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2-51 集う ~焦燥~

 辺りを見回すが、ハナナちゃんの姿は何処にもない。風と共に消え去ってしまった。

 何処へ行った? 忘れ物を取りに泉に戻ったのか? それとも偵察を兼ねて、一足早く関所に向かったとか?

 いや、でも、「あんまり離れるとオトっつぁんを護れない」とか言ってたよな。だったらそんなに遠くへは行ってないと思うが。

 まったくもう! 消える時は一言言ってくれよ。不安になるじゃないか。

 ……いや待てよ? むしろこれはチャンスではないか!

 ハナナちゃんに覗かれることなくおしっこをする、絶好のチャンス!!

 ハナナちゃんが離れるって事は、今はそれなりに安全って事だもんな。よし! 鬼の居ぬ間に用を足してしまえ!


 サッパリした私は改めてハナナちゃんの行方を推察する。

 手掛かりが残されてるとすれば、ハナナちゃんが消え去る直前までいた所か……。

 彼女が踏みしめていた足場を見ると、大地を蹴った痕跡がくっきりと残されていた。

 これならシャーロック・ホームズでなくても推理できる。

 クラウチングスタートをした際に、蹴った地面がえぐれて土が後方へ飛んでいる。その反対方向にハナナちゃんは向かったって事だ。

 その方向と言えば……、エコーちゃんの声がする方向じゃないか!

 エコーちゃんがいると言っても良いかもしれない。つまり、エコーちゃんに会いに行った……のか?

 妙な胸騒ぎを覚える。

 今のハナナちゃんは、疑心暗鬼の塊だ。

 だからエコーちゃんの事も疑ってかかっていたよな。私の事を助けたからって味方とは限らないとか何とか…

 じゃあ、ハナナちゃんは何しに行ったんだ?

 エコーちゃんが敵か味方か確かめにか? それとも敵と認識して………。まさか、まさか……排除しに行った?

 不安になった私は、エコーちゃんに呼びかける。

「ヤッホーーー!!」

 返事はない。

「おーーーーい!!」

 返事はない。

「エコーちゃ〜〜〜ん!!!!」

 何も返事はない。

 ……………。

 も、もしかしたら、ハナナちゃんに驚いて遠くへ逃げてしまったんじゃないか?

 そ、そうだよ。きっとそうに違いない! なら、もっと声を張り上げないと届かないか?

 ありったけの声を出そうとした、その瞬間…

「ただいま」

 と声がした。

 見ると、甲羅岩のてっぺんにハナナちゃんがいる。

「あ、うん、お、おかえり…」

 勢いが削がれて、気のない返事になってしまう。

 心なしか、ハナナちゃんも元気が無いように見える。何かあったのか?

「何処へ言ってたんだよ?」

「それなんだけどさ………。これってもしかして、オトっつぁんのか?」

 ハナナちゃんはそう言いながら、掌くらいの物を投げてよこす。

「おとととっ……」

 空中でキャッチしようとするも、お手玉をして草むらに落ちてしまう。

 あれ? 今のって……?

 慌てて草むらから拾い上げる。それは行方不明になっていた私の携帯電話であった。

 残念ながら電源は落ちていた。バッテリー切れか、故障なのかは分からない。

「わざわざ探してくれたのか! ありがとう!!」

「え………あ、うん」

 気まずそうに頭をかくハナナちゃん。

「実はこれさ、アタシが見つけたんじゃないんだ」

「え? じゃあ、だれが……?」

「…………え〜っとね…ほら、なんだっけ?」

「え?」

「アタシがさ、なんで『エコー・ベルは泉に来なかったの?』って聞いたじゃん」

「え? うん。聞いてきたね」

「そしたらオトっつぁんは……たしか、『何か別の用事があったんじゃ』とかなんとか言ってたよね」

「うん。そんな事を言った気がする」

「つまり、そういうこと」

「いや、『そういうこと』と言われても何がなにやら………」

 その瞬間、閃きが起きた。そして私は全てを察した!

 ああ、そうか! そういうことかっ!!!

 あの時、エコーちゃんが私と一緒に泉に来なかったのは、泉に敵認定されたからじゃない!

 私の落とした携帯電話を探すために、森へ引き返したのだ!

 そして今になって現れたのは、ようやく見つけた携帯を、私に返そうとしたからだったのだ!!

 やっぱりエコーちゃんは敵じゃなかった! とっても良い子だったんだっ!!

「それでエコーちゃんは? お礼を言わなくちゃ。なあハナナちゃん、エコーちゃんは何処にいるんだ?」

「いや……それが……さ」

 私の問いに、ハナナちゃんは目を逸らし、言葉を濁す。

 おいおいおい、ちょっと待ってくれ!

 まさかハナナちゃん……何かしたのか? エコーちゃんに取り返しの付かないことを……したのか?

「なあ、ハナナちゃん、何処なんだよ」

「…………」

「エコーちゃんは何処にいるんだよ」

「…………」

「エコーちゃんは何処だよっ!」

「えこーチャンハ何処ダヨッ!」

「あっ、バカッ……」

 慌てて腰のウェストポーチを抑えるハナナちゃん。

 今の声は、間違いなくエコーちゃんだった。声が曇ったように聞こえたのは、何かに遮られているからか?

「あはっ♪ あはっ♪ あははははっ♪ 今のは気のせいだよ気のせい♪」

 必死に笑って誤魔化すハナナちゃん。

「ハナナちゃんの嘘つきー」

「はななチャンノ嘘ツキー」

「ちょっ! おまっ! 黙ってろってっ言ったろうが……うっ」

 私の冷めた目つきに気付いて、めっちゃ動揺するハナナちゃん。

「こ、これは違う! 違うんだよ! 誤解なんだよ!」

 何か良く分からない言い訳を始めるハナナちゃんに、覚めた目で見ながらも内心ホッとする。

 少なくとも、最悪の事態ではないようだ。しかし言い訳の感じからして、トラブル自体はあったようだ。

「わかった。もういいや。手、出して」

「へ? 手?」

 観念したハナナちゃんは、ウェストポーチから優しい光を発する何かを取り出し、私の手に置いた。

 これが……この子が……エコーちゃん?

 初めて見るベル妖精の姿に、私は息を呑む。

 それは身長15センチくらいの人型で、背中からは昆虫のような羽を生やしている。

 顔は幼い少女のようにあどけなく、身体は成熟した大人のようにグラマラスで……

 例えるなら……そう! それは正に、生きた美少女フィギュアだった。

 同時に私は違う意味で焦燥する。

 ハナナちゃんが隠そうとしていたトラブルに気付いてしまったためだ。


 着衣が……乱れている……!?


 いや、乱れてるってレベルじゃない。花びらで作られた可愛らしいドレスは、艦娘の中破絵のようにボロボロなのだ。

 手の平に乗ったエコーちゃんは、残ったドレスの破片が落ちないよう、両手で必死に押さえながら、恥ずかしそうに私を見上げていた。

 すまぬ! すまぬ! 

 大変恐縮だが、これから不謹慎な発言をする!

 どうか! どうか許してほしい!

 

 すごく………えっちです。

くっそ〜〜〜!!

3/5中にうpりたかったのに間に合いませんでした。無念(><)

ちなみに今回は、話の流れやイメージはすでに固まっていたので、3時間ちょっとで書き上げられました。

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