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2-66 集う3 ~怒る~

 ひか…り……?


 光だ

 光の粒が降ってる…

 綺麗で……

 儚げで……

 まるで雪のようだ…


 だけど優しくて……

 暖かくて……

 深い悲しみが

 耐え難い苦しみが

 溶けていくようだ……


 それはなぜ?

 これはなに?

 もしかして……

 命の輝き……なのかな……


 見上げると……そこには……

 必死に羽ばたく小さな命……

 ベル妖精……?

 エコーちゃん……か?


 エコーちゃんは必死に羽ばたき

 羽からは光の粒が溢れ出て

 私に降り注いでいた……


 なんだ?

 なんだこれ?

 溢れ出る量が……尋常じゃない…

 まるで…これはまるで…

 命を削っているような……


 え?

 えっ?

 えっ!?


 何をやってるんだ! エコーちゃん!

 そう叫ぼうとするが、喉が痛い。まるでずっと雄叫びを上げていたかのようだ。

 水を被ったように頬は濡れ、眼は腫れぼったい。まるで泣きはらしたかのようだ。

 しかし、降り注ぐ光の粒のおかげで、徐々に痛みが引いてゆく。

 どうやらエコーちゃんは、私を回復させようとしているらしい。

 だけど……この量はヤバくないか?

 すでにエコーちゃんの限界は越えているのではないか?


「エ、エコーちゃん!」

 焼けるように痛んでいた喉は、いつの間にか治っていた。

「もういい! もういいよ! 私は大丈夫だから!」

 空飛ぶエコーちゃんに向けて、両手を掲げる。すると光の放出を止め、私の掌に下りてきた。

 掌にしゃがみ込んだエコーちゃんは、酷く疲弊しているようだ。息が荒く、光り方も不安定だった。

 こんな小さい身体に無茶をさせてしまった。……ゴメンよ。本当にゴメン。


 彼女が出す光の粒は、身体だけでなく、心も癒してくれるようだ。

 先ほどまで正気を失い、泣き叫んでいたというのに、今は冷静に考えられる。

 一体何が起きたんだっけ?……

 ああ、そうだ…… ハナナちゃんが……ハナナちゃんは……

 枯れ果てた涙が、また溢れ出る。

 ちくしょう。なんでだ。なんでだよ。

 なんでハナナちゃんが死ななくちゃいけなかったんだ。

 

 受け入れがたい現実が、目の前に横たわっていた。

 元気いっぱいだったハナナちゃんに生気はなく、糸の切れたマリオネットのように、ピクリとも動かない。

 それだけなら、眠っているだけとか、死んだふりを疑っただろう。

 だけど、ハナナちゃんの左胸は陥没していた。とてつもない力で鎧ごと押し潰されていたのだ。

 どう考えても致命傷だった。

 波紋法を習得していれば、あるいはスタンド能力が覚醒していれば、あり得ない大怪我でも生還していたかもしれない。

 でも、そんな事が起こるのは荒木先生の漫画の中だけだ。オトギワルドにスタンド使いはいない。


 右側から質量のあるプレッシャーを感じる。シカクだった。

 地上約1メートルに浮かぶ金色の立方体は、横たわるハナナちゃんに禁忌の遺跡の印を向けていた。

 やはり印のある面が前…、あるいは顔なのだ。

 シカクは私が側に来ても、ハナナちゃんの前で正気を失い狂乱しても、動じることなくそこにいた。

 こいつは一体何なのだ? 何故、ハナナちゃんを殺した後もそこにいる?

 だけどもう、どうでもいい。ハナナちゃんはもういないのだから。

 ハナナちゃん……。たった一日の付き合いだったけど、元気で優しくて良い子だった。

 もしかしたら冒険者として悪さしてたかもしれないが、ハナナちゃんなら天国に行ける。きっと行ける。

 そうでなければ、やりきれない……。

 私はハナナちゃんの遺体の前で、むせび泣く事しかできなかった。


 私は……無力だ……


「痛てっ」

 突然、後頭部を殴られた。大した力ではなかったが、激しい痛みが私を襲う。

 そこは"掃除屋"の待ち伏せの際、パニックを起こした私を気絶させようと、ハナナちゃんに殴られた場所だった。

 ダメージが残る後頭部にピンポイントで不意打ちを仕掛ける? 敵か?

 振り返った先にいたのは……エコーちゃん?

 さっきまで私の掌にしゃがみ込んでいたエコーちゃんがそこにいた。

 心なしか怒っているようだ。

 突然の暴力行為に困惑していると、今度は鼻を掴み、引っ張った。

「いたたた! 痛いよ! エコーちゃん、痛いってば!」

 私の顔の向きを変えて満足したのか、エコーちゃんは手を放す。

 思いもよらぬ暴力行為のコンボに、私は困惑するばかりだった。

 次はどうする気だ?

 エコーちゃんは私の左手の人差し指を掴むと、全力で羽ばたいて引っ張った。

 私は前のめりに倒れそうになり、慌てて右手で身体を支える。

 エコーちゃんの向かう先にあるのは………ハナナちゃんの頬だった。

 暖かかった………。


 ……まだ、暖かい?

 そりゃ、そうだろ。死んで間もないなら、暖かくても不思議はない。

 胸の陥没は致命傷で、私に医療の知識は無い。ここには回復役も治癒魔法も、死者を蘇生する方法も無い。

 どうにもならない状況なのに、何をさせたいんだ?

 エコーちゃんは私の指を放すと、ハナナちゃんの陥没した左胸に着地する。

 そして私を睨み付けるように見つめた。

 分からない。エコーちゃんは何を訴えているんだ?

 私にはハナナちゃんを助けられない。じゃあ何をしろと?

 埋葬しろというのか? 確かにそれも大事だけど………

 エコーちゃんが首を横に振る。「違う! そうじゃない!」と言っているかのようだ。

 じゃあ、なんなんだ?


 え?

 あれ?

 ………

 ははっ………

 あはは………

 あははははっ♪ はははははっ♪

 私は狂ったように笑っていた。

 エコーちゃんが何を訴えていたのか、やっと分かったのだ。

 盛りすぎのニセおっぱいに騙されていたのだと!


 ハナナちゃんが胸に付けているチェストプレートは、元は“騎士姫の鎧“という名の全身鎧。

 ただし、鎧のサイズが一回りか二回り大きく、二つの胸の膨らみも強調されている。

 陥没していたのは、プレートのニセおっぱいだけだったのだ。

 あばらの3〜4本は折れているだろうが、多分胴体までは達していない。

 絶体絶命であることに変わりない。

 だけど、諦めるにはまだ早い。

 そう言うことなんだな! エコーちゃん!

 エコーちゃんは何も語らない。だけどその顔は、可愛い笑顔に戻っていた。

無力なオッサンにハナナちゃんを救えるのか?

雄斗次郎の戦いが始まります。

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