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2-17 ここは異世界 ~キャラ崩壊~

ちょっ、ちょっとハナナちゃん! やめてくださいよ! とにかく顔を上げてください! これじゃ話も出来ないじゃないですかっ!」

 恐る恐る顔を上げるハナナちゃんは、まるでお白州に連れて来られた町娘を思わせる。

 マジビビリするハナナちゃん。これはこれで可愛いとは思うのだが、らしくないよなぁ。これってキャラ崩壊じゃね?

「とにかく状況を説明してくださいよ。これじゃあ何が何だか分かりません」

「ええと……その……ええと……も、もうしわけありません、おとじろうサマ!」

 そう言うと、ハナナちゃんは再び頭を下げる。困った。これでは話が進まない。

 しょうがない。今分かっていることで推測してみよう。

 ハナナちゃんがビビっているのは私自身か? 違うよな。それなら昨夜からビビってないとおかしい。

 ならば私が“ガングビト”だから? でもこれは確定ではない。はっきりしているのは“オトギビトではない”ということだけだ。

 すると一番疑わしいのは“トレードサモン”か。トレード……トレードか。ちょっとトレーディングカードで例えてみよう。

 私と私ダッシュがトレードされたカードだとする。だとしたら、トレカの所有者は誰だ?

 世界の王か? 大富豪か? それとも神か? どんな者であれ、力を持った存在なのだろう。

 つまりハナナちゃんがビビっているのは、私の背後にいる存在ってことか。

 なんだか嫌な結論が出ちまったな。この推測が正しければ、私は誰かの所有物ってことになる。なんかむかつく。

 さて、どうしたものか。真相に近づくためにも話を聞かねばならないけど、何度問いかけても肝心のハナナちゃんが話してくれない。

 いや、話そうとはしてくれるのだが、言葉に詰まって話せなくなるのだ。で、「もうしわけありません、おとじろうサマ!」を最後に会話が止まってしまう。その繰り返しだった。

 百歩譲って私のバックにビビるのは仕方ないとして、会話が出来ないのは何故だろう? 何が原因だ?

 例えば、特定の言葉が口に出来ないよう、ハナナちゃんに呪いがかけられているとか? それとも原因は私か? ハナナちゃんに日常会話をさせられなくするような何かが………

 あっ! そうか! そういうことか!! 私に合わせようとしたのか!! その結果、話が出来なくなってしまったと…

 つまりこの状況を打開するには、私が歩み寄れってことか……。ああ、ちくしょう。

「わかった! 分かったよハナナちゃん! 私も普通に話すから! タメ口で話すよう頑張るから! だからハナナちゃんも無理に敬語とか丁寧語とか使わなくていいから! 頼むから普通に話して!」

 それを聞いたハナナちゃんは恐る恐る顔を上げる。

「い……いいの?」

「おう!」

「本当に?」

「もちろんだともさっ!」

「オトっつぁん…でもいいの?」

「むしろ“オトっつぁん”と言ってちょうだい! いまさらハナナちゃんに“おとじろうサン”とか言われても気持ち悪いだけだしなっ」

「ええ〜。それはちょっと傷つくなぁ」

 苦笑いを浮かべながら身体を起こすハナナちゃん。

 よかった。まだビビりがちではあるが、少なくともコミュニケーションは成立する。

 話も進められるよな、多分。

 私の“敬語キャラ”も崩壊してしまったけど、ハナナちゃんだけ特別ってことにしておけばいいよね?

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