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2-48 集う ~敵か味方か~

「は? 何言ってんの? 現に監視してるじゃん」

「もしかしたら誤解かもしれないぞ。エコーちゃんはシャイな女の子だし」

「……シャイ?」

「恥ずかしがり屋さんって事だよ」

「いや、意味くらい知ってるって。そんな事より、どうして誤解かもって思うのさ」


 不穏な事態が起きている森の中、

 距離を取って付いてくる不審なベル妖精を発見する。

 私達を監視してるんだ。敵に違いない。

 そしてベル妖精の正体は十中八九エコー・ベル。

 つまり、エコー・ベルは敵だ。


 流れるようなロジックコンボである。

 しかも冒険者としての経験や勘に基づくとなれば、ハナナちゃんがその結論に至るのも理解できる。

 だがしかし…。だがしかし、である。

「何しろ、エコーちゃんとは一緒に輪唱した仲だからな。悪い子と思えないんだよ」

「りん……?」

 するとハナナちゃんはちょっと不機嫌な顔になり、こんな事を言ってきやがった。

「そのリンナントカって、スケベなこと?」

「ちっが~~~~うっ!!!! 唄だ唄! 輪唱って唄い方があるのっ!」


「とりあえず、説明してくれないかな。その、誤解かもって理由をさ」

「さっきも言ったけど、エコーちゃんはシャイな子なんだよ。私を泉まで案内してくれた時も、一定の距離を置いて、決して近づこうとはしなかったんだ」

「つまり、今と同じ状況って訳だね。具体的にはどれぐらいの距離だったの?」

「そうだな……あれくらいだ。ほら、あそこに赤い実が付いた木があるだろ。あれくらいだ」

 そう言って私は小さな木を指さした。距離は5メートルくらい離れているだろうか。

「その時って、ベル妖精の姿は見えた?」

「いや、濃霧だったり、暗闇だったりしたせいで、桃色の光しか見えなかったよ」

「光だけか……。じゃあさ、今ベル妖精は、ちょうどこの先にいるんだけど、桃色の光は見える?」

 ハナナちゃんが指さす方向を見るが、沢山の木々と深い闇が広がるばかりだ。

「いや、サッパリ見えないな」

「今日のベル妖精ってめっちゃ離れてね?」

「うん。昨夜と比べると離れまくってるな」

「昨夜とは違くね?」

「昨夜とは違うな」

「これってシャイとか関係なくね?」

「それが関係あるんだな」

「そこが分からない」

「いやいや、シャイな性格が災いして近寄れなくて、ストーカーみたいになっちゃったんだよ。恥ずかしがり屋さんキャラなら割とある展開だから。

 具体的に言うとだな、高校一年の女子が、二年生のセンパイと下校したくて声をかけようとしたら、憧れのセンパイと親しげに談笑している三年生で才色兼備な学校のマドンナがいて、近づくに近づけないって感じだな」

「……あのさオトっつぁん、『アタシに分かるように』説明してくれないかな」

「やっぱりダメかっ」

「全然ダメ」

「じゃあ、ハナナちゃんに分かるよう翻訳するとだなぁ……。そういえばハナナちゃん、剣道場に行ってたんだっけ?」

「すぐに辞めちゃったけどね」

「じゃあ剣道場で例えてみようか。

 エコーちゃんは剣道場に入門したばかりの門下生だったとしよう。右も左も分からなかったエコーちゃんの面倒をみて、色々教えた兄弟子がいたとする。これが私だな」

「オトっつぁんが兄弟子ぃ?」

「あくまで例えだから! 余計なツッコミはしないように!」

「へ〜い」

「で、エコーちゃんは兄弟子の指導のおかげで剣技を一つ習得したと。

 それを見てもらいたくて兄弟子の元へ向かうが、なんてこった! 生憎兄弟子の所には客が来ていて、楽しそうに談笑してるじゃないか!

 一刻も早く習得した技を見てもらいたい。でも、肝心の兄弟子の元にはお客さんが来ていて邪魔できない。

 行く事も引く事も出来ない! ああ、どうしよう!」

「その兄弟子のお客ってアタシの事だよね。つまり、ベル妖精が近づかないのはアタシのせいってこと?」

「理由の半分はそうかもな。ちなみに残る半分はエコーちゃんがシャイだから」

「う〜〜〜ん」

 腕を組んで悩み始めるハナナちゃん。

 まだ納得は出来てない様子だが、少なくとも剣道場に例えた説明は理解してもらえたようだ。

「じゃあさじゃあさ」

「はいはい。何かな?」

「どうして昨夜はオトっつぁんと一緒に泉に来なかったのさ。泉の結界を通り抜けられなかったのは敵だからじゃね?」

「それはどうだろう? 結界を通れなかったんじゃなくて、通らなかったのかもしれないぞ。ついて来なかったのも、何か別の用事があったからかも」

「別のって、どんな用事さ」

「それは分からないけど…」

「じゃあなんで今になって現れたのさ」

「その用事が済んだからじゃないか?」

「だからどんな用事だよ」

「いや、それは分からないってば」

「う〜〜〜〜〜〜ん」

 今度は頭を抱えながら悩み始めるハナナちゃん。きっと脳細胞をフルに活性化させているに違いない。

「あのさ、」

「ん? なに?」

「ここで休憩することにしたのはさ、このまま進んで良いのか迷ったからなんだ」

「迷った…。一体何を?」

「アタシ達を追跡する奴がいる。十中八九敵だと思う。今のところ害は無いけど、いずれ牙を剥くかもしれない。

 このまま気付かないふりをして関所に向かうべきか。それとも、こちらから攻撃を仕掛け追い払った方が良いのか。

 それをオトっつぁんに相談しようと思ってさ」

「そうなんだ」

「でも、オトっつぁんの話を聞いてたらさ、どうでも良くなっちゃったよ。もっと重要な事が出来たからね」

「……というと?」

「アイツの正体を確かめる。確かめないと気が済まなくなっちまった。だからオトっつぁんには悪いけど、関所行きは一旦中止ね」

 どうやら私がエコーちゃんを擁護したせいで、ハナナちゃんの好奇心に火を付けてしまったらしい。

 関所までもう少しってところなんだけど……

 ま、いいか。

2月中にうp出来なくて無念っす(><)

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