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1-13 夢の中にて 〜巫女姫〜

 落ち着け私。逆に考えるんだ。新たな情報が手に入って真相に近づいたと思えばいいんだ。

 何も見えない濃霧と、姿を見せないエコーちゃん。

 血に飢えているかのように怪我に反応し、ざわめきだした森。

 美しく穏やかな泉と、野性かわいいハナナさん。

 そして走馬燈の果てに辿り着いた大神殿と、大和撫子系女子の巫女ちゃん。

 転落する度に別の世界に来ているようにも見えるが、立て続けに起きているということは、きっと何かしらの関連性があるに違いない。

 一つでも多くの情報を手に入れるんだ! 手に入る情報は絶対取りこぼすな!


 そうと決めたら、まずは状況を確認しよう。今の状態は明らかにこれまでと違っている。

 視覚情報は生々しく現実としか思えないが、身体の自由はまったく利かず、しかも勝手に動く。他人がプレイしているゲームの動画を、身体は縛られたままVRマシンで観ているような感じだ。

 普段は視覚以外の情報は無いが、意識を集中することで、それ以外の感覚、触覚、味覚、嗅覚、聴覚の情報が得られる事が分かった。

 そこから導き出した私の仮説は『誰かの意識と同調し、追体験している…かのような夢を観ている』である。

 本当は『誰かの意識と同調し、追体験している』と断定したかったが、今流行のVR世界の可能性もあるので保留に逃げたわけだ。

 さて、その“誰か”だが、間違いなく男である。身体に意識を集中したとき、着衣に触れる感覚で確信した。ちゃんと付いてるってな。

 しかしそれ以上のことは分からない。そこで彼の正体が判明するまでは、私との差別化を図るため、“私ダッシュ”と呼称することにする。

 

 “私ダッシュ”は今、目の前の巫女ちゃんを見入っている。とても魅力的だから…というのもあるが、巫女ちゃんと重要な会話をしているようだった。

 しまったっ! 早速聞き漏らしてしまったようだ。

 聴力に集中すると、彼女の声が聞こえてくる。

「……本当にごめんなさい。貴方の都合も考えず……。でも仕方がなかったのです。この世界を救うには“イセキショウカンノギ”を執りおこなうしか無かったのです。なにとぞ、なにとぞお力を」

 そこまで言うと、巫女ちゃんはしゃがみ込んでしまった。疲労困憊といった様子である。

 とりあえず情報を整理すると、“私ダッシュ”は洋風とも和風とも付かない謎の神殿にいるようだ。

 一方で巫女ちゃんは人種的にも衣装的にも和風であり、日本語を喋っている。

 照明は松明を使っており、時代を特定できるような道具は見あたらない。

 巫女ちゃんは“私ダッシュ”に助けを求めている。彼女の言葉を信じるなら、世界がヤバイ事になっているらしい。

 そして巫女ちゃんが疲れ果てているのは、何かしらの儀式を三日三晩続けていたからのようだ。

 それが“イセキショウカンノギ”らしい。聞き慣れない言葉だったので、何のことだか分からない。

 複数の言葉の組み合わせだとしたら、どう区切るんだろう。“イセ キショウ カンノギ”だろうか。それとも“イセキ ショウカン ノギ”だろうか? なんだか呪文みたいだな。

 いや、待てよ? 彼女は儀式だと言ったよな。となると、もしこれが日本語なら“イセキショウカンの儀”じゃね?

 となると、残りの“イセキショウカン”に当てはまる漢字は……“遺跡召喚”だろうか。

 息も絶え絶えだった巫女ちゃんだったが、話を続けようとする。

 もっと情報を得るために、私は再び耳に意識を集中させる。

 すると、巫女ちゃんの言葉を遮るように、遠くで爆発音がした。そして地響き。続けてタタタタと複数の乾いた音が鳴り響く。

 これは……銃撃音か?

「巫女姫様!」

 彼女を呼びながら駆け寄ってきた男は、メンインブラックだった。

 喪服のような黒いスーツに白いシャツ。黒いネクタイに黒いサングラス。いかにも政府関係者って感じの装いだった。

 しかもスーツの上からでもガタイの良いタフガイだと分かる。シークレットサービス? 巫女ちゃんのボディガードだろうか?

 床にしゃがみ込む巫女ちゃんをいたわりつつ、黒服は困惑気味に訪ねる。

「巫女姫様、この少年が“勇者”なのですか?」

「大丈夫。儀式は成功しました。彼は紛れもなく“神の血引きし民”。私達の勇者です。どうかお願い。彼を“剣の間”にお通しして……」

 そう言うと巫女ちゃんは意識を失った。

 黒服は“私ダッシュ”を睨み付けながら話しかけてくる。

「君、私の言葉は分かるな。今の状況に混乱しているだろうが、説明している時間がない。武器は使えるか?」

 “私ダッシュ”はハッとして足下を見る。落ちていたショートソードは根本から折れていた。黒服は拳銃を見せるが、“私ダッシュ”は困惑げに見つめるだけだった。

「……見たこと無いのか。無いよな。ならば巫女姫を頼む。これから君の武器がある場所へ案内しよう」

 “私ダッシュ”はうなずくと、巫女ちゃんをお姫様だっこする。

 んなっ! ちょっ! お姫様だっこだとぉ!! 躊躇せずにやってのけるとは、コイツ場数を踏んでいるのか? けしからん! 実にけしからん!

 はっ!!!!

 こ、これはもしかして………“私ダッシュ”のファインプレイだったかっ!

 私は両腕に意識を集中させる。すると予想した通り、巫女ちゃんの感触や重みが両腕から伝わってくるのだった。

 巫女姫ちゃん、柔らかくて軽いナリ〜♪

 …………などとふざけていられたのも、ここまでだった。


 奧に続く道から、新たに四人の人影が現れた。

 屈強な男が三人と、屈強な女が一人。いずれも陸上自衛隊の迷彩服を着ており、銃で武装していた。

 その姿はまるでエクスペンダブルズ……いや、彼らの瞳に宿る狂気はハリウッドスターには無い。最も近しいのはゲッターチームだろう。もちろん石川賢先生版な。

 しかし、男の一人は腹に致命傷を負っており、仲間に肩を借りて何とか歩いている状態だった。

 隊長らしき男が叫ぶ。

「貴様まだいたのか! 神殿はもう限界だって言ったろう! 今すぐ巫女姫を連れて避難しろ!」

 黒服は拳銃の弾倉を替えながら答える。

「いや、まだだ! 勇者殿を“剣の間”へ連れて行く! それまで時間を稼ぐぞ!」

「は? 勇者? まさか、そのガキがかっ!?」

「そうだ! この世界を救う勇者殿だ! これまでの多くの犠牲は彼のためだった。今更諦められるか!」

 そういえば黒服は神隼人のようだ。自衛隊の隊長は流竜馬っぽい感じがする。

「へへっ、隊長。そろそろ俺達も年貢の納め時ってヤツじゃないですかね。いつまでも生きてちゃ、地獄で待ってる野郎共が可哀想だ」

 腹を負傷した自衛隊員が汗水を流しながらも軽口を叩く。まるで武蔵のようだった。

 流竜馬隊長は決断した。

「分かった! 俺達はここで食い止めるぞ! 派手にやろうじゃないか!」

 隊員達が奇声を上げる中、隊長は女性隊員に言い放つ。

「早乙女2等陸曹、お前は行け! 特別任務を与える。姫巫女達を死守するんだ!」

「そんな! 何故自分だけが!? 自分も残ります!?」

 それから先は聞き取れなかった。

 どうやら隊長と黒服は昔からの腐れ縁で、黒服が残るため、代わりに女性隊員が巫女姫ちゃんの護衛につくことになったらしい。

 やはり二人は竜馬と隼人のような関係だったのだろうか。

 そして彼女は? 仲間? 仲間以上? 恋人だったのだろうか?


「行くよ勇者くん! 巫女姫様をお願いね」

 瞳に涙を浮かべながらも任務を全うしようと、早乙女2等陸曹はアサルトライフルを構えながら先行し、“私ダッシュ”は巫女姫ちゃんをお姫様だっこしながらついて行く。

 神殿とは打って変わり、“剣の間”へと続く廊下は、ハイテクで溢れていた。

 天井には蛍光灯。柱は鉄骨で、壁はコンクリート。掲示板に貼られたポスター。私にとっては珍しくもなかったが、“私ダッシュ”はそうでもないらしい。

 逃走中であることを忘れて、あちこち見回している。

 そして次に目に止まったのは、身だしなみチェック用だろうか? 廊下の壁に付けられていた、全身が映る大きな鏡だった。

 “私ダッシュ”は鏡を覗き込む。そこに映っていたのは自分自身の姿だった。

 そこで私は初めて“私ダッシュ”の顔を見る。

 十五〜六歳の少年だろうか。まるで少女漫画に出てきそうなくらいの超絶イケメンだった。


 はっ!

 気がつくと朝だった。

 辺りを見回すと泉の側だと分かる。

 囲炉裏の向かい側に座っていたハナナさんは、今はいない。

 夢…? やはり夢だったのだ。

 とりあえず手足を動かしてみる。良かった。ちゃんと自由に動く。

 ホッと胸をなで下ろす私だったが、だんだん怒りがこみ上げてきた。


 ………ええっと。

 ちょっとぶちまけますけどいいですか? いいですよね!? 答えは聞いてない!!

 何なんですかこの展開! せっかく盛り上がってきたところなのに、何で途中でぶち切っちゃうんですか!

 夢だからですか? 確かに夢ってオチが来る前に目が覚めて終わっちゃいますよ。終わっちゃいますけど。

 だからって、クリフハンガーにも程がありますってば〜〜〜〜〜〜〜!!

 続きが気になりすぎてもう、血圧がフットーしそうだよおっっ!!

今回も勢い優先で書いてしまいましたので、文章荒いです。ごめんなさいです。

次からようやく2日目に突入ですが、予告がちょっと思いつきませんので省略させていただきます。

重ね重ねごめんなさいです。

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