表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/190

2-43 復讐するはアリにあり ~解明~

 ふと私はリンゴのマークのパソコンを思い起こす。

 動作がおかしくなった時、原因究明するためにやったなぁ。システム機能拡張コンフリクトのトラブルシューティング。

 機能拡張を"基本セット"に戻してから再起動し、これで問題が解決する事が確認されたら、

 "使用停止"にした項目から、三つから五つくらいを"使用"に戻し再起動。

 問題無く起動したら、また"使用停止"にした項目から、三つから五つくらいを"使用"に戻し再起動。

 これを、問題が再発するまで繰り返す事で、原因を究明するのだ。

 classic環境での話だから、もう10年くらい前になるんだな。懐かしい。

 え? 窓々のパソコンではどうしたかって? そっちは知らん。

 ハナナちゃんで例えるなら、泉での肌着姿が"基本セット"になるのかな?

 とはいえ今は移動中だ。ハナナちゃんの装備をはぎ取り、一つ一つを付け直して動作を確かめるなんて無理に決まってる。

 幸い、リンゴの機能拡張に比べれば、チェック項目は圧倒的に少ないし、それぞれの装備の能力もすでに聞いている。

 チェックすべき装備は10点もないし、解明はさほど難しくないんじゃないかな。

 チェストプレート。

 インナーにブルマー。

 ブーツにグローブ。

 それにショートソード……か。

 不揃いのグローブは、そもそも特殊能力持ちじゃないから除外するとして、一番疑わしいのは……

 やはり本命は、跳躍に直接関係するブーツだよな。

 そして次点は、能力を底上げするメイン武器か。

 はたしてどっちが原因なのやら。


「ハナナちゃんのブーツ……何て名前だっけ?」

「“タラリアブーツ試作壱型”だよ。伝令神ヘルメスのサンダルを再現しようとした特注品さ」

「でも、失敗作なんだよな」

「そりゃ、"天翔るブーツ"を作ろうとして、実現しなかったわけからね」

「それだよそれ! 元々が"天翔るブーツ"だったんだろ? もしかして、本来の能力が発動したんじゃないの?」

「アタシも跳び上がった瞬間はそう思ったよ。でも、どんなに足をジタバタさせても空を切るばかりでさ、ちっとも"天翔る"って感じじゃなかったんだよね」

「そっか……じゃあ、メイン武器が原因なのかな」

「アタシの“疾風丸”が?」

「そのショートソードって、装備主の全ての能力を底上げするんだよね?

 もしかして緊急時には、特定の能力だけに効果が集中して、最大限に引き上げるとかじゃないの?」

「う〜〜〜ん」

 ハナナちゃんはしばし悩んで答える。

「もし、そんな能力があったら、アタシは嬉しいな。だから確信を持って言えるね。絶対違うって」

「え…そうなの?」

「そんな便利機能があったら、値段がもっとつり上げられてるよ。武器屋の主ってのは、例に漏れずがめついんだから」

「そっか……」

 一見すると武器屋の主を悪く言っているようだが、彼らの鑑定眼に絶対の信頼を抱いているとも取れるな。

 "疾風丸"が原因である可能性は低そうだ。となると、原因はまったく別にある?

 いや、今一度“タラリアブーツ試作壱型”を疑うべきか。

 確か……何だったかな……ハナナちゃんが何か言ってたような……。何か引っかかるんだが、思い出せない。

 メモ帳も確認するが、特に気になることは書かれてなかった。うっかり聞き流してしまったようだ。

「その試作壱型なんだけどさ………なんだっけ?」

「ん? どした?」

「えっと……あれだ……動力……そう、動力源はなんなの?」

「動力源? もしかして魔法石のことかな? 特殊能力持ちは、どの装備も魔法石が埋め込まれていて、条件に合わせて魔法が発動するようになってるんだよ」

「ほうほう。なるほど」

 勉強になった……が、これじゃないな。もっと別の話を聞いた気がする。なんだっけ? なんだっけ?

「あ、そうだ! 思い出した! 原理だよ原理! 確か話してたよね、原理について!」

「……いや、原理とか…。アタシってば脳筋だよ? そんな難しいこと、分かるわけ無いじゃん」

「あれ? そうだっけ? 聞き違いだった? でも、確か聞いたはずなんだけどな。どうやって空を走るのかって……」

「そう言えばそんな事聞かれたような……。でも、アタシが知ってる事なんて、技術屋の独り言を聞いただけのうろ覚えだよ」

「いいからいいから。それを教えてよ」

「たしか、大地を踏み込んだり蹴る度に発動するとか……」

「それは発動条件だね。それ以外で何か覚えてない?」

「翼無しで飛ぶ方法がうんたらかんたら……。落ちなければ飛んでるってことだとか何とか……。えーっと、他には……」

 脂汗を流しながら悩むハナナちゃん。一生懸命思い出そうとしているのが、痛いほど伝わって来る。

「重力を反転させればふんだらら……」


 その瞬間、私の頭の中に大きく二つの文字が現れた!!

「!?」だ!

 漫画演出に例えるなら、見開き大ゴマの中央に、二文字だけがデカデカと載っているような感じだ。


「それだぁっ!!!」

「え!? な、なに?」

「それだよハナナちゃん! 重力の反転だ!」

「それがどうしたのさ」

「"掃除屋"を思い出してよ。あいつらは身体が重すぎてそのままじゃ動けない。だから魔法で身体を軽くしてるわけだけど、質量が変わってる訳じゃない。

 魔法で重力を反転させてるんだよ。だけど魔法の効果を弱めて、自分の体重を感じなくする程度にしている。

 それ以上効果を上げると、宙に浮かんだり、上空に落ちてしまうからね。ここまでは分かる?」

「まあ……なんとなく」

「ま、いいや。続けるよ。

 次にハナナちゃんのその試作壱型。こいつの発動条件は、大地を踏み込んだり、蹴ったりすることだ。で、発動する能力は重力の反転だよね。

 もしその能力が永続的なら、一度ジャンプすれば上空に落下し続けて、宇宙の果てまで行ってしまうけど、大地に戻るってことは効果は一時的なんだろう。

 もし、空中でジャンプをし続けることが出来れば、天翔るブーツも実現するんじゃないかな? 方法は思いつかないけど」

「本当!? 今度スカイエルフに会えたら話しておくよ♪ ガングビトがお墨付きをくれたって♪」

「いや、お墨付きはやらんぞ! 根本的な問題が解決してないからな! それに私がガングビトかどうかはまだ確定してないからっ

 変な誤解は与えないようにしてくれよ!」

「へーい」

「ところでハナナちゃん、今だとどれくらいジャンプできるの?」

「じゃ、ちょっとやってみるよ」

 そう言うと、ハナナちゃんは真上にジャンプする。すると5メートルくらいの高さまで、軽々と跳び上がった。十分スゲェ。

 恐らくは、ハナナちゃんの身体能力、ブーツの重力反転、"疾風丸"の能力底上げが合わさり、相乗効果が現れたのだろう。

「でも、何度やっても、あの時みたいな大跳躍にはならないんだよね」

「そりゃそうだよ。大跳躍の原因は"掃除屋"だから」

「私は覚えてないけど、赤組の"掃除屋"は、私達の動きを封じようと、百匹以上で重力魔法をかけてきたんだろ?」

「うん。アタシはともかく、オトっつぁんは身体が重くなって身動き取れなくなってた。

 担ぎ上げるのは大変だったよ。"騎士姫の鎧"の重量半減効果が無かったら、無理だったと思う」

「で、"プリンセスブルマァ"で頭をフル回転させて状況を見極め、"フェアリードレス"のスピードアップを活かして"親衛隊"の攻撃を避けたと」

「うん。そんな感じ」

「つまりハナナちゃんの装備が全部役に立ってたって訳だ。スゴイよな。見事に能力を活かしきってる」

「そうでしょ♪ そうでしょ♪」

「見た目がアレなのは残念だけどね〜」

「うっせー」

「そして大跳躍だよ」

「そうそう、それそれ。結局何が原因だったの?」

「私達は赤組の重力魔法を何重にも喰らって、体重が重くなった。それは質量……つまり私達自身が重たくなった訳じゃなくて、重力が強くなったからなんだ。

 そして試作壱型の能力は、大地を踏み込んだ瞬間、重力を反転させる。つまり…」

「つ、つまり?」

「ハナナちゃんが"親衛隊"を跳び越えようとジャンプした瞬間、私達にかかっていた何倍もの重力が、何倍もの反重力に変わったんだ。

 これが思いがけない大跳躍の原因さ」

「なっ! なんだって〜〜〜〜〜!!」

「ホントに分かった?」

「…………ちょっと待ってね」

 腕を組みながら考えを整理するハナナちゃん。またしても脂汗を流している。本当に脳筋なんだなぁ……

 などと温かい目で眺めていると、突然何か閃いたような明るい笑顔になる。

「ああ、そうか! そう言うことか!

 わかった! 全部わかっよ! オトっつぁん!

 つまりこう言うことだね!

 この"タラリアブーツ"を使えば、

 太った重い人ほど高くジャンプできるんだ!」

「……いや違う。そうじゃない」


 この脳筋娘にどうすれば重力を説明できるだろう。

 頭を抱える雄斗次郎であった…(暴れん坊将軍風しめくくり)

まだもうちょっとだけ続くんじゃぁ

中々次のエピソードに進めないっす〜(><)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ