2-41 復讐するはアリにあり ~大跳躍~
「あははははっ♪ なんだよそれ~~っ♪
ほんっと面白いこと考えるよな♪ 大丈夫♪ 大丈夫♪ アタシもオトっつぁんも、ちゃ~~~んと生きてるよ♪」
「そうか、ちゃ~~~んと生きてるか。それなら安心だなっ♪
で、具体的にはどう切り抜けたんだ?」
「え? あ、うん。それがね……
とっさのことだったから、上手く説明できないんだけど……」
「と言うと?」
「アタシは気絶したオトっつぁんを抱えて、"掃除屋"の群れをかいくぐろうとしたんだ。大半の"掃除屋"は身動き取れないからさ」
「私を抱えて……ということは、ラグビーみたいに敵を避けながらなゴールに向かう感じかな?」
「らぐびーってなに?」
「私の世界の球技だよ。えっと……ボールを使ったスポーツの一種なんだけど……分かる?」
「もしかして球遊びの類か? 金持ちが道楽でやるやつ」
「まあ、そんなところだ。それより続きをはよ」
「あ、そうだった。えっと……途中までは上手くいったんだよ。
けど、一匹の"親衛隊"が道の真ん中で立ちふさがってた。こいつは自由に動き回れるから右にも左にも進めない。
かといって、後からは別の"親衛隊"が迫ってた。やべぇ! どうしよう!」
「確かにやべぇな。それからどうした?」
「アタシは思い切って、そいつを跳び越えた!」
「私を抱えたまま"親衛隊"を? 無茶するなぁ」
「しょうがなかったんだ。あの時は本当に、それ以外の方法が無かったからね。
だけどその時、不思議なことが起こったんだ」
「なっ!? 『そのときふしぎな事が起こった』…だと!? RXかよっ!」
「……あーる……えっくす?」
「ごめんなさい! 無視してください! ごめんなさい!」
「あ、うん」
「それでハナナちゃん、不思議なこととは一体!」
「それがね、とにかく"親衛隊"に捕まらないよう、思いっきりジャンプしたんだよ。そうしたら………」
「そうしたら…どうしたの?」
「とんでもなく跳び上がっちゃったの!!!」
「とんでもなく、跳び上がっちゃった!?」
「うん。木のてっぺんよりも高く跳び上がって、"親衛隊"どころか道に群がる"掃除屋"全部を一気に跳び越えちゃった」
「この森の、樹木よりも高くって……」
思わず頭上を見上げる。どの樹木も10メートル以上はありそうだ。
「枝を伝ってなんとか着地した後は、縄張りの境界線まで死に物狂いの全力疾走さ。
ホントにビックリだったよ。あんな大ジャンプ、生まれて初めてだもの」
「てことは、その大ジャンプのおかげで私達は、絶体絶命のピンチを切り抜けたってこと?」
「そう…なるのかな? そうなるんだよね、多分。でもさ、素直に喜べないんだよ」
「そりゃまたどうして?」
「だってさ、アタシがどうしてそんな大ジャンプ出来たのか、サッパリ分からないんだよ!
ねえオトっつぁん、これって気持ち悪くね?」
「確かに原因不明ってのは気持ち悪いな。……あ、もしかしてそれが理由か」
「え? 理由って?」
「ほら、さっきまでどうやって切り抜けたか話してくれなかったじゃん」
「あーーーーっ、うん。そ、そうだね。オトっつぁんが正気を失ったら大変だから、話していいのか迷ってたんだよっ」
「本当に?」
「ホントホント、ウソじゃないって」
このリアクション……。嘘はついてないにしても、話してない理由は他にもありそうだな。
でもま、いいや。私の精神が疲弊してるのは間違いないし、これはこれで気になるものな。
無自覚に想定外の大ジャンプをして、ピンチを切り抜けた…か。
原因は何だ?
短いですが、今日中の更新が難しくなりそうでしたので、一旦ここでうpります。
続きは何とか明日中に上げるつもりです。