2-58 集う2 ~隠れ里~
「ワタクシではなくて、歴史のお話でしたよね? もうよいのですか?」
「あ、いえ、是非続きをお願いします」
「では改めて……。ワタクシのふるさと、隠れ里"コウガイガ"が生まれた経緯をお話いたします」
コウガイガ? やけにカッコイイ。勇者王みたいな名前だ。
小林清志さんの素敵ボイスで最新情報を公開してくれそうだ。
「むかし、むかし……」
ワシリーサさんは、目をつぶり、ゆっくり語り始める。
「…あるところに、男女のアサシンがおりました。二人は別組織に所属する敵同士です。度々刃を交え、殺し合いました。ですが中々決着が付きません。
そんなある日、天下を分ける大きな戦がありました。二人も東西の勢力に別れ、激しくぶつかります。
激闘の末、天下の雌雄は決しましたが、二人は戦いの最中、時空の歪みに巻き込まれてしまいます。
気付けば、オトギワルドに迷い込んでいました。
二人は、決着はひとまずお預けとし、"深キ深キ森"に仮の拠点を作ると、元の世界に帰る方法を探します。
しかし、数年の時が流れても、帰る方法は一向に見つかりません。代わりに見つけたのは、かつてのアサシン仲間でした。
異世界に迷い込んだのは、二人だけではなかったのです。
元の世界への帰還を諦めた二人は、オトギワルドに迷い込んだ仲間達暮らせるよう、仮の拠点に集め、拡張して隠れ里にします。
妻夫になった二人はリーダーとしてアサシン仲間を束ね、オトギワルドで傭兵業を始めるのでした。
隠れ里は、"コウガイガ"と名付けられます。それは仲間達の団結を促すため、妻夫となった二人の集派を一つに束ねた名前なのだそうです。
めでたし、めでたし」
「ハナナちゃんのお父様、いかがでしたか?」
「……………」
「隠れ里のお話、楽しめましたでしょうか?」
「……………」
「あの? お父様?」
「な…………」
「はい」
「な…………」
「はい?」
「なんじゃこりゃ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
私は思わず叫びだしていた。これって…… これってつまり………!?
「ご、ごめんなさい。ワタクシ、何かお父様の気に触ること言いました?」
「違うんです! そうじゃないんです! ちょっと整理させてください〜〜!!!!」
「は、はい!」
私は頭を抱えながら考える。え〜と。ええ〜〜っと。えええ〜〜〜〜っと。
「あの…ワシリーサさん」
「は、はい…」
「四百年前の天下を分ける大きな戦って、関ヶ原のことですよね!」
「えっ!? セキガハラをご存じなのですかっ!?」
「アサシンって本来は、シノビとか、ニンジャとか、クサとか呼ばれませんでした?」
「は、はい!? そんな感じで呼ばれてたと思いますっ」
「もしかしてもしかすると……ワシリーサさんってガングビトの末裔だったりします?」
「まったくもってその通りですっ! どうしてお分かりになりましたの?」
「いえ、その、たまたまですよ。たまたま……」
つまり"コウガイガ"とは"甲賀・伊賀"か。スーパーロボとは関係ないんだな。
次に関ヶ原がガングワルドの歴史と確定した。つまり私もガングビトで確定って事だ。
そして関ヶ原は過去にもオトギワルドと繋がっていた事があると。私だけではなかったんだ……。
あれ? もしかして……
私が辿り着くべき場所は、隠れ里"コウガイガ"だったのではないだろうか?
それが何故ハナナちゃんのいた泉に辿り着いたかというと、誘ったのは……
私は側に浮遊する無邪気な発光体を見つめる。
君は何故、私をハナナちゃんに会わせたんだ? 君はどうして、ワシリーサさんを連れてきたんだ?
視線に気付いたエコーちゃんは、何も語らず、ただ、嬉しそうに笑う。
くっそ可愛いかった。