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第一話 黒髪年上クーデレ美少女に別れを告げて。

その日は、何時いつもとなんら代わりえのない冬の季節のことだった。


そう、今でも思い返す....

なんで、こんな日に限って....


後悔と懺悔、今の俺にはそれしか残っておらず、ひどつめたく凍りついたアスファルトが今も体に凍り付き、その冬の季節、12月の中旬、曇天空の真下で俺は今日、人生の最後の瞬間を迎えたのだった。





   ♢    ♢    ♢    ♢    ♢





俺の人生は順風満帆であった。


しかし、周りのことを考えている暇なんて、正直、何処どこにもない。

自分のことで精一杯、自分さえ良ければそれで良い、自分に関係性のない奴がどうなろうがかまいやしない、誰だってそう言う生き方しかできていない、そう言う生き方をせざるを得ない、そう言う風な生き方でしか生きられない世界に構成されている。

分相応に見合った生き方、生まれ持っての格差、そんなことにどれだけ恨み憎んでもこの世の中リアルは何一つ変わらない。


下の者は上を眺め、上の者は下を見下すこの世の中の現実と仕組み。



全く.... この世界の創造者様は色々と設定ミスを犯している。



俺は、決して自分に利益のないことなんてしない。

友人関係を築き上げるのも、友達に宿題の答えを教えるのも、毎日毎日面倒くさい学校なんかに通っているのも、決して人の嫌がることは言わないのも、周りの空気を読むのも、女の子には優しく扱うのも、全ては俺個人の好感度上げるための一つの行為に過ぎない。

その甲斐あり、結果、俺の人生は順風満帆しており、誰もそれに文句をつけれない。 





そう、だから俺が彼女を助けてたのも、全ては俺の自身ためだった。






『あなたの夢はなんですか?』



それは簡単な問いかけだった。

誰だって小学校や中学校や高校の面接の場や自己紹介の時に発表したことがあるだろう。


今時の小中学生なら、プロ野球選手、サッカー選手、宇宙飛行士、幼稚園の先生、ケーキ屋さんなどと言った如何いかにも輝きに満ち溢れた可愛げのある回答を出してくる。

しかし、その夢も高校に入学すると共に、現実と理想の食い違いに気づき、一部の学生たちが望む夢と言えばひどみにくく、現実性のない理想染りそうじみた残念な存在になって行く....



『この糞みたいな世界を変えたい!』

『自分にしかない特別な能力ちからが欲しい!』

『転生して異世界に行って一から人生をやり直したい!』

『俺だけの女奴隷ハーレムを築きたい!』

『....もぉ誰でもいいから尻の穴でもいいから犯しまくりたい!』



俺が思うに最近の一部の学生の願う夢の本質に少しズレが生じていると思う。



なぜ、世界を変える必要がある?

確かにこの世界は腐りきっている、しかし、明らかに世界を変えるよりも自分がその世界に適応した方が効率も良く物事が早く片付く。


なぜ、能力が欲しい?

そんな能力を手に入れる前にまずは友達を作る事から始めよう、きっと能力なんて使う暇がなくなる。


なぜ、転生して異世界で生きたがる?

そんなことを願っている奴は大抵が生きていた頃、人生が台無しになって負け犬のような生活を送っていた連中、そんな奴らが、異世界に行った所で二、三日も生きていれば神様もびっくり、よく長生きした方だ。



....チっチート能力があれば生きれるよ!

黙れ、実際の所はお前らのような負け犬たちにチート能力を与えるほど、この世の中は都合よく構成されていない。


なぜ、女奴隷ハーレムを築きたい?

漫画やアニメの見過ぎだ、少しは奴隷にされる女性のことも考えろ。



全く..... どれもこれも、つまらない夢ばかりだ。


俺はリア充であり、人生の勝ち組であり、選ばれし者であり、彼らの考えていることは全くと言っていいほどに理解ができなく微塵の興味もなかった。



そんな、俺の夢?



そう、そんな俺の抱く夢は高校の入学式から、早二年、何一つ変わってはいない。

俺の夢は、日本男児、大和魂を背負う者なら、皆が共通して願っているに違いない。


そう、俺の夢は、ただ一つ..... それは.....













『黒髪年上クーデレ美少女と”童貞どうてい”を卒業したい。』







俺の名前は霜宮しもみや しゅう

髪型は、ショートの茶髪に父親譲りの美形、スタイルも良く、こう見えて男性誌のモデルのバイトをしている。

年は17歳、ここらでは一番有名な進学校にも通っており、現在高校二年生、成績は学年トップ、三年の引退後、所属していたサッカー部のキャプテンも務めているほどの人望の厚さもあった。

モデルのバイトに部活のキャプテン、確かに多忙な毎日であったが、それだけにやり甲斐はあった。


人生の勝ち組とは、きっと俺のような存在に向けて使われる言葉なんだろう。


無料通信アプリ、LI◯Eの友達数は、公式アカウントを除いて、もうすぐ四桁になる。

学年でのあだ名は『しもっち』『しもしゅう』、クラス校内問わず、この俺の名前を知らない生徒はほとんど居なかった。

礼儀正しく面倒見も良かったことから、先輩や後輩からも好まれ、よく後輩たちを連れて部活帰りに焼肉屋で奢ってやったことも合った。


両親共働きで互いが日本でも有数の大企業に勤めているほどのエリート夫婦、そのため、家の経済面はとても裕福な環境で幼い頃から何不自由のない生活が送れてきたと言える。


それに誰もが羨むであろう、実の妹もいる。

名前は、霜宮しもみやかおり、現在中学二年生、黒髪のツインテールで中学二年にも関わらず今でも俺に甘えてくるとても人懐っこい性格だ。

俺と同じく容姿端麗で成績優秀、非常に活発で挑戦心もあり、中学では生徒会長の仕事をしている、俺の自慢の妹である。

俺と同じモデル事務所の女性誌のモデルの仕事もしており、二人揃っての美男美女兄妹は今、世間でも少し話題になってきていた所であった。



「でも、そう言う家庭って既に家族の関係とか仲かが崩れかかってるんでしょう?」


「いいえ、違うんですよ奥さん!」



俺たち兄妹両親は今でもとても仲が良く、両親たちは親バカというか今までの人生で両親たちとは喧嘩一つしたことがない。

更に月に一度は必ず両親たちは仕事の休みを取り、家族四人揃って家族団欒、山や海やレジャー施設や海外に遊びに行くのは月に一度の恒例行事であった。


そんな俺だが、実はまだ彼女の一人も作れていない。

もちろん、作っていないのには理由がある、いや、ここはむしろ『出会えていない』っという方が正しのか?


これまでの人生で数多の女子生徒たちに告られてきた俺だが、俺はその告白を全て拒否し続けている。

そう..... あんな、どこにでも居そうな量産機に俺は興味一つなく、彼女らに割り当てる時間なんてどこにもなかった。




....人生、楽勝。



何不自由のない順風満帆な俺の人生、人生ゴール一直線いっちょくせんのイージーモード、曇りのない先の見えた道筋に俺の人生に於いては挫折や後悔、坂道や壁もなければ、クリ◯ーやノコ◯コすら配置されていなく、それはきっと誰もが憧れる完璧なリア充人生であった。



そう、俺はそんな誰もが憧れる完璧なリア充だった....




   ♢    ♢    ♢    ♢    ♢




十二月の中旬、それは家に帰る途中のことだった。

学校の試験も終わり、長い試験勉強期間からようやく解放され、もうすぐお楽しみの冬休みを前にしていた。

どうにか、今年も学年トップのままで年が越せそうだ....



「さてと、今日は待ちに待った日だ。 父さんたちを脅かしてやろう」



今日、12月19日は俺の両親たちの結婚記念日であった。

俺は前日にバイトで得た給料を使い両親たちのためにケーキとプレゼントを購入しておいた。



「.......」



辺り一面、冬の雪景色、今年は雪がよく降る季節だった。


都会の景色にも、そろそろ見飽きていた頃だ。

バカみたいに無駄に高く建設された高層ビルに、無駄に騒がし都会の騒音の数々、少しは静かになることができないのか?


そうだな、俺の夢である黒髪年上クーデレ美少女と出会い、初夜を過ごした後には、二人で田舎の町に移転しよう。


できれば比較的気温の温かい場所がいい。

子供、二人、男の子が一人に女の子が一人。

きっと俺に似て顔がよく何でもできる駿才が生まれて来るに違いない。


そして、妻とは毎日、長閑のどかな大自然の風景を眺めながら、畑で耕した作物などを販売して生計を立てて行こう。

今の贅沢な暮らしに未練なんてない、人生ゴール一直線いっちょくせんのイージモード、先の見えきっている人生なんてつまらない。

人生、坂道があり壁が立ち塞がり、それを乗り越えることに楽しみがあり、意味があり、その先にまた新しい世界が広がっているのだろう。



ん? 

どうして、こんな誰もが憧れる完璧なリア充が高校二年生、17歳になってもまだ童貞のままなのかだって?


.....とても良い質問だ。



俺、霜宮秀には強い性癖観念があった。


そう、俺は処女としかやりたくない。

まぁ誰だって基本はそうだろう、経験豊富な奴の方がいい連中もよくいるが、俺はそいつらとは違う。


初夜を過ごす相手は断然汚れを知らない処女がいい。

初夜を過ごす相手は黒髪年上クーデレ美少女がいい。

初夜を過ごした初めての相手とそのまま結婚がしたい、子供を作りたい。


俺は今まで何度も女子に告白されたことがあるが、俺はそれを全て拒否し続けている。


なぜなら、そいつらは全員、他の男子にも腰を振る量産機であるからだ。

そんな他の他人が使った性処理器具になど興味はない.... そんな所に出したくない、てか立たない、それに何より....


そもそも、あいつらは全員、ちっとも黒髪年上クーデレ美少女じゃない!



そうだ、最近になってふと思うことがある。 

この世界に美少女なんてものは存在しないのではないのか?


テレビで見る綺麗な女優やモデルさんたちを見ても、正直、俺はこれっぽっちも興味が湧かない。

最近、クラスの暗めな性格の男子生徒が読んでいた『ライトノベル?』とやらを拝見したのだが、そこに描かれていたメインヒロインたちの方がまだ良い線いっている方だ!


まぁ、漫画やアニメに描かれている奴らとは結婚できないし子供も作れない、妄想するだけ無駄なことだ。


俺が面倒なモデルの仕事に就いているのも単にモデルという肩書きやお金目当てでやっているわけではない、俺の就いている職場はこの場では一番有名なモデル事務所だ、そこに行けば、きっと俺の理想に出会えると思っていたのだが....


どいつもこいつも、そこらに居る量産機の変わらない尻軽ばかりであった。




俺は思う。

この世界には、俺の望む黒髪年上クーデレ美少女なんて、存在しないのではないかと....



そんな浅はかな考えを抱いていた俺が恥ずかしい。

そう、この時の俺はまだ知らなかった.... 俺は今日、『運命うんめい』と出会うことを....



「.....もう五時か」


ここ最近は試験があったせいで、四、五日は碌に気持ち良くなっていなかった。

今日は、家に帰ったら久しぶりに中学から集めてきた秘蔵映像集コレクションでいっちょ気持ち良くなりますか!

ジャンルはもちろん、黒髪年上クーデレ美少女!





あぁ....確か.....俺は、あの日、横断歩道前で信号を待ってたんだっけ?





学校の帰りし家に向かう途中の俺、家があるのは都会なだけあって自動車の数も多くのその分、横断歩道の数も多かった。


誰もが憧れる完璧なリア充である俺、ずっと恋焦がれている黒髪年上クーデレ美少女のいない現在、そんな、現実に飽き飽きし絶望していた、そんなある日のことだ。




「.........あれは」



それは突然だった、刹那、俺は一目見ただけでわかった。

横断歩道前の先頭、人ごみに紛れたその中に.... 彼女は一人で居た。


長く綺麗な黒髪、髪先まできちんと手入れされていたその黒髪は、一瞬で俺の目を釘付けにしていた。




「....くっ黒髪だ」



白のブーツに白いマフラー、更には白いコートを羽織り、その美しい彼女の黒髪が全身白一色の服装の影響で、より強調し際立きわだたされていた。


それは正に、俺の認める完璧なファションセンスであった。




「....こっこれは.....夢か何かか?」



自分の頬を引っ張ってみた..... 間違いなく現実だった。


人ごみの中、彼女の存在だけはまるで別格であった。

彼女からは、現代風の量産機とは違う、今までに感じ取ったことのない何か大人びた、気品のあるオーラが感じ取れた。



「......」



.....間違いない。

俺はその時確信した...いやっ察した何かビビッと来るものがあった。



彼女こそが俺が今まで探し求めていた黒髪年上美少女であることを....



その人がクーデレかどうかまでは、まだわからなかった。

でも、これからお互い話し合って関係を深めて行き、俺好みに調教していこうと思えた。



「すいません、前失礼します... すいません」



俺は横断歩道の人ごみの中、周りを押しのけ先頭に居た彼女の元へ向かう。



あと....もう少しで....手が届く.....



「.....もうちょっとだ」



手が届く.....夢にまで見た、黒髪年上クーデレ美少女に.....



「あっあの.... すいません!」


....俺は声を掛けた。


「........」


しかし、彼女はそれに反応をすることなく、俺の前から離れていった....



「ちょっまっ待ってください!」


横断歩道だ....きっと青信号になって....


信号を見てみると、まだ赤信号のままであった。

もう少しで彼女に手が届くのに.....



「.....」


.....あれ?

ふと疑問に思った、どうして彼女は赤信号なのに前に進んでいるのか?



思い返すと、少しだけ薄っすらと見えた光景があった。

彼女が前を見ずに携帯電話を触っていた光景が......


....まさか!


きっと彼女は、まだ赤信号であることに気づいていないんだ。

彼女はすでに横断歩道を四、五歩ほど足を進めていた、運良く辺りを見渡しても道路に自動車は走っていなく、俺はその時、空かさず行動に移した.....



これが噂に聞く出会いフラグってやつか!



「危ない!」



俺は、彼女に叫んだ。


しかし、彼女は、自分に言われていると思っていないのか、やはり携帯を触りながらまだ信号が赤であることに気づいていない。

サッカー部で鍛え上げた俊敏な動き、俺は、咄嗟とっさの判断で横断歩道を渡り彼女のコートを掴み、横断歩道前まで引っ張り引き寄せた。



「赤信号ですよ!」


「........」



......思っていたよりも彼女を引き寄せるのには力が必要だった。


そう、彼女は俺が思っていたよりもがっしりとした体格であった、白いコートを羽織っており、髪型はともかく、体型までは見て取れなかった。



ちなみに俺のスタイルは身長:175.6cm、体重:60kgっと言った至って平人体型、所謂、リア充体型と言われている体型だ。

力にはそこそこの自信があった。

サッカー部長も務め、女の子と、その.... 裸の関係になることを想定し、日々の筋トレは怠っていなかった。

それにモデルの仕事しているため肉体の鍛錬は必要不可欠なこと、おかげで二の腕の筋肉も付き、腹筋も割れていた。



.....そうだな、例えるのならリア充体型であった。



そんな、俺でさえも彼女を引っ張るのには相当な力が必要だった。

彼女の体重は俺のリア充脳から推定するに.... 70kg....いや、80kg、いや、もしかするとそれ以上あるかないかの良い所であった。



「......」



思っていたよりもぽっちゃり体型な人なんだな。


まぁ俺としては、ガリガリかぽっちゃりのどちらかって言われたら、断然包容力のあるぽっちゃり派だ。

枝か丸太、またがるなら、断然乗り心地の丸太がいいに決まっている。


そうだ、別に俺はそんなこと全然気にしないよ!



「大丈夫で.......」



しかし、夢というのは何時かは覚めるものなんだ。

気づけば、俺は彼女を引っ張り引き寄せた衝撃でバランスを崩し、横断歩道、道路の真ん中の場所まで転げ落ちていた。



「あぁ〜っら、やだっまだ赤信号だったの? 危な〜〜い」


「.....」


「あんた〜私を助けてくれたの?」


「......」



言葉が出なかった....


何なんだ、この生き物は?

いや、生き物なのか?

これは現実なのか? 今俺が見ているものはホログラムか何かなのか?

それとも、俺は今、未知との遭遇をしている最中なのか?


俺はただ、その場で自分に起こっている現状が信じきれずに唖然していた。



「....な」


そう.... 

俺の目の前に居たのは『運命うんめい』なんて、そんな聞こえのいものなんかじゃなかった。


それは....そう、例えるのなら正に......



















化け物モンスター


泥のように黒い素肌に泥のように崩れかかった顔面....



そう、彼女? 彼? まぁ.... あの野郎は見るからにニューハーフ、つまり、おかまであった。



「何ぼ〜っとしているのよ〜、あんた〜そんな所に居たら危ないわよ?」


「.....ぇぇ」



その容姿は、黒髪年上であったが、美少女とは到底掛け離れたそんな存在であった。



.....やっやばい、頭の中が混乱している。

俺は今何をしているんだ?

俺は今こんな奴を助けてたのか?

俺は今なんでこんな所で倒れているんだ?

あれ? 俺の名前って何だっけ?



でも、明らかに確信して言える事が一つだけあった。

少なくとも、俺の助けたおかま野郎の顔を見る限りマツコ・デラ◯クス似ではなかった。




「おい、何であいつ、道路の真ん中であのまま動いていなんだよ!」

「そんな所に居たら危ねぇぞ!」

「おいっ! 向こうからトラックが来たぞ!」

「運転手の野郎、あの子に気づいていない、このままじゃぁ危ないぞ!」




「.....あぁぁ」


.....かっKA◯E.ちゃん似なのか?

いや、K◯BE.ちゃんにしては、肌が汚なすぎる。

それとも、IKK◯? いや、どっちも似たようなものだろ。



「....そんな」



そもそも、こんな近距離で本物ガチのおかまに遭遇したのは初めてのことだった。


おかまは悪い人、そんな環境で育ってきた俺だ。


テレビのバラエティー番組で、よくおかまキャラを見かけることはあったが、早く童貞を卒業することに頭がいっぱいでそんなおかまのことなんて、俺の脳内ハードディスクの中には一欠片も保存されていなかった。



俺は初めて見る化け物、いや、おかまの存在に驚愕していた。


「.......」


そう、今の俺はきっと....


『全く見た事のないものと出会う時、人間は人間ではいられない。 じじょじょじ、じぅじょじぎぎぎぎ』

正にこれで↑あった。



「あっ〜らやだ、あの子ったらすごい私のタイプなんだけど? あの子、もうちょっと大人になったら、うちのバーに来ないかしら?」


「ば......化け物........」


「あぁ!? 今あんた私に向かって化け物とか言わんかったか? あぁ!? キン◯マ抜きとったろか?」


「....ぃ...やだ.....」



俺は、前方からやって来る大型トラックの存在に気づけなかった。



「おい! 誰か助けてやれよ!」

「あんたが行きなさいよ!」

「何で俺が知らない奴を助けなきゃいけねぇんだよ! 俺まで巻き込まれたらどうすんだよ!」

「おいそこの君! 早くその場から離れろ!」


 


動きたくても動けねぇんだよ....



あまりの衝撃に腰を抜かしたのか?

体が脳の言うことを聞いてくれない.....

あぁ.... そうだった、そう言えば昨日、試験終わりの昨日、久しぶりの部活動でちょっと調子に乗って無理して体を動かしすぎたせいで俺、今も身体中の筋肉痛がまだ取れていなかったんだわ....


アハハハハハ.... ほんと笑える。



「おっ! 運転手の野郎、あの子に気づきやがったぞ!」

「これで助かるわね!」

「おいっ運転手早く止まれ!」



「......」


よかった、何とか助かりそうだな....

おかま助けて、そのままトラックに轢かれて死ぬとか、マジでクラスの奴らに笑われるよな?


アハハハハ、あっ、そう言えば、妹に昨日買っておいたケーキのことを言うの忘れてたわ、今日は母さんと父さん二人の結婚記念日なんだからな....

今まで、食わせてもらったんだ、今日ぐらいは二人を労ってやらねぇとな....

香の奴、ケーキ食ってねぇといいけど、アハハハハ....



「ん? なんであの運転手まだ止まらねぇんだよ?」

「何かあったのかしら?」



まぁ助かるんだったら.... 


ちょっとだけ、俺の今後の予定について話してもいいですか?

やっと作品一話が始まったんだ、プロローグって大切だよな?



「どっどうなってんだよ! ブレーキが効かねぇ、おいっ! 誰かその子をどけてくれ!」




これは俺、霜宮しもみやしゅうが学園一の美少女たちと共に学園生活を謳歌していく学園青春日常系ラブコメディーだ。

みんなで変な部活動作って、いろんな美少女たちが入部してくるんだよ。

少し乱暴な黒髪幼馴染、男勝りの黒髪武士道ポニーテール、黒髪ツンデレツインテール、そして、何より..... 黒髪年上クーデレ美少女..... ハハハハっ想像するだけで何か楽しくなってきた.... これが噂に聞く走馬灯ってやつか?



「やばいってマジでやばいって!」

「おい、みんなカメラ用意しとけ!」

「何やってんだよ! 早くよけろよ!」

「俺たちは今から、とんでもない瞬間を目の当たりにするんだ!」




初めは、みんな仲が悪いんだけど、みんなで色々な困難イベントを乗り越えて、仲良くなって行くのがラブコメのセオリーなんだよな?

それで夏になったらみんなで、海に行ってそのまま浴衣に着替えて祭りに行って、冬になったらスキーや温泉旅行に行って、あぁ文化祭とか体育祭もあるんだったな、きっと毎日が楽しいことばっかの連続なんだろうな.....




「.....なんで......」



.....夢見がち?


バカ言うなよ、俺は誰もが憧れる完璧なリア充なんだぜ?

今まで色んなことを我慢してきたんだ、努力が報われるのは当然なことで、それに何より主人公がいい思いすることの何が悪い? 


リア充万歳‼︎‼︎ ハーレム万歳‼︎‼︎ 黒髪万歳‼︎‼︎


家に帰れば、妹が居て父さん母さん、今日は二人の結婚記念日、二人とも.... 




「この俺が...............」



『グッちゃ』



.....喜んでくれるかな?


「........」



急に辺り一面が真っ暗になった。

呼吸もできない、感覚もない....










「.........」




トマトを足で踏みつけると、ちょうどこんな光景になるのだろうか?


俺に衝突した暴走トラックは、俺を踏み潰した後に、そのまま急カーブし歩道のガードレールに衝突し何とか動きは止まった。

幸い、今回の事件の犠牲者は俺一人、その後、今回の事件はブレーキの故障という極めて不慮な交通事故により起きた事件でマスコミ関係者の間で大きく取り上げられ、大々的にニュースで発表された。




まぁもちろん、俺はそんなこと知る由もない....





「.........」



道路の地面上には、俺から流れ出る大量の血液と体の肉が無残な状態でアスファルトの上に散りばめられていた。



「おい、誰か救急車呼べよ!」

「でっ電話番号なんだっけ?」

「119だろうが! お前なんで知らねぇんだよ!」

「Twit◯erにアップしよっと」



「........」


どうせ、人助けして死ぬんだったら、おかまじゃなくて、女優とかモデルがよかったな......



『人気モデル霜宮秀、人気女優を助け、死亡。』 

『悲しき英雄誕生‼︎‼︎ 人類は彼の存在を忘れてはいけない。』



まぁこんな感じでカッコよく取り上げられるんだったら、死人としては結構気が楽なんだけどな.....



「........」



まぁ.... どうでもいいか....

死人に口なし、助けた奴がおかまだろうが女優だとか今はマジで心底どうでもいい。



「.........」



きっと実際は、俺が死んだ事件のニュースがネットの世界に流失していって....



『爆笑速報キターーー‼︎‼︎www』『これは笑ったwww』

『ざまwwwwww』『リア充、おかま助けて死亡とかwww』

『おかまがク◯ス松村似だったwww』『マジでださいwww』

『リア充の奴、進学校の成績トップでモデルのバイトしてるとかwww』

『これはメシウマwww』『ちょっとコンビニ行って白ご飯買ってきますwww』

『トラックに気をつけろよwww』

『これで世界が少し綺麗になったなwww』『おかまに感謝www』

『おかま万歳wwwお前ら絶対葬儀行ってやれよwww』

『おかま万歳www』

『おかま万歳はマジでやめろ腹痛いwww』



きっと、こんな感じでネット掲示板の会話が成り立って行くんだろう。



「........」



まだ.... 童貞だったのに....


何不自由のない順風満帆な俺の人生、人生ゴール一直線いっちょくせんのイージーモードな俺の人生、まさか、こんな所に落とし穴が隠れていたなんて....



「........」



結局、念願の黒髪年上クーデレ美少女とも出会えていなかったのに.....

今まで、死に物狂いで努力して、誰もが憧れる完璧なリア充になれたのに.....



「.........」



でも.... やっぱりどうせ死ぬんだったら、黒髪年上クーデレ美少女に殺されたかったな.....


俺が死んだら、遺留品集め見たいな感じで俺の部屋探索されるんだろうな....

お願いだからベットの下だけは見ないで欲しいなぁ.... あそこには色々と家族には見せられない物ばっかだったしな....


父さん母さん、香....


俺が死んだら三人は泣いてくれるのかな....

もう..... ずっと会えないんだよな......




「.......」



やべぇ..... 最悪だ.... 思いっきし叫びてぇ.....

なんで俺が死ぬんだよ..... 

なんで俺みたいな完璧なリア充が死ななきゃいけねぇんだよ.....


「........」


何処ぞのヒキニート共と違って完全に俺、絶対に主人公ポジションだろ....

他にも、死んだ方がマシな連中だってたくさんいるだろうが......

俺って将来、絶対世界に貢献する何か偉大なことを成し遂げるパターンなやつじゃねぇか....



「.........」



あぁ.... 次の試合.... クラスの女子が絶対見に来るって言ってたのに....

あいつら、俺いなくてもやっていけるのかな.....


「........」


あぁ.... 次の日曜日....クラスの女子と買い物に行く予定だったのに....

次の試験で学年トップだったら妹がキスしてくれるって言われたのに....


「........」


あぁ.... 昨日、初めて出会った女の子に『私の部活動に入部しなさい!』なんて如何いかにも物語一話目に言われそうなセリフ言われてたのに....

入ります、是非入らせてください。


「........」


あぁ.... 今年も大晦日には、リビングで妹に抱きつきながら『ガ◯使』見る予定だったのに.....

今年こそは絶対に笑わない自信があったのに....


「........」


あぁ.... 俺の学園青春日常系ラブコメが..... 

ちゃんと番宣もしたのに....

あぁ.... やばい.... 死ぬってこうことか....


「........」


あぁ.... 一人は怖い、香〜 お兄ちゃん寂しいよ。

嫌だ、死ぬなんて、絶対に嫌だ....

童貞のまま死ぬとか、何処ぞのヒキニート共と同じじゃねぇか.....


「.......」


こんなことなら無難な相手とで童貞卒業しとけば良かった。

あぁ.... 寒い、冷たいよ.... もう死んでるけど....




「.......」




後悔と懺悔、今の俺にはそれしか残っておらず、嘗ての夢や誇りは、もうどこにもなかった。

そこは暗く闇に閉ざされた、何にもない世界だった....



あぁ....  あぁ.... あぁ..... あぁ.....



「.....ぁぁ......」



ぁぁ.........。




「救急車が来たぞ!」

「でも....あれ、間違いなくもう死んでるだろ?」

「バカ! 来ることに意味があんだよ! 誰があれ掃除すんだよ!」

「やべぇ電車遅れる急がなきゃ」



「............」




こうして俺、霜宮しもみやしゅうの物語は、17年という比較的短い上映時間で甲斐なく、結果、悲劇的結末バッドエンドという形で幕を閉じたのであった。

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