23-14 せいぎのめがみさま ~信徒編14~ 昨日、今日、明日
明けましておめでとうございます。
何とか昨年のうちに今エピソードを終わらせたかったのですが、なかなかまとめられず、年を越してしまいました。
なかなか更新出来ませんが、今年もよろしくお願い致します。
「だめだ! 決められないよ! なあねーさん。もう少し…何か無いのか? 判断材料になりそうな事はよ」
「そう…ねぇ……。じゃあ、こんなのはどうかな? 三つの正義は、昨日、今日、明日に喩えられるの」
「昨日、今日、明日?」
「そう。"昨日"を救うのがアベンジャーで、"今日"を救うのがセイバーで、"明日"を救うのがデストロイヤー」
明日を救えバルディオ……いや、何でもありません。
困惑するロズワルドでしたが、不自然に掲げられたミカゲルの右腕を見て気付きます。
「……ああ、そうか。アベンジャーが"昨日"を救うってのは、何もかもが後の祭りだからか」
「そう。事件は遠い過去のこと。正義は成されず、悪が勝利してしまった。犠牲者は多くを奪われ、失われた命は戻らない。もう取り返しは付かない。だからせめて、犠牲者の無念を晴らそう。名誉を回復しよう。財産を取り戻そう。死者の未練を断ち切って、冥府へ旅立たせてあげるの」
「未練を断ち切るか……。でも、アベンジャーって"復讐者"って意味だよね?」
「そうだよ。元となったコンセプトがアベンジだもの」
「確かに復讐も未練を断ち切る手段の一つだとは思うけど、あくまで手段であって目的ではないよね?」
「………そこに気付いてしまうとは…天才か!」
「いや、気付くだろ普通。で、なんでこのズレを残したままなのさ?」
「だってしょうがないじゃない! 他にカッコイイ名前が思いつかなかったんだもの!」
「え!? カッコイイ名前って……それって大事か?」
「もちろんよっ!! メチャクチャ大事に決まってるでしょっ!! 厨2心をくすぐらずして、何が正義かっ!!」
「え~~~! …いや、まあ、いいけどさ」
どうやら厨2心溢れるネーミングは、ディケーたんの大好物なようです。貴方も正義のヒーローを目指すなら、ちょっと気恥ずかしくなるような技名を考えましょう。正義の女神様の御利益があるかもしれません。
「じゃあ、"救済者"って意味のセイバーが"今日"の正義なのは、今そこにある危機を扱うから?」
「その通りだよ、ロズくん」とディケーは笑顔で相槌を打ちます。
「今この瞬間、善なる者が酷い目に遭わされている。だけど、まだ手遅れじゃない。被害者ではあっても、犠牲者ではないのだから。セイバーの力なら、まだ間に合う。まだ救える。絶体絶命の窮地をひっくり返せる。生きている人達を救えるんだよ」
「ねーさん。それって、命を救うためなら手段を選ばないって解釈で良い?」
「それは……、ロズくんはどんな状況を想定しているの?」
「例えば、善なる命を救うために、悪を見逃すとか」
「それは十分にあり得る話だね。でも、状況次第なら、その逆もあり得るかな」
「その逆って?」
「善なる命を救うために、悪なる命を見捨てる……とかね」
ロズワルドは困惑しました。
「悪党の命なんて、どうでも良くね?」
「そこまでドライでいられるなら問題無いかもね。でも、命を救うのがセイバーなのよ」
「つまり、あくまで善人が最優先だけど、可能なら悪党も助けちまうってことか……。へっ! お人好しにも程があるぜ!」
「ふふふ♪ そうかもね♪」
しかしディケーは確信していました。ロズワルドがセイバーになれば、悪党だって迷わず助けるだろうと。
「アベンジャーが死んだ人の魂を救う能力で、セイバーが今生きている命を救う能力か……。この二つだけ見れば両極って感じだけど、正義のタイプはもう一つあるんだよな」
「うん、そうだよ。デストロイヤー。悪の野望を打ち砕くの」
「破壊者って意味だよね。それがどうして明日を救うことになるのさ」
「想像してみて、ロズくん。悪党が邪な野望を実現したら、どうなるかな?」
「…んまあ、被害者や犠牲者が沢山出るだろうな」
「だったら、邪な野望が実現する前に、悪党が行動に移す前に、それを阻止したらどうなるかな?」
「………沢山出るはずだった被害者や犠牲者が、まったく出なくなる!?」
「そうだよ♪ 悪の野望が芽吹く前に摘み取って、"明日"を救う。それがデストロイヤーなの」
するとロズワルドは、黙ってうつむくと、なにやら考え始めました。
「なあねーさん。確かアベンジャーは死者の訴えを聞き、セイバーは被害者の悲鳴を聞いて、使命が発生するんだよな。デストロイヤーはどうやって悪の野望を知るんだっけ?」
「邪な悪巧みを聞くの」
「邪な悪巧みか……。う~~~~~~ん。それって危険じゃね?」
「危険って……何が危険なの?」
「あの野郎をぶっ殺してぇとか、世界なんか滅んじまえとか、邪な考えを持ってる奴なんて世の中にはいくらでもいるって事。だけど、実行しない限り罪じゃない。考えるだけで罪だというなら、オレなんて何千何万と罪を犯す大悪人になっちまうよ」
「ふ~~~ん♪」
「な、なんだよねーさん、そのにやけ顔は」
「思春期に迫った少年が、一体全体どんな悪巧みを妄想しているのかな? ねーさんすっごく興味あるんですけど♪」
「絶対教えねえ!」
顔を真っ赤にしながらそっぽを向くロズワルドは、普通の少年のようでした。
「でも、大丈夫だよロズくん。デストロイヤーに聞こえるのは、より具体的で、より実現性のある悪巧みだから」
「同じだよ。具体的で実現性があっても、実際に動かなけりゃ犯罪とは言えないさ。いくら"明日"を救うためだからって、殺したり再起不能にするのはどうかと思うんだ」
「殺したり、再起不能に? う~ん、それはちょっと短絡的だね」
「……違うのか? でも悪巧みを止めるなら、それくらいしなきゃ無理じゃね?」
「確かに一つの手ではあるけど、やるとしても最後の手段だよ」
「じゃあ、ねーさんはどんな方法を想定してるのさ」
「まず、声の正体が悪事を繰り返す凶悪犯であれば、情けは無用よね」
「うん、分かる。そう言うヤツはぶっ殺しても良いんじゃないかって思う」
「でも、ロズくんが気にしているのは、声の正体がまだ罪を犯していない子の場合よね」
「そう。前科すらない人の場合だよ。どうするのさ?」
「説得するんだよ♪」
「説得!?」
「そう♪ 叱るなり、説教するなり、交渉するなりして、悪巧みを実行しないよう説得するの」
「なるほど! つまり口八丁という訳か!」
「被害者や犠牲者だけでなく、犯罪者もいない未来を創る。そのために最悪の未来を"破壊"する。これがデストロイヤーなの」
「そりゃすげぇ。実現できるなら、正に"明日"を救う能力だな。本当に実現できるのなら」
「……うん。そうだね。それはあくまで到達すべき理想だよ。本当に上手くいくかどうかは、実際に実現できるかは、やってみないと分からない」
「ああ、そう言えば、ねーさんの加護は、まだ未完成だったよな」
「うん。でもね、ロズくんなら……」
「え? オレ?」
「ロズくんなら、この能力を使いこなせると思うんだよ。だってロズくん、頭が良いからね」
「ねーさんは、オレにデストロイヤーになって欲しいのか?」
「………そうだね。期待はしている。でも、決めるのはロズくんだよ。私の言葉に流されず、心の信ずるままに決めてちょうだい」
「心の信ずるままに……か」
ロスワルドの出す答えは、はたして……
そしてまた今回もエピソードが終わらせられなかった〜〜〜(><)
次回こそは区切りを付けたい!