2-46 おかしな事
一月中にうpるつもりが、寝落ちしてしまいました(><)
予告通りに出来ず本当に申し訳ありませぬ。
「確認したいこと? いいけど、何?」
「"掃除屋"が待ち伏せしたり、"番犬"を見かけなかったり、おかしな事が立て続けに起きているよね。ちょっと整理してみないか」
「整理? おかしな事を? それをすると何か良いことでも起きるの?」
「う〜ん、そうだなぁ。何も無いかもしれないし、何か見えてくるかもしれない。良い暇潰しにはなるんじゃないかな」
「もうじき関所に着くってのに、暇潰しも何も無いと思うんだけど」
「まあまあ、そう言わずに」
「まあいいけどさ。おかしな事ね…。おかしな事…。おかしな事…
あっ!?」
「なに? 何かあった?」
「オトっつぁんがおかしい!!」
「あ…うん。よく言われる。でも面白いとか楽しいとか、そう言う意味じゃなくてだな」
「じゃあどういう意味だよ」
「不思議な事、ヘンな事、いつもと違う事とかかな」
「それじゃ、やっぱりオトっつぁんだな♪」
「確かにそうだ。そうなんだが。そうじゃなくてだな」
「じゃあなんなんだよ」
「…ほら、ハナナちゃんからすれば、私って異世界の人間だよね。でも私からすれば、今いるこの世界こそが異世界なわけよ」
「うん。うん、わかるよ。それがどうしたの?」
「ハナナちゃんからすれば私はおかしいだろ? 異世界人なんだから当然さ。
それと同じで、私にはこの世界は何もかもがおかしいんだよ。何しろ私にとってはここが異世界なんだから」
「……なるほど! そうなるのか!」
「分かってくれたか!」
「分かったけど、それがどうしたの?」
「つまりな、異世界人の私には、目の前で起きた出来事が、ありふれた日常なのか、異常事態なのか、区別が付かないわけよ」
「確かにそうだよな。なるほど。確かにそうだ」
「分かってくれたか!」
「うん、分かった。全部分かった。で、それがどうしたの?」
「え〜〜〜〜〜っとね〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「えっ、なに? なんか怒ってる?」
「……いや、怒ってない。怒ってないよ。上手く説明できない自分の不甲斐なさに苛立ってるだけだから」
「そ、そう…」
「えっと……つまりだ!」
「うん。なに?」
「この世界で起きた出来事が、普通の事なのか、おかしな事なのか、ハナナちゃんに教えてもらいたいんだよ」
「あ〜〜〜、そう言う事か! 分かった! 完全に理解した!」
「本当?」
「ホントホント♪ だからさ、なんでも聞いてよ♪」
というわけで、ハナナちゃんに確認して"おかしな事"と判明した出来事は、時系列順に以下の5件である。
ちなみに別にラノベタイトルを意識したわけではない。
1)私が森に召喚された件
私がその夜に観た夢により、野薔薇ノ王国にて"移籍召喚"が行われた事が判明。
しかし王国の神殿に召喚されるはずが、何故か森で顕現する羽目に。はたして原因は事故か、何者かの妨害工作か?
ちなみに私が結界の泉に入れた件は、"移籍召喚"により私の所属が野薔薇ノ王国に変わったためと思われる。
2)エコーが私を泉に案内した件
やまびこの正体はベル妖精のエコーでほぼ確定したが、エコーが私を結界の泉まで案内した件に関しては謎のままである。
ベル妖精は気まぐれなので、その時たまたま人助けをしたかっただけかもしれないし、
上級魔法使いの使い魔としても重宝されるので、野薔薇ノ王国に味方する主に指示されたのかもしれない。
3)ゲリラ豪雨が何度も発生した件
ゲリラ豪雨自体は珍しいものではない。だが、頻繁に繰り返し発生するのは流石におかしい。
ハナナちゃんは高位魔法を操る何者かが、結界の泉の場所を特定するために起こしていると推測。
はたして謎の高位魔法術者の目的は? 私か、ハナナちゃんか、泉そのものか。
いずれにせよ、泉に留まるのは危険と判断し、関所目指して出発。現在に至る。
4)"掃除屋"が待ち伏せをしてた件
私はハナナちゃんに殴られたせいか記憶が飛んでいるが、ハナナちゃん曰く『あり得ない』状況との事。
私達が泉を出る事を知ってたかのように待ち伏せしていた。しかも女王を護る虎の子の"親衛隊"までかり出す総力戦。
仲間を殺して食べているハナナちゃんへの報復だとしても、巣穴の護りを捨ててまでやる事ではない。
ハナナちゃんは、何者かが"掃除屋"達の正気を失わさせ、操ったのではないかと推測するも、ハナナちゃん自身がその推測を疑っている。
黒幕の正体は不明だが、私達に殺意を抱いているのは間違いないだろう。
5)森の"番犬"が一匹も現れない件
森を見守る野性のケルベロス達。森に逃げ込んだはぐれ者には優しく、森に仇なす外敵には容赦ないという。
少なくとも今朝、ハナナちゃんが狩りに出た時まではいた。だが、私と共に泉を出てからは一度も目撃していない。
待ち伏せをしていた"掃除屋"との一悶着でもいなかったらしい。結構な騒ぎだったはずなのに一匹も現れないなんて、確かにおかしい。
ハナナちゃんが"掃除屋"一匹狩るだけでも監視の目を光らせていたのに……。
森で何かが起きているのだろうか?
「………なあ、ハナナちゃん」
「ん? オトっつぁんどうした?」
「もしかして私達って、誰かに狙われているのだろうか?」
「狙われてないかもしれないね。何しろオトっつぁんはガングビトだし。アタシは冒険者の端くれだもの」
「……と言いますと?」
「ガングビトは異世界からのスペシャルゲストだよ。知性の塊だし希少価値もある。例えるなら金の卵を産む鶏さ。
お宝が森で迷ってると知れば、金の臭いを嗅ぎつけて捕まえようとするんじゃないかな」
「確かに……。じゃあ冒険者は?」
「前にも話さなかったっけ? 冒険者ってのは、裏の仕事も請け負うからね。つまり、恨まれるのも仕事のうちってこと」
「するとハナナちゃんは、コマッタチャンなのかよ」
「なんだよそのコマッタチャンてのは」
「……まあいいや。その件はいずれ考えるとして……目の前の問題を片付けないとな」
「目の前の問題?」
「なあハナナちゃん、私達はこのまま関所に行って良いのかな。私達が誰かに狙われているなら、関所にいる人に迷惑がかからないか?」
「迷惑か…。そんな風に考えるなんて、オトっつぁんてイイヤツだな。早死にしそうで心配になる」
「はははっ、確かにね♪」
「そう言う心配なら大丈夫だと思うよ。アタシ達が向かっているのは、野薔薇ノ王国の関所だから。
あそこには、もしもに備えて王宮戦士が最低一人は常駐してるからね」
「王宮…戦士? 王国の軍人かな?」
「どちらかと言えば、用心棒かな」
「よ、用心棒!?」
「一騎当千の化け物みたいなヤツを、女王陛下がポケットマネーで直接雇っているのさ。だから例えとしては用心棒が一番近いと思うよ。
あるいは勇者とか」
「ゆ、勇者!?」
「それくらい強いって事。だからオトっつぁんが心配する事なんて何も無いのさ」
「そうか。勇者クラスの戦士がいるなら安心だな」
「だから早く行こうぜ。関所にさ♪」
私達の前に光が現れたのは、それから間もなくの事だった。