聞いた音だ。
これまで何の反応も示さなかったシカクが、ここに来て反応した!? 一体何に反応したんだ?
怖いもの知らずな"掃除屋"は、動き出したシカクなどお構いなしのようで、どんどん迫ってくる。
くそっ! シカクを気にしてる場合じゃない! 迎え撃たなくちゃ……
しかし、私はシカクから目が離せなかった。
突然、無数の赤い光線が夜空に現れる。頂点の赤い目玉から放たれる光は、まるでレーザーポインタ……いや、レーザーサイトか。
夜空に向けられていた赤いレーザーは、徐々に地上へ向けられていく。
八つの頂点から放たれたレーザーが狙うのは、"掃除屋"だった。
ビュン!!
一斉に光球が放たれた途端、"掃除屋"の関節音が消えた。
続いて赤いレーザーが消え、頂点に開いた口が閉まり、唸り声のような低い音も消え、シカクは動きを止める。
残されたのは静寂だけだった。
え? え?
無数にいた"掃除屋"はどうなったんだ? シカクが殲滅したのか? その解釈で正しいか?
"掃除屋"がどうなったのか確かめるか? 一番近くにいたヤツは血まみれのタオルに向かっていたけど……
いや、今はそれどころじゃない。ハナナちゃんだ! ハナナちゃんの怪我を何とかしないと!
「エコーちゃん。少しでもいい。ハナナちゃんの怪我を治したいんだ。頼めるかい?」
エコーちゃんは笑顔でうなずくと、ハナナちゃんの胸元へと飛んでいく。
ピンッ
またシカクから金属音だ。しかし鉄琴のような音は一回だけ。
見ると赤い目玉が出現している頂点も1カ所だけだった。
ヴゥゥン
再び、低く重厚な音が爆心地に響く。またさっきの攻撃をする気だろうか?
"掃除屋"の増援だろうか? しかし"掃除屋"特有の移動音は聞こえない。増援ではない。
すると、仕留め損ねがいるのか? とどめを刺すつもりだろうか?
赤い目から一筋の光線が放たれる。夜空を走るレーザーは徐々に地上へと向けられ、その先にいたのは……。
エコーちゃん……だった。
エコーちゃんはレーザーを当てられていることにも気付かず、ハナナちゃんに光の粒をかけようとしていた。
エコーちゃんが死ぬ? 消される! 殺される!?
その刹那、私は必死に手を伸ばし、叫んでいた!
「やめろぉおおっ!!」
赤いレーザーが消え、頂点に開いた口が閉まり、唸り声のような低い音も消え、シカクは動きを止める。
残されたのは……
リンと鳴る鈴のような音だけだった。
シカクは……私の叫び声に反応したのだろうか?
いや。違う。
反応したのはエコーちゃんだ。驚いて光の粒を降らせるのを止めた。
それに呼応してシカクは動きを止めたんだ。
エコーちゃんがハナナちゃんへの干渉を止めたから、シカクも攻撃を止めた……のか?
なんだ? なんだ? 一体なんだ? こいつはなんなんだ!?
ふとエコーちゃんに目をやると、涙目で震えていた。
「あああっ! ごめんよごめんよごめんよ! 今のはエコーちゃんに言ったんじゃないんだ!!
エコーちゃんは何も悪くない! エコーちゃんは可愛くて、とっても優しい良い子だよ!
だからねっ 泣かないでっ」
ちくしょ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
4/15に間に合わなかった〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!