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7-4 脱線 〜愚痴をぐちぐちと〜

 勇者を召喚するために、私は異世界にトレードされた。要は生け贄だ。人柱にされたのだ。

 日本の神々に、日本そのものに、ガングワルドという世界に見捨てられたのだ。

 私は驚愕し、激高した。人目を憚らず号泣した。

 更に、トレードされたのがこの身ではなく、魂である事を知り、深く絶望した。

 私が死んでも、逝くのはオトギワルドのあの世。

 ガングワルドの天国で待っている親や、若くして逝った友とは、もう永遠に会えないのだ。

 私の弱い心は、その現実を受け止めきれず、引きこもりになってしまう。

 おかげで貴重な異世界生活を、丸二日無駄にした。

 USJやTDLに来て、二日酔いや仕事疲れで営業時間終了まで眠りこけていたようなものだ。

 立ち直るために必要な時間だったとしても、あまりにも勿体ない。

 

 現実は何も変わらない。私に起きた事は、もうどうにもならない。

 だけど、少なくとも見捨てられたわけでは無かった。

 被害や犠牲を少しでも減らそうと、最善を尽くしていた事は理解した。

 もしかしたら状況を説明してくれた関係者が、言葉巧みに私を騙しているのかもしれない。

 だけど、それが嘘だろうと、事実だろうと、

 現実は何も変わらないのだ。私に起きた事は、もうどうにもならないのだ。

 だったら、悪意を疑うより、善意を信じよう。

 むしろ私で良かったのだ。

 未来ある若者や、大成した人物が異世界にトレードされていたら、日本に甚大な影響を与えていただろう。

 妻も子もない独り者で、何も成し遂げられないまま四十年以上生きてきた。そんな私なら、いなくなっても困らない。

 だから良かったのだ。

 私で良かったのだ。

 

 いや。

 訂正する。


 よりによって、なんで私なのだ!!

 向いてる男なら、他に沢山いるだろ!

 確かに私は女の子が好きだ!! 可愛い子も、綺麗な子も、えっちな子だって大好きだよ!

 だけど今更、モノにするだの支配だの独占だのといった、野獣系の欲望を解放する気なんざ更々ないんだよ!

 遠くからキャッキャウフフ♪してる姿さえ見られれば、私はそれだけで満足なの! 

 だって私はコミ症だから! 女の子と何を話せばいいのか分からないんだよ! 間が持たないんだよ! 辛いんだよ!

 ああ、それなのに、それなのに!

 なんでこんな情けないオッサンに、「はーれむを作れ」とか言いやがるんですか! この国は!!

 しかも、たった一人の女性すら幸せに出来ない男に向かって、「最大百人までおっけー」とか抜かしやがるんですよ!

 嫁さん百人出来るかな? とか、無茶振りにも程があるっ!


 正直な気持ちを書くと、逃げ出したくてたまらない。だけど、私には逃げ場がない。

 "野薔薇ノ王国"はオトギワルドでもずば抜けて治安が良いが、外に出れば魑魅魍魎が溢れている。自力ではとても生きていけそうにない。

 かと言って、元の世界に戻れたとしても、そこには何も無い。無駄に歳を重ねていくだけだ。


 じゃあ、これまで通り流されるままに生きるか? この王国で?

 さっきも書いたが、"野薔薇ノ王国"の治安はずば抜けているし、生活も王国が保障してくれるので無理に働く必要もない。

 私に求められているのは一つだけ。好きな子を選んで、はーれむを作り、子作りに励め、だ。

 ようするに、人間なんかやめて、種馬として生きろって事だ。フフッ、まるでエロゲだな。


 くそっ! 書いているうちにだんだん腹が立ってきた。

 "イタリアの種馬"ことロッキー・バルボアになら、男なら一度は憧れるだろう。

 だけど男の誰もがエロゲ主人公に憧れてるわけじゃないんだよ!

 そして私は、生まれついてのへそ曲がりだ。ハニトラなんぞに屈するものか。

 徹底的に足掻いてやる!


 

 先ほどメイドさんがお茶を運んできてくれた。また初めて見る顔だ。

 今度の子は、綺麗なだけでなく可愛らしく、品があって過度に性的でもない。

 これまでになく理想に近い、私好みな娘さんだった。

 これは……まずい。

 この一週間、様々なタイプのメイドさんが世話をしてくれたが、その理由に今気付いた。

 メイドさんを通して、私の性癖を探っているのだ!

 もし、私の好みにドンピシャリの理想的な女の子が目の前に現れたら……

 はたして私は抗えるのだろうか……

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