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2-42 復讐するはアリにあり ~考察~

 私達は今、検問所を目指して森をのんびりと歩いていた。

 森では何が起こるか分からないから、なるべく急いだ方が良い。だが悲しいかな、私にはハナナちゃんのような体力が無いかった。

 舗装されていない獣道を走り続けるなんて、どう考えても無理なのだ。

 もちろん方法はある。ハナナちゃんが私を背負い、森を駆け抜ければいいのだ。これで時間は確実に短縮できる。

 ただし、ハナナちゃんはスタミナを大幅に失ってしまう。いざという時に過労でダウンでは、不測の事態に対応できなくなるだろう。

「いざという時の為、ハナナちゃんの負担はなるべく減らそう」という私の提案に、ハナナちゃんは渋々合意してくれた0。

 幸い、日が落ちるのはまだ先だし、危険も今のところ無いようだ。

 例えば、"掃除屋"は時々見かけるが、青黒い彼女達(働きアリって確かメスだったよね?)は、私達に興味すら抱かない。

 出血したり死なない限りは、襲われることもないだろう。

 というわけで、当面の懸念材料は、道中がヒマでヒマでしょうがないこと。

 だから"謎の大跳躍"は、絶好の話題であった。原因の解明に至らないまでも、考察するだけで良い暇潰しになるだろう。


 さて。

 "原因"とは、何かを引き起こす元の事だ。人に引き起こされる"原因"は、大きく分けて二つある。"内因"と"外因"だ。

 "内因"とは内的な原因……つまり、ハナナちゃん自身に原因があるという事だ。

 "外因"とは外的な原因……つまり、ハナナちゃん以外に原因があるという事だ。


 まずは"内因"について考えてみよう。

 ハナナちゃんの中で眠っていた秘めたる能力が、絶体絶命の危機に陥ることで、突如覚醒したのではないだろうか?

 超能力バトルものの、王道中の王道だな。

「それって、身体の中から力が溢れ出るとか? う〜〜ん。そんな感じはしなかったなぁ…」

 あっさり否定されてしまった。

 しかし無自覚に大跳躍したという事は、溢れ出る力も認識できないものかもしれない。

 とりあえずは保留だな。


 次に"外因"について考えてみよう。

 こちらは色々ありすぎて、絞り込むのが大変だ。

 例えば、第三者の介入だ。誰かがハナナちゃんに魔法を使って、助けてくれたのではないだろうか?

「この森ってさ、今もあの時も、アタシら以外に人の気配を感じないんだよね。

 もし助っ人がいるとしても、いまだに顔も見せなければ、気配も感じないんだよ? それって気持ち悪くね?」

 可能性としては有りだが、もしかしたら敵かもしれない。あるいは、通りすがりの仮面ライダーかも……

 これじゃ事態を複雑化させるだけだな。

 限りなくハズレの方向で保留としよう。


 次はハナナちゃんの持ち物かな。

 謎の人物から託された謎のアイテムが、実は……なんて展開も変身ヒーローものではよくある。

 秘密の能力を持った装備があるのではないだろうか?

「ナイナイ。そんなものがあったら、武器屋や防具屋で"鑑定"した時に見つかってるって」

 いきなりの全否定である。

「能力持ちの武具ってのはね、高値で売買されるんだよ。商人は絶対見逃すワケがない。

 そりゃ、安く買い叩くためにすっとぼけることはあるだろうけど、

 高く売りつける好材料なんだからさ。能力持ちなら黙っているわけがないんだよ」

「同じ能力持ちでも、呪い系だったら?」

「同じことさ。呪い系なら呪い系で、使い道はいくらでもあるからね」

「なるほど…」

 秘密の能力持ちって可能性は、ハズレで確定だな。


 じゃあその次は……ああ、持ち物に関しては、もう1つ可能性があったな。

 能力持ち装備の組み合わせによる相乗効果、もしくは誤作動だ。

 パソコンの場合、便利だからと色々なアプリをインストールすれば、動作が遅くなったり固まったりする。

 食べ物の場合は食べ合わせとかあるよな。

 ハナナちゃんの装備はどれも能力持ちだ。互いの能力が干渉し合うことで思わぬ動作を起こしたのかもしれないぞ。

「それは……確かにあるかもな……」

「おお、否定しないのか。何か心当たりでもあるの?」

「それがさ、前に炎系と氷結系の装備を付けたことがあるんだけどさ、互いの能力がぶつかり合っちゃって」

「あーー」

「燃えないわ、凍らないわでさ、まったく役に立たなかったんだよね」

「なるほど、たしかにそうなるな」

 氷炎将軍フレイザードとか、氷竜炎竜がシンメトリカルドッキングして超龍神とか、ゲム・ギル・ガン・ゴー・グフォとか、

 相反する二つの力を組み合わせて最強になるってシチュエーションは、厨2心をめっちゃくすぐるんだけど……

 そっかぁ。やっぱ現実的じゃないか。厨2の道は果てしなく遠いなぁ。

「だけどおっかしいなぁ。手に入れた時に散々試したし、実戦でもこれまで誤動作なんてしたこと無いんだけどなぁ」


 ハナナちゃんの反応を見るに、どうやらこれがアタリっぽいな。

 それにしても、能力持ち装備同士のコンフリクトか。そんな事が起きるんだな。中々に面白い。

 暇潰しどころか、好奇心と探求心が膨らみまくってワクワクしてきたよ。

 楽しい森林浴になりそうだ♪

"復讐するはアリにあり"編は今回で終わりにして、次回より新展開……のつもりだったのですが、

思いがけない方向に話が膨らんでしまいましたので、もうちょっと続けます。

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