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窶子抄  作者: 玖里阿殻
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日記その2

 病気になると昔のことをよく思いだすの。

 これって私だけのことなのかなあなんて思っていたけれど、闘病記なんかを見てみるとわりと多くの人が同じ感情を抱くみたい。

 どうしてだろう?

 懐かしい場所を訪れてみたり、

 幼いころに食べたものを欲してみたり、

 過去に浸ると、とても気持ちがやすらぐの。

 泣きたい気持ちになるの。

 泣かないけれど。

 私は、強い子だから。

 泣くなんてそんな、軟弱なことはしないけど。

 まあ躰は軟弱なんだけど。

 貧弱だけど。

 思えば、

 心も貧しいけれど。

 あれ。

 全体的に、貧小なのだけど。

 矮小なのだけど。

 いいんだ。

 もう。

 やらないといけないことがあるけど、私は眠るの。

 死ぬ気でやらなきゃ、間に合わないのに。

 ただでさえ手遅れなのに。

 それでも、眠るの。

 だって、なんだか今は、病気で学校を休んだ日みたいな気分だから。

 ああ。

 懐かしい!

 朝陽に包まれて、私は目を閉じる。

 祖父母に手を引かれて、病院に行ったこと。

 帰りに、内緒でアイスを買ってもらったこと。

 バスに揺られて、舟を漕いだこと。

 その時の匂い。

 今日はそういったことを考えながら、微睡むの。

 愛おしい記憶の中で、私は生きるの。

 ほんと。

 だめだなあ。

 そんなこと云って、自己弁護。

 作中作にすれば、赦してもらえると思って。

 迂遠な表現をすれば、勝手に解釈してもらると思って。

 ほんと。

 私は、愚か。

 どうしようもないくらいに。

 愚かな子。

 それがわかっているのに、私は、眠る。

 眠る……。

 ああ、

 そうだ。

 子ども番組とか、つけてみよ。

 子ども番組みながら、横になろう。

 うん。

 なんだかそれ、素敵。

 とても良さそうな気がする。

 じゃあさっそく。

 ぽちり。

 ばちん。

 ぽちぽち。

 ……。

 …………。

 ………………。

 あ。

 うん。

 これすごく良い!

 最高の気分!

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