表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/190

14-5 王国の武力組織 ~王宮戦士団5~ 北か西か中央か

 "コンゴウ"を素通りするまでは確定として、以降の方針には三つのルートが考えられました。

 第一のルートは、"コンゴウ"より西北、帝国の中央に位置する大陸最大の都市、"帝都"へ向かう。

 第二のルートは、"深キ深キ森"を右に見据えつつ、北上する。

 第三のルートは、ひとまず突き当たるまで西方へ、ゴーゴーウェストする。


 カワミドリが推すのは、第一の"帝都"ルートでした。

 "コンゴウ"よりも帝国中の情報が手に入れやすい上、"帝都"と各衛星都市に設置されている"ゲート"を活用すれば、移動時間の短縮も可能だからです。

 問題は、物価が高く、ありとあらゆる状況でお金がかかってしまうことでした。このルートを目指すなら、魔法石を全て売り払っても足りないかもしれません。


 老師猿丸が推すのは、第二の北上ルートでした。

 帝国の東方に広がる"深キ深キ森"は、コーガイガにとっては庭も同然です。旅の途中で如何なる災いに遭遇しようとも、逃げ込んでしまえばこっちのもの。森が護ってくれます。猿丸にとっては旅の崇高な目的より、可愛い末娘の身の安全が大事でしたから、守りに入るのは自然の成り行きでした。


 "コンゴウ"の強固な城壁が見える街道で宿をとった二人は、そこでコーガイガの若き中忍と接触します。

 彼は以前から帝国に潜入し、情報収集に勤しんでおりました。また、女王陛下への旅路の報告も、彼が担っております。

 残念ながら、彼の名は記録に残されておりません。ですが、二人の旅路を随時報告してくれたおかげで、今の世まで記録が残り、私も今こうして手記にしたためていられます。全ては彼のおかげなのです。本当に本当に、感謝の念に堪えませんです。はい。

 しかし『彼』のままでは何とも味気ないですし、誰かと間違え混乱するかもしれません。そこでこの手記では、仮に『弥七』と呼ぶことにします。


 カワミドリ、猿丸、弥七の3人は、部屋に篭もると、早速情報をすりあわせ、方針を決めていきます。

 まず、第一の"帝都"ルートは弥七が反対しました。現在、"帝都"では疫病が蔓延しつつあり、長期滞在などもってのほか。ゲートを利用して通過するだけだとしても、人との接触は極力避けた方が良いとのことでした。

 第二の北上ルートは、"深キ深キ森"が近いおかげで、コーガイガからの支援もしやすく、比較的安全。モンスターのエンカウントも程よい感じで、路銀も稼ぎやすい。と、旅をするには申し分ないルートでした。何よりありがたいことに、コーガイガは森近辺の街の情報を長年に渡って収集しておりました。中には勇者にまつわる有益な情報もいくつかあります。

 第三の西方ルートは、"深キ深キ森"から離れていくため、進めば進むほどコーガイガの支援が難しくなります。情報も僅かで当てになりません。ただ、その先には果て無き海が待ち受けており、大きな港には新世界へと向かう帆船が多数停泊しているとのことでした。何もかもが未知数なルートですが、希望と可能性だけは満ち溢れておりました。


 状況を鑑みるに、第二の北上ルートが最適でした。ですがここに来て、カワミドリは第三の西方ルートを主張し始めます。

「コーガイガの情報収集が進んでいるのなら、そのままお任せすれば良いではありませんか。私達は未知なる可能性に賭けるべきです!」

 それが反抗期故の父への反発か、あるいは海の女神ネレイデスの血筋による海への望郷か、もしくは何かしらの予知が働いたのか。真相は定かではありませんが、カワミドリは頑なでした。

 女王陛下から使命を受けたのは、あくまでカワミドリです。北上ルートに向かうなら、彼女を説得する必要がありました。

 そこで弥七は妥協案を提示します。

「あっしらと違って旅に慣れてないカワミドリのお嬢さんを、西方ルートに向かわせるのはいささか気が退けやす。そこで、だ。まずは北上ルートで旅に慣れてもらい、氷の大地にまで辿り着いたらゲートを使って"コンゴウ"まで戻る。そして改めて西方ルートに旅立つんでさ。時が経てば疫病も治まってるかもしれませんから、"帝都"を経由するついでに調べものをするっていうのも手ですぜ」

 この弥七の提案に、カワミドリはあっさり了承しました。


「若い男の話は聴くんだなぁ」と、軽くジェラシーを覚える猿丸であった。

…などというオチが付いていたのかもしれませんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ