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2-69 集う3 ~パージ~

「チェストプレートが……?」

「そうなんだ。身を守るための防具が今、ハナナちゃんを苦しめている一番の元凶になってる。

 私の見立てでは、どんな手段を使ってでもこいつをハナナちゃんから剥がすことが最優先なんだが…

 オトギワルドではどうしているんだ? 何か方法はあるだろうか?」

「ええっと……そうですわね……

 回復魔法を使いますわ! 回復魔法は二つあって、怪我を治すものと、壊れた道具を直すものがありますの!」

「それは素晴らしい。ハナナちゃんを装備ごと回復させられるんだね! でも、ここに魔法使いはいないよ?」

「う…………そ、そうですわっ!

 ガングビトのお父様でしたら、すぐにでも魔法使いになれます!」

「私が? 魔法使いに?」

「魔法紙の文字はガングワルドと共通です。記述された呪文を唱えれば、魔法が発動いたしますわ! 魔法石があれば大規模魔法だって発動可能です!」

「魔法石? ……ああ、それならハナナちゃんが沢山持ってたよ! "掃除屋"を解体した時に出てきた黒いやつ。

 ってことは、魔法紙ってのがあれば回復魔法が使えるんだね?」

「…………ごめんなさい。これも無理でしたわ」

「え? どうして?」

「よくよく考えてみればハナナちゃん、魔法紙を持たない主義でしたの。

 文字を見てると眠たくなるし、呪文を暗記するのも面倒くさいからって……」

「なるほど。ハナナちゃんらしいね……

 そうだ! 一つ思い出したんだけど、ハナナちゃんの装備ってどれも"回復持ち"だよね?」

「ええ、確かにそうですわ。でも……」

「でも?」

「ここまで破損していては無理だと思います。仮に回復できても、何ヶ月かかるやら……」

「そうか……」

 ワシリーサちゃんの知識でもままならないのか。いよいよもって万策尽きたのか……?

「少し……考えさせてくださいまし」

 打ちひしがれていた私を励ますようにそう言い残すと、小さなカエルはぴょこんとハナナちゃんに飛び乗った。

 私はワラにもすがる思いで、ワシリーサちゃんの動向を見守る。

「分かりましたわ、お父様!」

 朗報……だろうか?

「この鎧はスカイエルフ製です!」

 スカイエルフ? あれ? なんだっけ? 聞き覚えがある。………ああ、そうか。昼間に見た天空城か。

「スカイエルフ製の鎧には、もしもの時に強制パージできるようになってますのよ!」

「それは……本当かい!?」

「確か鎧の首周りの裏側に、小さなポッチがあって、それを折ると、留め金が急速に腐食するって話ですわ」

 私は急いで確かめる。

 首回りの裏側に小さなポッチ…、小さなポッチ…、小さな……あった!!

 プッチンプリンの容器の裏側にある、つまみのようなものが確認できた。これをプッチンと折れば……

 いや待て。

 急を要するのは確かだが、大丈夫か? 何か見落としてはないだろうか?

「どうなさいましたの? お父様?」

「………なあワシリーサちゃん。腐食って大丈夫かな? 身体に悪いものが出たりとか、酷く臭いとか」

「緊急時に鎧を身体から引きはがすものですから、多分身体に悪いものはでないと思いますけれど……」

「そう……だよね。うん、きっとそうだ。そう信じるしかない」

「でも、腐食する時の匂いについては……何とも言えませんわ」

「……………対策が必要かな」

 私の場合は、もしもの時は距離を取ればいい。だけどハナナちゃんは悪臭から逃げられない。

 ひとまずハナナちゃんの側にリュックを下ろし、使えそうな物は無いかと中身を出す。

 ハンカチ……はエコーちゃんにあげちゃったんだよな。

 私の肌着は問題外。もしもの時は使うしかないけど、あくまで最後の手段だろう。

 ああよかった! 洗面器具一式の中に、まだ使ってないタオルが残ってた。

 これをハナナちゃんの顔に被せておけば、完全には無理でも、直撃は避けられるだろう。

 これでもう大丈夫……かな?

「ワシリーサちゃん、他に何かあるかな?」

「いえ、何も思いつきませんわ」

「もし、何か気付いたことがあったら、遠慮なく言ってちょうだいね」

「分かりましたわ」

「じゃあ、パージするよ」

 私はハナナちゃんの首の隙間に指を入れ、鎧の裏側のポッチをへし折る。

 パキンと折れる感触が指に伝わり、同時にシュワァという炭酸水の弾けるような音が響いた。

ちなみに今日で『はじめてのオトギ生活 〜異世界はオッサンに何をさせようとしているのか〜』は

めでたくも執筆1周年を迎えます。……いやちっともめでたくないか。

思わず「まだ終わらねぇのかよ!」とセルフツッコミしてしまいました(><)

すみません。第一章の決着に向けて必死にやっているところですので、

今しばらくお付き合いしてくださいませ m(__)m

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