15-2 王国の武力組織 ~王宮戦士団7~ 時は流れて
申し訳ありません。調子に乗ってだいぶ脚色してしまいました。しかも無駄に長いですね。
民話収集の観点から見るなら、決してよろしくはありません。ですが所詮は個人的な手記ですし、グリム御大だって童話集の版を重ねる度に改変していますし。
私の脚色なんて些細な事です。どうか笑ってお許し下さいませ。
長々と書いてしまった『勇者はいずこ』ですが、これは帝国の辺境に伝わる昔話で、野薔薇ノ王国に残された記録とは一切関係がありません。
ところがどうでしょう。まるで猿丸とカワミドリの物語のようではありませんか! 初めて聞いた時は、流石の私も自分の耳を疑いました。
そこで試しに、出身地の違う他の冒険者にも聞いてみたところ、帝国出身者の多くが、自分の故郷にも同じような昔話や伝承があったと言うのです。
一体どういうことなのでしょう。
昔からある一つの伝説が帝国中に広まり、各地域の伝承として定着したのでしょうか?
それとも、猿丸とカワミドリ……もしくは2人に似た誰かが、勇者を求めて帝国中を回り、世直し旅をしていたのでしょうか?
残念ながら、真相に辿り着くには情報が足りません。
ですが、もし王国の歴史と帝国辺境の昔話に繋がりがあるとすれば、ロマンですよね。考えただけでワクワクしてきます。
話を戻しましょう。
"コンゴウ"に戻った2人+1人の一行は、約一ヶ月かけて第7都市"コウギョク"へと辿り着きます。
ところが、ここから約半年の記録がありません。紛失してしまったのだそうです(本当でござるかぁ?)。
はたして空白の半年間に、一行が向かったのは何処でしょう。
海路で新世界でしょうか? 陸路で暗黒大陸でしょうか? もしかすると異世界ガングワルドかもしれませんね。
そして半年後。記録は第8都市 "カンランセキ"から始まります。
一行は未だ勇者を見つけられず、一縷の望みをかけて、時計回りの北上ルートを進みます。
第9都市"セイギョク"、第10都市"タンパクセキ"、そして第11都市"オウギョク"。
それぞれの街に辿り着き、勇者を捜す度に、一行の希望は無と消えました。
絶望に打ちのめされ、心も身体も疲弊し、何度も何度も諦めそうになります。
カワミドリはもちろん、老師猿丸も、弥七すらも疲れていました。
ですが…
その時です…
ついにその時が訪れます!
運命の地、第12都市"ルリ"にて、歴史が動くその時が来たのです!
野薔薇ノ王国滅亡まで、あと55日。すでに二ヶ月を切っておりました。