表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/190

2-64 集う3 ~迷う~

 さっきまで聞こえていた戦闘音が、唐突に消えた。何故だ?

 思いつく可能性は二つ。

 戦闘が終了したか、戦場が遠のいたか、だ。


 戦闘の終了とは、決着のみを指しているわけではない。中断も含まれる。

 例えば、ハナナちゃんがシカクの死角に回り込み、どこかに隠れたとする。

 ターゲットを見失ったシカクはどうする? 攻撃を中断し、捜索を始めるのではないか?

 ハナナちゃんが見事隠れ通せたなら、シカクも捜索を諦めて帰るかもしれない。


 そして戦場が遠のいた可能性。

 ハナナちゃんは目にも止まらぬ早さで走れるし、人の常識を越えた跳躍も可能。

 その俊足で戦場を変え、シカクもハナナちゃんを追ったなら、突然の静寂も説明が付く。

 だけど、その逆もありえる。私の方が唐突に離れすぎた可能性だ。

 常識的に考えれば、人並みかそれ以下の体力しかない私が、瞬間的に戦場から離れるなんて不可能だ。

 しかし、ここは異世界。私の世界の常識なんて通用しない。

 未知の力が作用して、私を更なる異世界へと迷い込ませているかもしれないのだ。


 しかし、いずれも仮説の域を出ない。確証を得るには引き返して確かめるしか……

 待て待て待て! 何を考えてる!

 思い出せ大黒雄斗次郎! 私はハナナちゃんから何を頼まれた?

 救援要請だろ! 関所に駐留している王宮戦士に、助けを求めるんだろ!

 引き返したとして、非力な私に何が出来る? 何も出来ないんだよ! むしろハナナちゃんに迷惑がかかるだけだ。

 私に出来るのは一つだけ。今はとにかく関所に走る。走って走って走り抜く。

 そして関所に辿り着いたら、王宮戦士に頼むんだ! ハナナちゃんを助けてくれと頼むんだ!

 それが! それだけが! 私の出来る精一杯! 無力な私に出来る精一杯!

 分かってるんだ、そんな事。嫌になるほど分かってる。

 それなのに、それなのに、足が動かない。前に進めない。

 胸騒ぎが、嫌な予感が、私を引き留め、縛り付けるのだ。

 だからといって、どっちつかずでここに留まるのは、一番の悪手だ。

 救援も呼べなければ、真相も分からないのだから。

 私に与えられた選択肢は二つ。

 懸命にも関所に向かうか、愚かにも引き返すかだ。

 エコーちゃんは不安げに私を見つめるばかり。背中を押してなんてくれない。

 考えてる時間は無い! 今すぐ決めろ! 自分で決めろ!


 決めろ! 雄斗次郎!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ