表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/190

2-49 集う ~閃き~

「とはいったものの……どうすりゃいいかねぇ」

 先ほどの威勢は何処へやら。しゃがみ込んだハナナちゃんは弱音をこぼし始める。

「実はさぁ、確かめる方法が無いんだよね〜」

「へ? 無いの?」

「うん。思いつかない。だからオトっつぁんさ、何か無いかな、良いアイデア」

「いきなり無茶振りされても困るんだが。それで、何が問題なのさ」

「一番の問題は距離だね、アタシが目を凝らしても、弱い光しか見えないくらい遠いから」

「それってどれくらいの距離……いや、この質問は意味無いか。

 え〜っと、つまり、今の距離だとどうにもならないって事は、エコーちゃんとの距離を縮めれば良いんだよな。

 例えば、そうだなぁ……ハナナちゃんがエコーちゃんに向かって全速力で走ってみる。するとどうなる?」

「すっごい遠くからアタシらを見てるようなヤツだぜ? すぐに気付かれて逃げられちゃうね」

「確かに、武装したお姉さんが全速力で迫って来たら、私でも怖いからな〜♪」

「オトっつぁんみたいに腰を抜かしてくれたら、アタシも楽なんだけどね〜♪」

「つまり、エコーちゃんを追い払う事は出来るけど、正体を確かめられる距離まで近寄るのは無理と」

「うん。それくらい離れてるからね」

「となると逆に、エコーちゃんの方から近づいてもらうか?」

「そこまではアタシも考えたんだ。おびき寄せるしかないって。でねも、アタシの頭じゃ方法が思いつかないの」

「そうかぁ…そうねぇ…そうなると……

 なあハナナちゃん、そもそもエコーちゃんが近づかないのは何でだ?」

「気付かれてもすぐ逃げられるよう、遠くから監視しているってのがアタシの説。

 で、オトっつぁんと仲良くしてるアタシに遠慮してるってのが、オトっつぁんの説。

 な〜んだ、どっちにしてもアタシが原因じゃん」

「ってことは、ハナナちゃんがいなくなれば、エコーちゃんは近づいてくる……のかな?」

「…かも、しれないね。で、オトっつぁんどうする?」

「ハナナちゃんが気配を殺して、どこかに隠れるってのはどうだろう?」

「確かに野良ベルなら騙せるかもしれないね、でも、ベル妖精は使い魔になった途端、めっちゃ頭が良くなるからね。アタシが突然いなくなったら余計に警戒されるのがオチだよ」

「じゃあね……、実際に私から離れて、別行動を取ったふりをしてみるのはどうよ?」

「あんなにすっごい遠くから見てるヤツを騙すとなると、オトっつぁんからすっごいすっごい離れないと無理かな。

 でもその間、誰がオトっつぁんを護るのさ? 自分の身は自分で護れる?」

「ごめんなさい。"掃除屋"一匹でも私には無理っす」

「だよね〜。だからアタシも行き詰まってるの。他の方法、何か無い?」

「他の方法かぁ………う〜〜〜〜〜〜〜〜ん」

 私は腕を組んだり、頭を抱えたり、とんちを働かせようと一休さんのように座禅を組んだり、あばれはっちゃくのように逆立ちしてみるが,

 ハナナちゃんからの視線が痛くなるばかりで、何も閃かない。


 はっ! 

 ま、まさか!!

 なんてこった……大変な事に気付いてしまった。

 特捜戦隊デカレンジャーで、センちゃんが推理をする時逆立ちするのは、あばれはっちゃくリスペクトだったのかっ!?

 そうだ! きっとそうに違いない!!

 元の世界に無事戻れたら、ツイッターで呟こう、そうしよう。

 ………………。

 くそっ! 私のバカバカバカ!

 どうしてこういう時に限って、必要の無い閃きが下りて来ちゃうんだよ!

 個人的には大事だけど!

 個人的にはすごく大事だけど!!

「だ、大丈夫かオトっつぁん! 考えすぎで頭でもおかしくなっちまったか?」

「は、ははは、あ、ありがとうハナナちゃん。私は大丈夫だ。うん」

 

 改めて整理する。

 考えるのはエコーちゃんを呼び寄せる方法……。

 何故呼び寄せる?

 呼び寄せないと、遠すぎて正体を確かめられないから。

 つまり、呼び寄せるのは手段である。

 成すべき目的は光の正体を確かめる事。エコーちゃんで間違いないと裏付ける事。

 ………あれ?

 これって、別に呼び寄せなくても可能じゃね?

「思いついた。……ていうか、思い出した」

「おおっ! 流石オトっつぁん!」

「ようするに、エコーちゃんだと確認できたら良いんだろ」

「そりゃそうだけど…。で、どんな方法なのさ?」

「簡単だよ。呼びかけるのさ」

「は? 呼びかける? それだけ?」

「だってあの子はエコーだよ? 木霊だし、ヤマビコなんだよ? こっちから大声で呼びかければ、可愛い声で返してくれるさ」

「ああ、そうか! 他のベル妖精と混同してた。確かにエコー・ベルならそうする! きっとそうする!」

「じゃあ、早速試してみようか?」

「そう……だね。うん、確かめてみよう。でも、ちょっと待ってね」

 ハナナちゃんは再び甲羅岩に張り付き、そっと覗いた。

「うん、大丈夫だ。光は移動してないよ。じゃあオトっつぁん、よろしくね」

「ん? 私にやれって事? ハナナちゃんはやらないのか?」

「そりゃだって、オトっつぁんのベル妖精だもん。アタシが声かけたって返事してくれないかもだし。アタシはここから様子見てるからさ。よろしく♪」

 ハナナちゃんは振り返らず、光の方向をじっと見つめたまま、そう言った。

 1人で声を出すのはちょっと恥ずかしいんだが、しょうがないか。

 私はエコーちゃんから私の姿が見えるよう、甲羅岩の横に出ると、思いっきり声を張り上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ