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19-16 王国の武力組織 ~王宮戦士団35~ 解放

 オケアノス十三世。それは、ロズワルドが巨人に付けた二つ名でした。

 さかのぼること15年前、鉄騎団を立ち上げて間もなくの頃。ロズワルドとミカゲルは、"深キ深キ森"に迷い込み、心優しき巨人に助けられます。

 心優しき巨人には、家族も無く、人里に居場所も無く、名前すらありませんでした。

 そこでロズワルドは、巨人に二つ名を与え、鉄騎団に誘います。彼に居場所を与えたい。そして何より彼と家族になりたい。そんな思いからでした。

 しかし巨人は、二つ名をくれたことに感謝しながらも、丁重に入団を断ります。争い事が苦手で、誰かを殺めるなんて耐えられない。それが理由でした。

 巨人と二人は別れを惜しみつつ、再び会うことを約束するのでした。


 それから10年後。鉄火団を失い、ロズワルドが一人で放浪していた頃、風の噂で巨人が捕まり、裁判が行われたと聞きます。判決は無期懲役で、監獄都市"ルリルリ"に入れられたとも。思えば、あれがオケアノスだったのでしょう。今の今まですっかり忘れていました。

 放浪の果てに"ルリルリ"に舞い戻り、ロズワルドは毎日飲んだくれていました。すぐ側にオケアノスがいる事にも気付かず、何もかも忘れようと、酒に溺れていました。

 真っ赤に染まった"大自由通り"を見回して、ロズワルドは悔やみます。

 自分がオケアノスに気付いていれば、一度でも面会に行っていれば、こんな惨劇は起きなかったのではないか? こんな過ちは犯さなかったのではないか? 全てはオレのせいではないか?


 だったら……いや、だからこそ。オレの手で止めなくちゃいけねぇ。


「よう、どうした兄弟! 争い事の嫌いなお前にしちゃ、随分と荒れてるじゃねぇか。恨みでもあったのか?」

 ロズワルドは笑顔で真意を隠しながら、探りを入れます。せめて蛮行に及んだ理由を知りたかったのです。

「ウラミ……?」

 そう言いながら、辺りを見回し…

「ウラミも何も、コイツラとは会ったこともないド。おら、ずっと部屋に閉じ込められたまんまだったかんナ」

「じゃ、じゃあ、なんで殺しちまったんだ?」

「コロシ……?」

 オケアノスは再び辺りを見回し…

「違うド♪ コロシじゃないド♪ 解放してやったんだド♪」

 満面の笑顔でそう答えました。

 解放……だと? ロズワルドは笑顔を絶やさず、心の中で戦慄します。確かに死は現世からの解放と言えます。あるいは囚人を牢獄から解放するという二重の意味もあるのかもしれません。ですが……

「一体……何故、そんな事をするんだ? 誰かに言われたのか?」

「ダレカ……?」

 オケアノスは首をかしげ……

「そうだド! オラ、頼まれたんだド! みんなも解放してあげてって! だからオラ、張り切って解放してやったんだド!」

 嬉しそうに話すオケアノスに、ロズワルドは偽りの笑顔を維持出来なくなりました。

「誰だ! 誰がお前に頼んだ! 誰がお前にこんな事をさせた!!」

「雪の……女王様だド♪」

「んなっ!? 雪の女王……だと?」

 確かに"ルリルリ"は10年前まで"雪ノ女王国"の領地でした。

 つまり一連の事件の黒幕は、"雪ノ女王国"だった?

「そうだド。雪ノ女王様がオラを解放してくれて、居場所が出来たんだド♪ 家族が出来たんだド♪ 幸せになったんだド♪ だからオラも、みんなを解放して幸せにするんだド♪」

「……待て。待て、待て、待て! 待ってくれ!! お前は、お前はすでに解放されてるって言うのか?」

「そうだド♪ だから凄く気分がいいんだド♪」

 雪ノ女王? 解放? 脱獄? 殺戮? 居場所? 家族? 幸せ?

 理解が追いつかず、ロズワルドはパニックに陥ります。ですが、たった一つの事だけは、直感的に理解してしまいました。

「オケアノス……。まさかお前… お前… お前は……」



「お前はもう……、死んじまってるのか……」

今回は短めですが、勢いを優先しました。

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