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19-18 ミニ解説 冒険者達の利己的信仰

 話を進める前に、私のようなガングビトには分からない、オトギワルドにおける信仰の常識について解説させてください。


 まずこの世界には、神様や女神さまが物理的に存在します。

 今のところ、私が会えているのは半神前はんにんまえの女神さまこと、野薔薇ノ乙女の皆々様だけではあります。が、彼女達の現実離れした、萌えキャラのような可愛らしさ、美しさを知れば、神様がいるって信じられるってものです!!

 

 次に神様への信仰ですが、この世界では、もれなく明快に分かる形で恩恵があります。

 浅い信仰で得られる恩恵を"御利益"と言います。神殿詣でやお守りの購入等、簡単に得られるのが魅力です。そのお手軽さから、複数の異なる神様から"御利益"を得ようと、あちこちに神殿詣でしてお守りを買い集め、ストラップのように束ねて持ち歩く強者も。ただし"御利益"によっては互いの恩恵を打ち消し合う(場合によってはマイナスになる)事もありますので、束ねて持ち歩く時は注意が必要です。

 深い進行で得られる恩恵を"加護"と言います。より強力な恩恵を得られます。得られるのですが……。信徒になる、修行を積むなど難易度は高く、一柱の神に心酔し、深入りし、引き返せなくなるため、それなりの覚悟も必要です。


 そしてこの世界における宗教団体の最大勢力は、今も昔も"唯一神教団"です。

 民の信仰は国単位で違い、大抵は国教か地元の神様ですが、こと冒険者達に限定した場合、"唯一神教団"信者が圧倒します。

 その理由は、洗礼を受けるだけで、冒険者にとって真に都合の良い"御利益"を得られるからでした。

 一言で言うならば、ドラクエのあれです(笑)

 それでは分からない方もいるでしょうから、具体的に例を挙げて説明しましょう。


 冒険者がダンジョン攻略に挑み、モンスターと戦い、敗れてしまったとします。洗礼を受けていれば、ここから様々な恩恵が得られるのです。

恩恵1)モンスターに敗れ、命を落とす直前、装備ごと時間が止まり、石化状態となります。

恩恵2)戦闘後、仲間が生存していれば、石化状態の身体を教会まで運んでもらい、神父に復活させてもらえます。ただし、全ての肉体を回収していなければ、欠損した状態で復活することになります。

恩恵3)お布施を追加することで、石化した身体の回収アイテムを借りられます。見た目は掌サイズの棺桶で、一人分の身体を吸い込んでくれるので、持ち運びに便利です。しかも回収した肉体のパーセンテージが表示されるため、回収洩れも防げます。

恩恵4)ダンジョン攻略をする際、前もって教会に攻略プランを提出しておけば、パーティーが全滅しても安心です。教会に雇われた業者が回収し、教会で復活させてくれるでしょう。ただし、持ち金の半分をお布施として没収され、「死んでしまうとは何事ですか!!」と、神父の長〜い説教を聴かされる羽目になります。


 ですが"唯一神教"も万能ではありません。条件次第では"御利益"が役に立たない場合もあるのです。

 まず、人間同士の殺し合いでは石化しません。"御利益"が発動するのは、あくまでモンスターとの戦いに敗れた時のみです。

 次に石化状態になっていても、瘴気に長らく晒され続けると、石化状態が強制解除され、死に至ります。瘴気のまん延するダンジョンで全滅した場合、急いで回収しないと手遅れになるでしょう。

 他にもいくつかの不幸が重なる事で、不具合が起きるようです。いくら便利でも、当てにしすぎるのは良くないという事なのでしょう。



 最後に冒険者の具体的な信仰例を挙げて終わろうと思います。

 まずは一般的な冒険者です。

 "唯一神教団"の"御利益"を得るために、当然のように洗礼を受けていますが、他の神様の"御利益"を得るため、節操なくお守りを買い集めていたりもしています。信仰の掛け持ちは、"唯一神教団"としては許されざる禁止事項なのですが、一度厳しく取り締まろうとして、冒険者ギルドの猛反発を買い、帝国内で内乱の危機にまで達してしまったため、黙認という形で手を打ったのだとか。


 次に冒険女子ハナナちゃんです。

 彼女は野薔薇ノ民。中でも野薔薇ノ乙女達は、ご先祖様である"海の女神ネレイデス"を信仰しております。"唯一神教"の信者になる事はご先祖様の否定、裏切りとなるため、いかに便利であろうとも洗礼は受けません。もしモンスターとの戦いに敗れ、命を落とせば、そこでハナナちゃんの冒険は人生と共に終了です。だからあの時は、本当にハナナちゃんは危なかったのです。お互い生き残ることが出来て、こんなに嬉しいことはありません。

 ところでハナナちゃんは、ご先祖様が海の女神なだけあって、本来は水属性の冒険者です。しかしどうにもそれがお気に召さないらしく、風属性の神様の"御利益"を得ようと、装備で属性強化したり、あちこちの神殿を回ったり、お守りを買い集めているようです。まだ"加護"を得るまでには至っておりませんが、苦労の甲斐あって、逃げることに関しては自身があるのだとか。


 最後にロズワルドとミカゲルです。

 2人は一緒に冒険者になった際、ギルドに勧められるままに洗礼を受け、一度は"唯一神教"の信者となりました。しかし、とある女神と運命的に出会い、宗教替えをします。こうして彼女の強大にして忌まわしい"加護"を得ましたが、代わりに"唯一神教"の"御利益"は永遠に失われたようです。

 はたして、ロズワルドとミカゲルが信仰する女神の正体とは? いずれ本筋の中で描けると思いますので、それまでのお楽しみと言うことにいたしましょう。

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