2-32 出発準備 ~おめかし~
脱皮した片袖を付け直していると、手伝ってくれていたハナナちゃんが呟いた。
「オトっつぁんの装備も決まったことだし、そろそろアタシも“おめかし”しようかな。水も引いてきたしね」
おめかし? ああ、武装するって事ね。
今のハナナちゃんはシュミーズ一枚にブーツを履き、腰にソードベルトを巻いている。
攻撃力、運動性は高いものの、防御力は皆無。近場で“掃除屋”を狩るだけなら十分でも、遠出をするには心細いのだろう。
ん? おめかしで武装…?
はっ!!
ということはつまり、“コマンドー”的なあれか!
敵地に上陸したシュワちゃん演じるメイトリクス大佐が、水着姿から戦闘服や武器を身に付けて、
デェェェェェェンってなるヤツ。
観たことない人には何を言ってるかサッパリだと思うが、デェェェェェェンなんだよ!
考えるんじゃない。感じてくれ!
「そういやハナナちゃんて、どんな装備なのさ」
「えへへ♪ 乞うご期待♪」
そう言うと、服を脱ぎ散らかしていた茂みへと向かい、途中で何か話したそうに振り返る。
「あ、そうだ。着替える前に言っておくけど…」
「ん?」
お? なんだ?
お約束の一言か?
なんだ分かってるじゃないか。なんだかんだ言っても美少女だもんな。
するとハナナちゃんは、ニヤニヤしながらこう言った。
「覗いても、いいからな♪」
「ち~が~う~だ~ろ~~~!!
そこは『覗いたら殺す!』とか言えよ~~~!!
お約束でしょうが~~~!!!」
「はっはっは~~~♪
生憎アタシは美少女なんかじゃないんでね、そんな約束事なんざ知ったこっちゃね~よっ♪」
憎まれ口を叩きながら、ハナナちゃんは茂みに消えた。
何で自覚がないかなぁ。……いや、まあ、確かに性格は男前だけどさ。
性同一性障害って感じでも無さそうだし……。
あ、もしかしてあれか! “もののけ姫”的なヤツ! 幼い頃から醜いって言われ続けてたせいで、美的感覚がおかしくなったとか?
瀕死の状態で「そなたは美しい」って言わなくちゃいけないのかな。
う~~~~~~ん。
ま、いいや。
ハナナちゃんが“おめかし”してる間に、私も荷物をまとめておこう。
防具作りに使わなかった時刻表や着替えをリュックに詰める。荷物は減らしておくに越したことはないけど、これくらいなら大丈夫だろう。
問題は2本のペットボトルだ。このまま空にしておくのは勿体ない。無難に飲み水を入れておくか?
泉の水は綺麗に見えるけど、生水はお腹がヤバイ事になるからなぁ。大腸菌とか繁殖してなくても、体質に合わないかもしれないし。
できれば湯冷ましを作っておきたいけど、沸騰させてから冷やすまでの時間が残されているかどうか。
ここら辺はハナナちゃんに相談するしかないな。
「おまたせ~~~♪」
格好良く武装したハナナちゃんがデェェェェェェンっと現れた。
デェェェェェェンっと。
デェェェェェェン……
………………
いや、ちょっと待て。
作画崩壊とか、そう言うレベルじゃないぞ。
なんだよこの残念ファッション!
美少女には寛容な方だけど、流石にねーわ。
そして私は察した。
察してしまった。
ハナナちゃんはメインヒロインではないのだと。
調子が出なくて描きたかったことの半分しか書けませんでした。
無念ですが、これ以上遅らせてもしょうがないのでうpりました。